【個別性ってなに!?】個別性のある目標や計画の立て方を分かりやすく解説

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実習の中で、学生さん達は

個別性のある看護を——。

患者さんの個別性を大事に——。

「個別性」という言葉が多く使います。

でも、実際に実習が始まり看護計画を見ると、個別性を入れ込んだケアを上手く計画することが出来ていない
ということがよくあります。

僕は、実習指導者として

ここに○○を入れれば——
ここで△△を考えれば——
個別性のある計画になるよ

というように、具体的にアドバイスをします。
その結果、実習最終日までには「個別性」というものを理解して、とても良いケアが出来るようになってくれます。

看護や介護、保育など、色んな分野で「個別性」という言葉は使われます。
教員や指導者は、「個別性が大事」ということは伝えても、「どうすることが個別性を大事にすることなのか」を実習中に教えてくれることは、ほとんどありません。

そのため、上の例のように「個別性」という言葉だけが先行してしまい、学生さんたちに「個別性」がどういうものなのか伝わらないまま、実習が終わってしまうんです。

そこで今回は

  • 「個別性」とは何か
  • 「個別性を大切にする」とはどうすれば良いのか
  • 個別性のあるケアや計画を立てる方法

についてまとめました。

情報収集からアセスメント、関連図、実習最後に発表する「実習のまとめ」などのポイントも書いていますので、良かったら参考にしてみてください

目次

1.個別性とは

まずは、言葉としての「個別性」について見ていきましょう。

言葉の定義って必要?

と思うかもしれません。

ですが、「個別性」「個性」「多様性」を混同してしまう人も多いのも事実です。
ここで、言葉の違いをしっかり理解することで、「個別性とは何か」が見えてきます。

個別性の定義

個別性とは

 “身体などについて、個々別々に存在していること。または、そうした概念。”

「個別性(こべつせい)」の意味や使い方 わかりやすく解説 Weblio辞書

個別とは

“ 全体を構成しているものを切り離した一つ一つ。個々別々。”

個別/箇別(こべつ)の意味 – goo国語辞書

とあります。

まとめると、「社会」や「世界」を「全体」として考えて、その中にいる人、それぞれの存在や、存在しているという事実「個別性」といっています。

すごく簡単に言えば

世界の中にいる「あなた」や「私」は、別々の存在だよね

ってことです。

個別性と個性の違い

次に、よく聞かれる「個別性」と「個性」の違いについて解説していきます。

個性とは

“個人または個体・個物に備わった、そのもの特有の性質。個人性。パーソナリティー。”

個性(こせい)の意味 – goo国語辞書

とあります。

それぞれが持っている能力性質人格や性格など、「本人に備わった特徴」のことです。

つまり

個性とは、その人が持っている能力や性格などの特徴

個別性とは、社会的な背景や過去(歴史)など、その人が存在してきた証や、その人と別の人を区別する証拠(のようなもの)

という違いがあります。
個性に対して、個別性の方が、少し広い意味合いという感じですね。

僕の個人の意見としては、「個別性」の中に「個性」があるというイメージを持っています。
下の図参照

こんな感じのイメージ

個別性と多様性の違い

では次に「個別性」と「多様性」の違いについてです。
これも「どう違うの?」と、よく言われます。

多様性とは

いろいろな種類や傾向のものがあること。変化に富むこと。

多様性(たようせい)の意味 – goo国語辞書

とあります

ようは、多様性というのは

たくさんの違いがあるよ

って意味ですね。

例えば
「患者の多様性」という使い方をしたら、「患者には、たくさん違いがあるよ」という意味になります。

そうすると

あれ?個別性と同じじゃない?

違い」ってどんな違い?

という疑問が出てくるのではないでしょうか?

では、「患者の多様性」「患者の個別性には多様性がある」という文章にしてみましょう。

そうすると

患者の(その患者を構成するための要素である)社会的な背景や過去(歴史)など、「その人が存在してきた証」には、それぞれたくさんの違いがある

となります。

つまり
「個別性」とは、それぞれが別の存在であるということ
「多様性」とは、個別性を持った存在が様々な違いを持っている
ということです。

理論家から見る個別性

ナイチンゲールヘンダーソン
今度は、有名なこの二人の看護理論家から「個別性」を考えてみましょう。

1)フローレンス・ナイチンゲールの看護覚え書から考える個別性

ナイチンゲールは、近代看護の母と言われる人で、今の「看護」を作った人として有名ですね。

ナイチンゲールの著書の中に『看護覚え書』というものがあります。

その中でナイチンゲールは

“看護は、新鮮な空気、陽光、暖かさ、清潔さ、静かさなどを適切に整え、これらを活かして用いること、また食事内容を適切に選択し適切に与えること—こういったことの全てを、患者の生命力の消耗を最小にするように整えること、を意味するべきである”

“その病気の症状を取り除くのではなくて、私が述べた自然の回復過程をうまくすすめる要素のひとつ、または全部が欠けたために患者に現れる痛みや苦しみを、もしあなた方がすべて取り除いてしまったならば、そのときこそ、その病気から切り離せない症状とか苦痛とかがどんなものであるかが、お互い納得できるであろう。”

と述べています。

ここにあるように、ナイチンゲールの考える看護とは、「その人の周りの環境や生活に関わること整える」こと。
そして、「それによって自然の回復力を高める」というものです。

つまり、ナイチンゲールにとっての「個別性」とは、その人の治療の妨げにならないように
その人に合った全ての環境要因を調整すること
ということです。

2)ヴァージニア・ヘンダーソンの看護の基本となるものから考える個別性

看護学校のアセスメントでは、「ヘンダーソンの14項目」を使用している学校も多いと思います。

では、そのおなじみのヘンダーソンの著書から「個別性」を考えてみましょう。

人間は14の基本的に―度を持つものであり、患者はニードの充足に向けて自立を獲得するために援助を必要とする個人

“看護婦の独自の機能は、病人であれ健康人であれ各人が、健康あるいは健康の回復(あるいは平和な死)に資するような行動をするのを援助する事である。その人が必要なだけの体力と意思力と知識とを持っていれば、これらの行動は他者の援助を得なくても可能であろう。この援助は、その人が出来るだけ早く自立できるようにしむけるやり方で行う。”

と述べています。

ヘンダーソンは、人間のニード、すなわち「欲求」に注目をして、ニードを充足させることによって自立を促す
必要な体力や意思・知識さえあれば、自分で回復、もしくは平和な最期を迎えることができると考えています。

つまり、ヘンダーソンにとっての「個別性」とは、その人にとって現在足りていない「体力」「意思」「知識」を把握して、出来るだけ早く自立するようにその人に合った自立を促す方法を探し実施することだと考えられます。

⑤別々の存在であると認識して特徴や性格を踏まえて合わせたもの

ここまで色々な視点で「個別性」を見てきました

これらを、わかりやすくまとめると

個別性とは、それぞれ別の存在であると認識して、特徴や性格、歴史や社会的背景などをふまえて、その人に合わせたもの

だと言えます

2.個別性のある目標と計画とは

個別性とは、その人に合わせたもの。
つまり、個別性のある看護とは、その人に合わせた看護です。

では、どうすればその人に合った「個別性のある看護」「個別性のある目標・計画」になるのでしょうか

ここからは、どう考えていけば個別性のある看護ができるのかについて解説していきます。

①個別性のある看護計画と個別性のない看護計画の比較

個別性がある場合と個別性がない場合を比較すると分かりやすいと思いますので、具体例を通して見ていきます。

1)具体例:もし「右麻痺の患者」の計画に個別性がなかったら

例えば、右片麻痺の患者さんがいるとして、以下のような看護計画を立てたとします。

  • 歩行の時は右側に立ち介助する
  • ベッドから起き上がる時はベッドの左(本人の右)側から介助する
  • 自分で出来ることはできるだけ自分でやってもらう
  • 上着を着る時は麻痺側の右から着てもらう

など…

これは参考書にも書いてあるような、「右麻痺の患者」に対しての基本的なケアです。

しかし、これでは全然「個別性」がありません

これがダメというわけではないんです。
基本は大事です。

ですが、個別性のある看護計画というのは「この人にとっての計画」でなければなりません。

基本しか入っていないこの計画では、「この人にとって」が全く入っていないということです。

ただ、これだけでは「個別性のある計画」との違いがどこにあるのか分かりにくいかと思うので、次にを見てみましょう。

2)具体例:もし、この患者さんが「せっかち」だったら

もし、この患者さんが、「すごくせっかちな人」だったとしたらどうでしょうか?

「すごくせっかち」というのは、この患者さんの「個性」です。

その個性をふまえて立てた計画が、「個別性のある計画」になります。

「すごくせっかち」だから、さきほどの基本的な計画以外にも注意点が必要です。

注意点としては

  • 自分の体の準備が整ってない・靴をしっかり履けていないのに歩き出そうとしてしまう可能性がある
  • ナースコールを押さずに、一人でトイレに行こうとしてしまうことが考えられる
    ※一人で歩くことは難しい患者さんだとして
  • 準備がスムーズにできていないと、イライラする可能性がある

など…

このようなものが挙げられます。

さきほどの「基本的な計画」に、こういった個別性を踏まえた注意点を加えていかなければなりません。

仮に、自分がケアをする時に、この注意点を意識できていたとします。
しかし、これらを意識できたとしても、記録に書かれていなければ教員や指導者には伝わりません。

計画を立てる目的は「知らない誰か」が見ても、「自分と同じようにケアができる」ことです。

書いてなくても自分ができればいいじゃん!

と思うかもしれませんが、「24時間、365日、自分だけが関わり続ける」ということはできないので、そういう訳にはいきません。

実習だけではなく、実際に現場に出てからも、自分以外の人が担当した時の為に、その患者のことを「知らない誰か」が担当しても、「自分と同じようにケアができる」計画を立てなければなりません。

そのためには、細かく「個別性」をふまえた計画を立てることが必要というわけです。

3)基本的なケアに個別性を付け足すと…

基本的な計画に付け足すとしたら、例えば下の赤字のようになります。

  • すぐにケアに入れるように準備をし、待ち時間を減らすようにする
  • 歩行の時は右側に立ち「ゆっくり歩きましょう」と声を掛けながら介助する
  • ベッドから起き上がる時はベッドの左(本人の右)側から介助する
    (体動センサーの必要性も検討する)
  • 自分で出来ることはできるだけ自分でやってもらう
     ➡ 少しでも難しいと思ったことは無理せずナースコールで看護師を呼ぶように伝える
  • 上着を着る時は麻痺側の右から着てもらう
  • ベッドサイドから離れる時は、用事がある時は1人で頑張らずにナースコールを押すように伝える

せっかちな性格をイメージし、そこに配慮した自分たちの行動を加えると、このように少し「個別性」が出てきます。

「個別性のある」というのは、「考え得るリスクの先回り」と言い換えることも出来ます。

「せっかち」という1つのキーワードから考えることができるリスクを回避するために、いろんなことを予測して計画に入れ込んでおく。
これが「個別性のある看護」というわけです。

「せっかち」という性格以外にも、疾患や生活歴、認知機能や身体能力など、様々な「個性」があります。

その個性に対して想像力を膨らませ、なるべく多くの「個性」を計画に入れ込み、「この人にとっての計画」にしていきましょう。

3.個別性には人間関係を良好にするという思わぬメリットもある

チーズバーガー、ハンバーガーのイラスト

お気に入りのファストフード店で、自分なりのカスタマイズをすることってありますよね?
あれって、基本的な商品を自分好みの商品に作り上げているってことです。

これを看護計画に置き換えたとしたら、自分好みにカスタマイズした注文=個別性のある計画ということです。

では、もう1つ先まで想像してみましょう。

行きつけのお店で、同じカスタマイズした注文を毎回繰り返していたら、ある日、店員さんの方に

いつものシロップ・ホイップ多めでいいですか?(*’▽’)

と言われました。

覚えててくれたんだ!

って、ちょっと嬉しくなりませんか?

こんなふうに、人は小さなことを覚えててくれること喜びを感じます。

つまり、個別性のある計画を立てて実施すると、その人との関係性を近くする・良好にすることができる。
こんな隠れたメリットが、「個別性」には存在するんですね。

4.ケアや計画に個別性が大切な4つの理由

個別性をケアや計画に取り入れる理由は、以下の4つにまとめることができます。

・個別性をふまえることでリスクを回避できる
・個別性を考えることで、自分の中でも看るポイントを整理できる
ケアの計画を立てる目的の一つである

 「他の人も同じようにケアできる」を達成することが出来る
・自分に合ったケアを考えてくれている事で相手との関係性が良くなる

いきなり全部ケアや計画に入れられなくても良いので、ケアや計画に取り入れられるように1つずつ意識していきましょう。

計画立案そのものが苦手という方には、こんな記事も書いてますので、良かったらこちらの記事もどうぞ

5.個別性を捉えるため必要な能力

ここからは、個別性を捉えるために必要な能力について解説します。

「個別性」を捉えるためには

  1. 想像力(想像する力)
  2. 共感力(共感する)
  3. 結合力(繋げる力)

以上の、3つの能力が必要です。

個別性を捉えるためは歴史や過去を想像する(想像力)

ここでいう「想像力」とは、相手の過去を想像する力であり、相手の感情や「今、困っていること」などを想像する力です。

その人を構成するモノの中で、大事なモノの一つは「歴史」「過去」です。
つまり、今までどう生きてきたのかということです。

その人が生きてきた歴史には、その人の個性が詰まっています

その中から

こういう過去を語っていた

こういう過去があったなら、今この人はこうかもしれない。

など、いろんなことを想像していきます。

そうすることで、その人の個別性価値観が見えていきます。


例に挙げた「右片麻痺のせっかちな患者さん」

せっかちだったら
こうかもしれない

と想像することで、リスクや困るであろうことなど、いろんなものが見えてきます。

個別性を捉えるためには関心を持ち共感をする(共感力)

「想像するだけで良いのか?」といったら、それだけでは足りません。

困っている事や今までの過去、その人の歴史、こういったことに興味を持つ。
そして、そこに共感をする。
そうすることで、初めて見えてくるものがあります。

「興味を持たない」
「共感しようとしない」
こんなスタンスでは、その人の目の前にある問題に、気づくことはできません。

そのため、相手の話や情報をまるで自分の事のように、自分の友達や家族のように「想像」して、興味を持って関わってみる「個別性」は見えてます。

③個別性を捉えるためには関連性を探す(繋げる力)

コンセントに電源コードを刺そうとする男の子

「結合力」という日本語があるかは分かりませんが、ここでいう「結合力」というのは、物事を繋げる力・結び付ける力のことです。

興味を持って情報を収集して想像して考えても、今ある問題とそれらが繋がってなければ、個別性のある計画を立てることができません

では、どうやって繋げればいいのか?

それは「強引に繋げて考える」ことです。

は?なにそれ?

と、なってるかもしれませんが、これはある種のトレーニングだと思ってください。

さっきの「右麻痺のせっかちな患者さん」を思い出してみてください。

せっかち右麻痺って、なんの関連性もありません。
だから強引にでも、自分が「せっかちな右麻痺な人」になったつもりで、いろんな場面を想像していく。
そして、そこから見える困ったことや、危険などを探します。

これを繰り返していくと、徐々に関係ない事柄から関連性を見つけ出せるようになります。

つまり、繋げることが出来るようになってきます。

全く関係がなさそうな事柄に対しても、「もしかしたら関連があるかもしれない」と考えてみます。
そうすると、意外とそれらが関係してて、そこに「個別性」を見つけることができた!…なんていうことがあります。

何か関連することがないか、想像力をたくさん働かせてイメージしてみてましょう。

6.さいごに

「個別性」
よく使われるけど、その言葉自体も、どうやったら「個別性を捉えた計画」になるのかも、あまり詳しく説明してもらったことが、僕自身もありませんでした。

「大事」と先生からずっと言われてきたから、目標にもケアや計画にも、なんとなく「個別性」を入れてみる。
なんとなく入れた「個別性」だから、ダメ出しされる。
でも、具体的に教えてもらえないから、次も「個別性」を、なんとなく入れるしかない。
僕も、こんな繰り返しだったし、そんな人も多いと思います。

結局これだと、「個別性って何か」、「個別性が入ったケア・計画」ってどういうことか分からないんですよね。

ちょっと長かったんですが、この記事で、少しでも「個別性」って何かが分かって、実習で使えるものになって、明日からの実習が少しでも楽になってくれたらと願っています。

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最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

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