先日、家族を介護している方とお話ししたとき、「レスパイト」という言葉を知らない方に出会いました。
ショートステイやデイサービスは知っていても、介護する家族が休むために、介護サービスを利用してもいいということまでは知らない方もいます。
レスパイトとは、介護する人が一時的に介護から離れ、休息することです。
「介護に疲れた」
「少し休みたい」
「たまには介護から離れたい」
そう感じたときに、どんな選択肢があるのかを知るきっかけにしてください。
レスパイトケアとは?介護者が休息するための考え方

「レスパイト(respite)」には、休息、一時的な休止、息抜きといった意味があります。
介護の分野で使われる「レスパイト」「レスパイトケア」は、家族などの介護者が一時的に介護から離れ、休息できるようにする考え方や支援を指します。
ここで知っておいてほしいのは、レスパイトケアという名前の一つの介護サービスがあるわけではないということです。
例えば、
・介護を受けている本人がショートステイに泊まる
・デイサービスを利用している間に、家族が自宅で休む
・親族に数時間介護を代わってもらう
こうして介護者が介護から離れられる時間をつくることが、レスパイトにつながります。
つまりレスパイトとは、「介護する人にも、介護をしない時間をつくる」という考え方です。
レスパイトは介護者自身の健康や生活を守るために必要
在宅介護では、食事や排泄、入浴、服薬、通院などの目に見える介助だけが、介護をしている人の負担になるわけではありません。
「転ばないかな」
「夜中に起きてどこかに行ってしまわないだろうか」
「一人にしても大丈夫かな」
と常に気に掛けながら生活している方もいます。
仕事や家事をしながら介護している方もいれば、夜間も十分に眠れない方もいます。
反対に、介護をするために仕事を辞めなければならない方もいます。
そして介護は、いつまで続くのか分からないと感じることも少なくありません。
数週間なら我慢できることでも、数か月、数年と続けば、自分の予定や休息を後回しにする生活が当たり前になっていくことがあります。
このように介護は、身体だけではなく、心も社会との繋がりに対しても、介護をする人が「負担」と感じる瞬間は沢山あるのです。
レスパイトは「介護ができなくなったときだけ使うもの」ではありません。
介護のある生活の中でも、介護者自身の健康や生活を守るための方法の一つです。
厚生労働省も、ショートステイやデイサービスについて、本人への支援だけでなく「家族の介護負担の軽減」を目的の一つとして示しています。
介護サービスは、介護を受ける本人だけのためにあるものではありません。
家族が介護を続けていくために利用するという視点も持ってよいのです。
なぜ介護をしていると「休みたい」と言いにくいのか
介護者の方と話していると、

家族だから自分がやるもの(やるべきもの)だと思っていた



本人は家にいたがっているから、預けるのは申し訳ない



自分が休むため、遊びに行くためにサービスを使うのは気が引ける
という声を聞くことがあります。
介護サービスそのものを知っていても、「自分が休みたい」という理由を相談してよいことを知らないという方もいます。
そのため、「ショートステイは家族が冠婚葬祭や仕事でどうしても家を空けるときに使うもの」と考えていることもあります。
しかし、ショートステイでは、家族の身体的・精神的な負担を軽減することも利用目的の一つです。
「特別な用事はないけれど、一度ゆっくり休みたい」
そんな理由でも構いません。まずは相談してみてください。
※実際に利用できるかどうかは、本人の状態や要介護度、ケアプラン、施設の空き状況などによって異なります。まずは希望を伝え、どのような方法が考えられるか相談してみることが大切です。
レスパイトケアにはどんなサービスがある?
介護をしている人にとっては、「休んで良いよ」」と言われるだけでは、レスパイトを使うのは難しいのが現実です。
それは、休んでいる間「誰が介護するのか」を考える必要があるからです。
また「休んでください」と言われても



休みたい気持ちは山々だけど、どうやって休めばいいの?
何したらいいのか、何を使ったらいいのか分からない
と、レスパイトにどんな方法があるのか分からないと思う方もいるでしょう。
レスパイトの利用方法は一つではありません。
数時間ならデイサービスなどの通所サービスや家族の協力、1泊から数日ならショートステイが選択肢になります。
医療的ケアが必要な方では、短期入所療養介護やレスパイト入院なども検討する場合があります。
まずは「自分はどのくらいの時間、介護から離れたい(休みたい)のか」から考えると整理しやすくなります。
休みたい時間から考えるレスパイト


| 休みたい時間の目安 | 考えられる方法(利用例) |
|---|---|
| 数時間 | デイサービス・デイケア、訪問系サービス、家族・親族の協力など |
| 半日~1日 | デイサービス・デイケア、家族・親族の協力、介護保険外サービスなど |
| 1泊~数日 | ショートステイなど |
| 医療的ケアが必要 | 短期入所療養介護、レスパイト入院などを相談 |
※こちらの表内の利用サービスはあくまで目安です。本人の状態や要介護度、利用しているケアプラン、地域、事業所・施設の空き状況などによって利用できる方法は異なります。
①ショートステイ|数日間、介護から離れる
ショートステイ(短期入所生活介護)は、介護を受けている本人が施設に短期間宿泊し、食事や入浴、排泄などの支援を受ける介護保険サービスです。
例えば、
「夜間の介護が続いているので、久しぶりにゆっくり眠りたい」
「数日間、自分の予定を入れたい」
「仕事や家庭のことを落ち着いて済ませたい」
のように介護者が休みたい・介護者が出掛けたいといったときに、利用を検討することができます。
介護をされている方がショートステイなどの家から離れた生活に慣れていない場合には、いきなり長期間利用するのではなく、短い期間から試せないかケアマネジャーに相談してみるのも良いでしょう。
②デイサービス・デイケア|日中に介護から離れる
デイサービス(通所介護)は、本人が施設へ通い、食事や入浴、機能訓練などの支援を受けるサービスです。
デイケア(通所リハビリテーション)は、医師の指示などに基づき、リハビリテーションを中心とした支援を受ける通所サービスです。
宿泊を伴わないため、数時間から日中の時間をつくりたい場合に選択肢になります。
デイサービスには、本人の生活機能を維持することだけでなく、家族の介護負担を軽減する役割もあります。
本人が通所サービスを利用している間、介護者は自宅で休んだり、自分の用事を済ませたりすることができます。
介護者が働いていて看れる人がいないという場合も、日中は通所サービスを利用していることがあります。
③訪問系サービス|家族が担っている介護の一部を支援してもらう
訪問介護では、ホームヘルパーが本人の自宅を訪問し、食事・排泄・入浴などの身体介護や、必要に応じて掃除・洗濯・調理などの生活援助を行います。
家族だけで担っている介護の一部を専門職に任せられることで、結果として介護者の負担が軽くなることがあります。
ただし、ここ訪問介護については、以下の注意点があります。
⚠️訪問介護は「家族が休みたいから、その間自由に本人を見守ってもらう」という目的だけで利用できるサービスではありません⚠️
家族のための家事など、本人への援助に当たらない内容は介護保険の対象になりません。
また、自立している同居家族がいると利用できない場合があります。
つまり、訪問介護を利用して、結果として家族の負担が減ることはありますが、家族の負担を減らすことを理由に、サービスを導入することが難しいということです。
ただし、介護サービスの導入は、ケアマネジャーなどの担当者がケアプラン(介護の計画書)を立てて利用するものになります。
そのため、「利用できない」と自分で決めつけるのではなく、「訪問サービスを利用することで、自分が担っている介護を減らせないか」とケアマネジャーに相談するのがよいでしょう。
④家族・親族・周囲の人に一部をお願いする
レスパイトは、介護保険サービスだけで担っていくものではありません。
兄弟姉妹や親族などに、一時的に介護をお願いするというのも、ひとつの「レスパイト」と考えられます。
そのとき、
少し手伝ってほしい
だけでは、頼まれた側も、具体的に何をしてあげればよいのか分からないことがあります。
例えば、
「土曜日の13時から16時まで一緒にいてほしい」
「月に1回、通院の付き添いをお願いしたい」
のように、してほしいことと時間を具体的にすると、相談しやすくなる場合があります。
すべてを代わってもらう必要はありません。
介護の一部分だけでも誰かに任せることができれば、自分の時間を確保することもできるでしょう。
普段から、他の家族に介護の手伝いをお願いをすることで、家族内にも「介護を一緒にしていく」という意識を築きていくことも期待できます。
⑤介護保険外サービスを利用する
介護保険では対応できない内容を、民間の介護サービスや家事支援、見守りなどの保険外サービスで補える場合もあります。
介護保険サービスより利用目的や時間の自由度が高いサービスもありますが、内容や料金は事業者によってさまざまです。
介護保険サービスだけで希望する時間をつくることが難しい場合には、
「保険外も含めて使える方法はありませんか?」とケアマネジャーや地域包括支援センターに相談してみてもよいでしょう。
医療的ケアが必要なら「レスパイト入院」という方法もある
在宅で吸引や経管栄養、褥瘡(床ずれ)の処置など、医療的ケアを受けている方は、通常のショートステイでの受け入れが難しい場合があります。
そのようなときに、レスパイト入院という選択肢があります。
レスパイト入院とは、在宅療養中の本人を医療機関が短期間受け入れることで、家族の介護負担を軽減するものです。
※ただし、対象となる方や利用期間、費用、受け入れ条件などは医療機関や地域によって異なります。
レスパイト入院を利用したいと考えたときは、主治医、訪問看護師、ケアマネジャー、病院の地域連携室などに相談してください。
レスパイトケアにはいくらかかる?
レスパイトのためにサービスを利用する場合、基本的には何らかの費用がかかると考えておきましょう。
ただし、金額は利用する方法によって異なります。
介護保険サービスの場合は、
- 本人の要介護度
- 利用するサービス
- 利用時間や日数
- 介護保険の自己負担割合
- 事業所の体制や加算
などによって自己負担額が変わります。
ショートステイでは、介護サービスの自己負担に加えて、食費や滞在費、日常生活費などが必要になることがあります。
デイサービスでも、食費などが別途必要になる場合があります。
介護保険外サービスは、原則として各事業者が設定した料金を支払います。
レスパイト入院の費用についても、医療機関や利用条件によって異なります。
費用が気になる場合は、「月にどのくらいの負担で、どんな方法が使えますか?」と相談してみてください。
予算も含めて利用方法を考えることができます。
レスパイトを考える目安|自分の時間は残っていますか?


「どのくらい疲れたらレスパイトを利用すればいいの?」という明確な基準があるわけではありません。
ただ、自分の生活から休息が少なくなっていることに気づく目安はあります。
例えば、最近こんな変化はありませんか?
▢イライラすることが増えた
▢十分に眠れていない
▢一人になる時間がほとんどない
▢外出する機会が減った
▢趣味をしなくなった
▢自分の通院や受診を後回しにしている
▢介護のことを考えない時間がほとんどない
▢「自分さえ我慢すればいい」と考えることが増えた
これは「何個当てはまったら危険」というチェックリストではありません。
介護が生活の中でどのくらいの割合を占めるようになっているかを振り返るための目安です。



そういえば、自分の予定を入れたのはいつだっただろう



自分のための時間なんて、しばらく取ってない気がする…
そう気づいたときは、「どんな方法なら休息を作れそうか」考えてみてもよいでしょう。
休める時間ができたら、何をすればいい?
介護から離れる時間をつくれたとしても、
「その間に掃除をしなければ」
「買い物を済ませなければ」
「役所にも行っておこう」
と、空いた時間をすべて予定で埋めてしまうことがあるでしょう。
もちろん、介護中には済ませにくかった用事をする時間も必要です。
ただ、レスパイトの時間をすべて「やること」に使う必要はありません。
例えば、
- 眠る
- 趣味を楽しむ
- 買い物や外出をする
- 友人と会う
- 一人で静かに過ごす
- リラクゼーションを受ける
- 誰かに話を聞いてもらう
など、過ごし方は人それぞれです。
特別なことをしなくても構いません。
昼寝をしたり、好きな飲み物を飲んだり、テレビを見たりするだけで「少し楽になった」と感じるのであれば、その時間にも意味があります。
レスパイトを利用することと、その時間をどう過ごすかは別の話です。
「時間ができたら何を終わらせるか」だけでなく、「今の自分は何をしたいか」も考えてみてください。
「本人を預けて自分だけ休んでいいの?」と感じたら
レスパイトについて考えるとき、



本人は家に居たいと言っているんだよな…



ショートステイに行くのを嫌がっているのに行かせるのは…



自分だけ出掛けるのは申し訳ない
こんな罪悪感が出てくることもあるでしょう。
相手の気持ちは、もちろん大切です。
初めて利用する場所への不安や、いつもと違う環境への戸惑いがあるかもしれませんからね。
でもその一方で、介護者自身の希望をすべて後回しにして、介護される側を優先することが答えでもありません。
介護を受ける本人の生活と同じように、介護する家族の生活も大切です。
どちらか一方だけを優先するのではなく、
「本人が安心して利用できる方法はないか」
「家族が必要な時間をどう確保できるか」
を一緒に考えていくことが大切です。
本人がサービスの利用を嫌がる場合も、そのことを含めてケアマネジャーなどに相談してみてください。
「少し休みたい」と思ったら|レスパイト利用までの流れ


レスパイトという言葉を覚えてからでなければ相談できないわけではありません。
「最近、介護から離れる時間がなくて疲れている」
というところから相談を始めて大丈夫です。
1.どのくらいの時間がほしいのか考える
まずは、自分が何に困っているのかを簡単に整理してみましょう。
例えば、
「週に半日だけ一人になりたい」
「月に1回くらい、丸一日休みたい」
「夜の介護が続いているので、数日間ゆっくり眠りたい」
などです。
具体的に決められなくても、「今より少し休む時間がほしい」だけでも構いません。
2.ケアマネジャーなどに相談する
担当のケアマネジャーがいる場合は、「介護から離れて休める時間をつくりたいです」と伝えてみてください。
「レスパイト」という専門用語を使う必要はありません。
本人や家族の状況を踏まえて、利用できるサービスや方法を一緒に検討してもらえます。
3.利用できる方法を比較する
休みたい時間や本人に必要な支援によって、適した方法は変わります。
通所サービス、ショートステイ、家族の協力、保険外サービスなどを組み合わせることもあります。
医療的ケアが必要な場合には、短期入所療養介護やレスパイト入院について相談することもできます。
4.必要に応じて見学や予約、調整をする
ショートステイやデイサービスは、希望した日に必ず利用できるとは限りません。
本人が安心して利用できそうか確認するため、事前に施設を見学したり、短い利用から始めたりできる場合もあります。
利用したい時期が決まっている場合は、早めに相談しておくと調整しやすくなります。
レスパイトについて相談できる場所
レスパイトを考えた時の相談先は、次のような場所があります。
- 担当のケアマネジャー
現在の介護状況やケアプランを踏まえて、利用できるサービスを一緒に検討できます。 - 地域包括支援センター
高齢者や家族の介護に関する総合的な相談窓口です。担当ケアマネジャーがいない場合にも相談できます。 - 市区町村の介護保険担当窓口
介護保険制度や地域で利用できる支援について確認できます。 - 医療機関・地域連携室・医療ソーシャルワーカーなど
医療的ケアが必要な場合やレスパイト入院を検討する場合の相談先になります。
介護保険サービスは、介護をされる人の状態や希望、家族の状況などを踏まえてケアプランを作成し、その計画に基づいて利用します。
介護をされる人だけでなく、介護をする人が今どのようなことで困っているのかを伝えることも大切です。
「レスパイトケアを利用したい」と言えなくても問題ありません。
「介護から離れて休める時間をつくりたいです」
この一言から相談を始めることができます。
レスパイトを知ることから、休める選択肢が増える
レスパイトは、介護者が一時的に介護から離れ、休息するための考え方や支援です。
ショートステイやデイサービスなども、本人への支援だけでなく、家族の介護負担を軽減するために利用できる場合があります。
「少し休みたい」と感じたら、まずはケアマネジャーや地域包括支援センターなどに、「介護から離れて休める時間をつくりたい」と相談するところから始めてみてください。


このブログは、看護師(臨床経験10年以上)、家族ケア専門士が書いています。
集中治療室・救急外来・内科・外科・整形外科・訪問看護・特別養護老人ホーム・デイサービスなど、幅広い医療・介護現場を経験。
介護認定の認定調査員として、韮崎市からの依頼を受け、年間60件以上の要介護認定調査を行い、介護制度と在宅介護の現場にも精通。
国立大学非常勤講師(高齢者看護学実習指導教員)
心理学・カウンセリングを15年以上学び、現在はカウンセラーとしても活動。
【資格・実績】
・ 看護師
・家族ケア専門士
・DMAT隊員
・グリーフケア専門士
・認定調査員(年60件訪問)
・ハンドケアセラピスト
・アロマテラピー検定1級
・ヒューマンギルドにてアドラー心理学・カウンセラー養成講座修了
・ユマニチュード基礎講座修了
「医学的知識 × 心理学的支援 × リラクゼーション」を組み合わせて
介護をするご家族の身体と心を支えるための活動をしています。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
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