実習で「個別性」に悩んでいるあなたへ
こんな経験はありませんか?
「個別性のある看護を考えて」
「患者さんの個別性を大事にして」
指導者や教員からこう言われるけれど、

そもそも個別性って何なの?
どうやったら個別性のある計画になるの?
基本的なケアしか思い浮かばない…
そんなモヤモヤを抱えて、毎日の記録と格闘していませんか?
安心してください。
「個別性」は決して難しいものではありません。
この記事を読むことで得られること:
それでは、ここから実習指導者として多くの学生を見てきた経験から、「個別性」について誰でも理解できるよう解説していきますね。
今すぐ看護計画を「個別性を書ける」形に解決したい人へは
[看護学生のための「個別性」の書き方と例|実習で使える看護計画を解説]
「個別性」の本当の意味を知ろう
個別性とは何か?基本の定義から理解する
まず、言葉の定義から整理しましょう。
【個別性とは】
身体などについて、個々別々に存在していること。
または、そうした概念
【個別とは】
全体を構成しているものを切り離した一つ一つ。
個々別々。
つまり、「社会」や「世界」という大きな集団の中で、その人だけが持つ独特な存在としての証拠のこと。
簡単に言えば「世界の中にいる『あなた』と『私』は、それぞれ別々の存在だよね」 ということですね。
個別性と個性の違いって何?
よく混同されがちな「個別性」と「個性」。
この違いを理解することが重要です。
【個性とは】
個人または個体に備わった、そのもの特有の性質。
個人性。
パーソナリティー。
つまり
- 個別性 = その人が存在してきた証拠、その人を他の人と区別する全ての要素
- 個性 = その人が持っている能力や性格などの特徴


個別性の方がより広い意味合いを持っています。
イメージとしては、「個別性の中に個性がある」という感じですね。
個別性と多様性の違いも押さえておこう
【多様性とは】
いろいろな種類や傾向のものがあること。
変化に富むこと。
つまり
- 個別性 = それぞれが別の存在であること
- 多様性 = 個別性を持った存在が様々な違いを持っていること
例えば「患者の個別性には多様性がある」と言ったとします。
「患者それぞれの社会的背景や過去にはたくさんの違いがある」 という意味になります。
理論家から学ぶ個別性の考え方
では次に、看護学生にとっては馴染みのある「ナイチンゲール」と「ヘンダーソン」から個別性を考えてみましょう。
ナイチンゲールが考えた個別性
近代看護の母・ナイチンゲールは『看護覚え書』の中で
“看護は、新鮮な空気、陽光、暖かさ、清潔さ、静かさなどを適切に整え、これらを活かして用いること、また食事内容を適切に選択し適切に与えること—こういったことの全てを、患者の生命力の消耗を最小にするように整えること、を意味するべきである”
と述べています。
ナイチンゲールにとっての「個別性」とは、その人に合った全ての環境要因を調整することということです。
ヘンダーソンが考えた個別性
看護過程の14項目でおなじみの彼女は
“看護婦の独自の機能は、病人であれ健康人であれ各人が、健康あるいは健康の回復(あるいは平和な死)に資するような行動をするのを援助する事である。その人が必要なだけの体力と意思力と知識とを持っていれば、これらの行動は他者の援助を得なくても可能であろう。この援助は、その人が出来るだけ早く自立できるようにしむけるやり方で行う。”
と述べています。
ヘンダーソンにとっての「個別性」とは、 その人に合った自立を促す方法を探し実施することです。
まとめ:個別性とは別の存在と認識し特徴を踏まえて合わせること
これらをまとめると、個別性とは「それぞれ別の存在であると認識して、特徴や性格、歴史や社会的背景などをふまえて、その人に合わせたもの」ということになります。
個別性のある看護計画を立てる具体的方法
ここからは「個別性」のある看護計画について具体的に解説していきます。
個別性のある計画と一般的な計画の違い
個別性のある計画と、個別性のない一般的な計画にはどのような違いがあるのでしょうか?
実際の例を使って比較してみましょう。
【事例:右片麻痺の患者Aさん】


一般的な計画(個別性なし)
Aさんに援助計画を立てた場合
- 歩行の時は右側に立ち介助する
- ベッドから起き上がる時はベッドの左側から介助する
- 自分で出来ることはできるだけ自分でやってもらう
- 上着を着る時は麻痺側の右から着てもらう
これは参考書に書いてあるような基本的なケア内容です。
間違いではありませんが「この人(Aさん)にとっての必要性」が全く入っていません。
違う言い方をすれば「この人(Aさん)ではなくてもよいケア内容」、「誰にでも当てはまるケア内容」ということです。
この患者さんが「せっかち」という特徴があったら?
では、もしこのAさんが「すごくせっかちな人」だったとします。
Aさんが歩行をするときには、どんな危険・リスクが考えられるでしょうか?
考えられる危険・リスク:
- 体の準備が整っていないのに歩き出そうとしてしまう
- ナースコールを押さずに、一人でトイレに行こうとしてしまう
- 準備がスムーズにできていないと、イライラする
このような危険・リスクが考えられます。
個別性を入れた計画
では次に、このAさんの「せっかち」という特徴と、そこから考えた危険性やリスクを踏まえて、さきほどの基本的な計画を修正してみましょう!
- すぐにケアに入れるように準備をして待ち時間を減らすようにする
- 歩行の時は右側に立ち「ゆっくり歩きましょう」と声を掛けながら介助する
- ベッドから起き上がる時はベッドの左側から介助する(状況に応じて体動センサーの必要性も検討する)
- 自分で出来ることはできるだけ自分でやってもらう (自分でやりたい・やれるという気持ちを尊重するため)
E-P(教育計画)も
- 少しでも難しいと思ったことは無理せずナースコールで看護師を呼ぶように伝える
- ベッドサイドから離れる時や用事がある時は、1人で頑張らずにナースコールを押すように伝える
というように付け加えるのも良いでしょう。
このように「せっかち」という1つのキーワードから、危険やリスクを予測して計画に盛り込んでみただけでも「その人だから必要なケア内容」になったと思いませんか?
これが「個別性のある看護」です。
個別性のある評価指標の選択


患者に合った評価指標(スケール)を使う
看護計画には「評価」が欠かせません。
患者に合った評価指標(スケール)を選択することも「個別性」です。
たとえば「痛みの軽減」という目標を立てた場合、数値で測れる指標を入れておくと改善が明確になります。
【例:NRS(Numeric Rating Scale)を使用する場合】
患者さんに「今の痛みを0〜10で表すと?」と尋ねて自己申告してもらう
初日:NRS=7(強い痛み)だった。
目標:NRS=3以下にする
評価方法:1日2回(午前・午後)、本人の自己申告を記録
このように“数値”で測れる評価指標を1つ設定するだけで、ケアの効果を客観的に確認でき、教員や他の看護師にも伝わりやすくなります。
看護計画を立案するうえで、この「他の人への伝わりやすさ」がとても重要になってきますので、併せて覚えておいてくださいね。
例を見て評価指標(スケール)を使うことで、客観的に確認ができ、評価しやすくなるということが分かっていただけたと思います。
では、患者にあった評価指標をどう選べばよいのでしょうか?
ここで考える必要があるのが「個別性」です。
例えば、認知症の症状がある患者さんに対して、先ほどのNRSを使用したらどうでしょう?
上手くこちらの質問した内容が伝わらず、正確な痛みの評価ができない可能性がありますよね?
では、失語症のある患者さんに対して同様のNRSを使用したらどうでしょう?
上手く言葉を発することができなくても、表を見せることで数字を指さすことはできるかもしれません。
この場合、認知症の患者にはNRS以外を使用することが望ましく、代わりにフェイススケールを使ってみる。
失語症の方にはNRSでよさそうだけど、表を見せて指をさしてもらうように説明する必要がある。
このように、その人が持つ特徴・特性を考えて評価指標を選ぶことが大事になってきます。
初めから「その人に合った評価指標」を選ぶ必要はない!
ただし、必ずしも初めから完璧に「その人に合った評価指標」を選ばなければならないということではありません。
私たちは日々、アセスメントと評価と計画の修正を繰り返していきます。
いわゆる「SOAP」ですね。
もし自分の選んだ評価指標が患者に合わない評価指標であれば、SOAPの中で、なぜ合わないのかをアセスメントして、計画の修正をすればよいだけです。
大切なのは「その人の特徴や特性を踏まえて必要な評価指標を考えること」です。
その人の特徴や特性を考えて計画に組み込むこと自体が「個別性」なのです。
初めから完璧な選択をすることが個別性ではないので、怖がらず自分の思う「必要な評価指標」を選択して使っていってください。
ここまでは「考え方」ですが、実際に計画の中に落とし込むとなると難しいですよね。
noteでは、この症例をもとにO-P/T-P/E-Pのより具体的な解説と、失敗例→改善例をまとめています。
→[有料版で実習にそのまま使える形を確認する]
なぜ個別性を計画に書く必要があるの?
学生に教えているとこんな質問をされることがあります。



自分がケアする時に注意点を意識できていれば、それでいいんじゃないですか?
あなたもそう思うかもしれませんが、実はそれだけでは不十分なんです。
あなたが患者さんの特徴を完璧に理解して適切なケアができたとしても、それが記録に書かれていなければ、教員や指導者、他の看護師には伝わりません。
看護記録とは、自分以外の誰がやっても、いつでも同じケアができるようにするためのものです。
例えば、人によってケアのやり方が違う、日によってケア内容が違うとします。
そうすると、評価基準が定まらないため、どのケアで状態が改善したのか、どのケアで状態が悪化してしまったのか?など、分からなくなってしまいます。
せっかく自分たちが患者さんのために考えて続けてきたケアが、良かったものなのか、良くなかったものなのか分からない。
分からなければ、計画を修正することもできませんよね。
看護計画を立てる本当の目的
看護計画を立てる目的は「患者さんのことを知らない誰かでも自分と同じようにケアができる」ことです。
「書いてなくても自分ができればいいじゃん!」と思うかもしれませんが考えてみてください。
あなたが24時間、365日、その患者さんに関わり続けることはできませんよね?
現場に出てからは、日勤・夜勤・準夜勤など交代制で患者さんを看護します。
継続した質の高い看護を提供するためには、患者さんの個別性を他のスタッフに正確に伝える必要があります。
実習が終われば、他の学生や看護師がケアを引き継いでいきます。
つまり、その患者さんのことを「知らない誰か」が担当しても、「あなたと同じようにケアができる」計画を立てることで、患者さんに必要な看護が提供され続くということです。
そのためには、細かく「個別性」をふまえた計画を立てることが必要というわけです。
個別性のある計画を立てる3つのステップ
ステップ1:想像力を働かせる


患者さんの過去や歴史を想像してください。
- どんな生活をしてきたのか?
- どんな性格なのか?
- 今、何を困っているのか?
その人を構成する要素の中で最も大事なのは「歴史」です。
今までどう生きてきたかに、その人の個性が詰まっています。
ステップ2:興味を持って共感する
想像するだけでは、まだ足りません。
次に必要なのは「興味」と「共感」です。
- その人の話や情報に興味を持つ
- その人の気持ちに共感する
自分の友達や家族のように関心を持って関わってみてください。
そうすると、その人の目の前にある問題に気づけるようになります。
ステップ3:関連性を見つけて繋げる
一見関係なさそうな情報でも、強引に繋げて考える練習をしましょう。
例えば「せっかち」と「右麻痺」は、一見関係ありません。
でも、自分が「せっかちな右麻痺の人」になったつもりで様々な場面を想像すると、困ることや危険なことが見えてきます。
この練習を繰り返すと、関係ない事柄から関連性を見つけ出せるようになります。
個別性を捉える3つの能力


- 想像力(想像する力):相手の過去や感情を想像する
- 共感力(共感する力):相手に興味を持ち共感する
- 結合力(繋げる力):異なる情報を関連付けて考える
この3つの力を意識的に鍛えることで、個別性を捉える能力が向上します。
個別性がもたらす予想外のメリット


個別性のあるケアを実践すると患者さんとの関係性が良くなります。
例えば、行きつけのカフェで店員さんに
いつものシロップ・ホイップ多めでいいですか?
と言われたら、なんだかちょっと嬉しくなりませんか?
嬉しいなと思った理由は、自分の好きなカスタマイズを覚えていてくれたから。
カスタマイズ…。
私が好きなアレンジ…。
そう!それって「個別性」ですよね!
人は小さなことを覚えてもらうことに喜びを感じます。
個別性のある計画を立てて実施することは、患者さんを喜ばせ、関係性を深めることができるのです。
個別性が大切な4つの理由
患者さんの個別性を考えたり、患者さんの個別性を踏まえてケアをしていることで4つのメリットがあります。
この4つのメリットが、個別性が大切な理由です。
- リスクを回避できる:その人特有のリスクを予測し、防ぐことができる
- 看るポイントを整理できる:自分の中で観察すべき点が明確になる
- 他の人も同じようにケアできる:計画の目的である情報共有が達成される
- 関係性が良くなる:患者さんが「自分のことを考えてくれている」と感じる
さらに詳しく学ぶ方法
より実践的な学習をしたい方へ
ここまでの内容で基本的な理解はできたと思います。
でも「もっと具体的な例が知りたい」、「実際の記録の書き方を詳しく学びたい」という方もいるでしょう。
より詳細で実践的な内容については、note有料版記事で詳しく解説しています。
実際の事例を使った計画立案の方法や、指導者に評価されるポイントなど、実習で即使える内容をまとめています。
個別指導を受けたい方へ
「一人で勉強するのは不安」「自分の計画を直接見てもらいたい」という方には、オンライン指導サービスもご提供しています。
経験豊富な指導者が、あなたの看護計画を個別にチェックし、より良い計画立案のためのアドバイスをします。
関連する学習リソース
看護計画の立案そのものが苦手という方向けの記事や、実習記録の書き方についてもご紹介していますので、ぜひ併せてご活用ください。




まとめ:明日から変わる「個別性」の捉え方
お疲れ様でした。長い記事でしたが、ここまで読んでくれたあなたなら、きっと明日からの実習で「個別性」について自信を持って取り組めるはずです。
今日覚えておいてほしい3つのポイント
個別性とは:その人だけの存在としての証拠を認識し、その人に合わせること
個別性のある計画の作り方:基本的なケア + その人特有の要素 = 個別性のある計画
必要な3つの力:想像力・共感力・結合力を意識的に使う
あなたの実習が変わる第一歩
今日学んだことを、明日の実習で1つでも実践してみてください。
- 患者さんの過去に興味を持って聞いてみる
- 「もしこの人が○○だったら」と想像してみる
- 基本的なケアに「この人にとって」の視点を1つ加えてみる
小さな一歩から始めて大丈夫です。


まだ実務で“書き切れていない”かもしれないチェック
※ひとつでも当てはまれば、有料版のテンプレ&具体例で解決できます。
□ 自分の症例の「個性」を一語で言語化できたが、それをO-P/T-P/E-Pの記述に変換できない
□ 「この人だから」の声かけを1文で具体化できない(例:「ゆっくり歩きましょう」等の粒度)
□ 他の人が同じケアを再現できる文章に落とし込めない(表現が抽象的になってしまう)
□ 一般的ケア(NG)→個別性を反映したケア(OK)の言い換えパターンが思いつかない
□ 評価指標を“1つだけ”選ぶやり方が分からない
(※本記事では概念理解が中心。指標選定と記載例は有料版で具体化しています。)
1つでも □ にチェックがついたら → [看護学生のための「個別性」の書き方と例|実習で使える看護計画を解説]
最後に
「個別性」という言葉に振り回されて、実習が辛くなってしまうのはすごく残念なことです。
でも、本当は「個別性」って、患者さん一人ひとりを大切な存在として向き合うための、とても温かい概念なんです。
あなたが患者さんと向き合う時の気持ちを大切にしながら、技術的な部分も少しずつ身につけていってください。
実習は大変ですが、あなたの成長を心から応援しています。
困った時は、いつでもこの記事に戻ってきてくださいね。きっと、あなたの実習が少しでも楽になり、患者さんとの関わりがより豊かになることを願っています。
ポチっと応援よろしくお願いします
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
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最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
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