認知症とは?家族が知っておきたい基本と接し方を現役看護師・家族ケア専門士が解説

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家族が同じことを何度も聞くようになったり、急に怒りっぽくなったり、今までできていたことが難しくなったりすると、

もしかして認知症かもしれない

——と、不安になる方は多いと思います。

認知症は、もの忘れだけの問題ではありません。

時間や場所が分かりにくくなったり、段取りが難しくなったり、不安や怒り、拒否といった反応が強く出たりすることもあります。

そして、
認知症介護は知識だけで何とかなるものでもありません。

認知症への基本的な対応はあっても、その日の体調や気分、環境によって反応が変わることも多く、その「変化」に家族は戸惑ったり、自分を責めたりしやすいのも現実です。

【この記事で分かること】

・認知症とはどのような病気か
・認知症の種類について
・認知症の「中核症状」と「周辺症状(BPSD)」について
・認知症を患っている方との接し方


そらのアイコン

【この記事を書いた人】
看護師家族ケア専門士として活動
・集中治療室や救急外来~在宅看護や介護施設まで

 幅広い現場を経験
認定調査員として年間60件以上の介護認定調査を実施。
・国立大学非常勤講師(高齢者看護学実習指導教員)
・グリーフケア専門士取得
・カウンセラー(ヒューマンギルド主催:アドラー心理学

 カウンセラー養成講座受講)

目次

認知症とは、脳の働きの変化によって、記憶や判断などが上手くいかなくなり、生活に支障が出ている状態のことです。

年齢を重ねれば、誰でも多少のもの忘れはあります。

でも、
認知症では、「少し忘れっぽい」というだけではなく、生活の中で困ることや、一人で生活することが難しいということが増えてきます。

たとえば、

  • 食事をしたこと自体を忘れる
  • 約束したことを覚えていない
  • 今日が何日か分かりにくい
  • いつもの家事の手順が分からなくなる
  • 会話が少しかみ合いにくくなる

このような変化が見られることがあります。

家族からすると、
最初は

年のせいかな

と感じることも少なくありません。

認知症かな?と思ったら「変化」と「生活のしにくさ」を見ていくことが大切

一度だけなら
・うっかりしていた
・ボーっとしていた
・聞き逃した
・ど忘れした
ということもあるでしょう。

「あれ?」と感じたら、繰り返し同じことがないか見ていてあげてください。

認知症を考えるときに大切なのは、ただ「忘れること」だけを見るのではなく、その変化が生活にどのくらい影響しているかを見ることです。

現場で感じたこと

「老い」や「認知症」という言葉は、ご本人もご家族も、とても受け入れがたいものかもしれません。

・自分でも違和感を感じている
・ご家族が見て「最近何か変だな」と感じている
それなのに
「そんな事はない!」という否定したい気持ちから、発見が遅れてしまうこともあります。

自分の変化や、大切な家族の変化に、ショックを受けることは当然のことです。

ですが、
「そんなはずはない」と思うことで、今後、起こるかもしれない「困った出来事」を防げなくなってしまう場合もあります。

「変化」を受け入れることは怖いことかもしれません。

ですが、
早期発見・早期の対応が重要です。

「変化」を怖がらず、前に進んでいくことが、本人と家族両方の為になると考えましょう。


認知症と一言でいっても、実際にはいくつかの種類があり、目立ちやすい症状や家族が困りやすい場面は少しずつ違います。

ここで大切なのは、細かい病名を覚えることではありません。

認知症にはタイプがあり、それぞれ出やすい変化(症状)が違うと知っておくことです。

それだけでも、「ただのもの忘れではないかもしれない」と気づくヒントになります。

アルツハイマー型認知症

アルツハイマー型認知症は、もっともよく知られているタイプです。

最初は「もの忘れ」が目立ちやすく、少しずつ生活の中の困りごとが増えていくことがあります。

たとえば、

  • 同じ話を何度もする
  • さっき聞いたことを忘れる
  • 置いた物が見つからず、しまったこと自体を忘れている
  • 約束や予定を覚えていない
  • いつもの家事の順番が分からなくなる

といった変化です。

ただ「忘れっぽい」だけでなく、出来事そのものが抜け落ちるような忘れ方や、生活の手順が崩れてくることが、家族にとっての気づきにつながりやすいです。

レビー小体型認知症

レビー小体型認知症では、幻視調子の波が見られることがあります。

たとえば、

  • 「部屋に誰かいる」「虫が見える」と訴える
  • しっかりしている時間と、ぼんやりしている時間の差が大きい
  • 日によって受け答えや動きがかなり違う
  • 体がこわばる、動きが小さくなる、転びやすくなる

といった変化です。

家族からすると、時間による症状の変化や、見えないものが見えるという発言から、精神疾患と間違われやすく、戸惑いも大きくなりやすいタイプの認知症です。

血管性認知症

血管性認知症は、脳梗塞や脳出血(いわゆる脳卒中です)のあとに起こることがあります。

この脳梗塞や脳出血には、「ハッキリと症状が出て
入院や治療が必要なもの」から、「あまり大きな症状が見られずに、見落とされてしまう小さいモノ」があります。

そのため、
脳梗塞や脳出血で入院や治療をしていない場合でも、血管性の認知症が徐々に進行して、目に見える「認知症」の症状として、出てくることもあります。

血管性認知症の特徴のひとつは、できることと難しいことの差が出やすいことです。

たとえば、

  • あることはしっかりできるのに、別のことになると混乱する
  • 昨日できたことが今日は難しい
  • 一部分だけ急にできなくなったように見える
  • 動きが遅くなったり、手足の動かしにくさが気になったりする

といった変化です。

周りで看ている家族は

できる時もあるのに、
なぜ今日はできないのだろう

と感じやすく、「認知症かもしれない」という判断が難しいとことがあります。

前頭側頭型認知症

前頭側頭型認知症では、性格や行動の変化が目立つことがあります。

たとえば、

  • 急に怒りっぽくなる
  • 同じ行動をくり返す
  • 思ったことをそのまま口にする
  • こだわりが強くなり、やり方を変えにくくなる

といった変化です。

また、
罪悪感が低下してしまい、万引きなどの犯罪行為を行ってしまう場合もあります。

家族からすると、
「人が変わってしまったように見える」
と感じることもあり、認知症と結びつけにくいことがあります。

軽度認知障害(MCI)

認知症って言うほどじゃないけど、何か気になる…

それは「軽度認知障害(MCI)」かもしれません。

ここまで認知症の主な種類を見てきましたが、家族の変化に気づいたとき、すぐに「認知症」と断定できるとは限りません。

実際には、
認知症とまでは言えないものの、もの忘れや考える力の低下が少し見られる軽度認知障害(MCI)という段階もあります。

これは、
以前と比べると変化はあるけれど、まだ日常生活には大きな支障が出ていない状態です。

たとえば、

  • 以前より同じことを聞くことが増え
  • 約束や予定を忘れやすくなった
  • 話の内容を理解するのに少し時間がかかるようになった
  • 本人や家族が「前と少し違う」と感じている

といった変化があっても、
・まだ買い物や家事など、身の回りのことがある程度できている
・生活をするうえでそこまで困っていない
といった場合は、この段階にあたる可能性が考えられます

認知症とまでは言えないけど、何となく気になる

そんな小さな違和感も、気にしておくことも大切です。


認知症の症状には、中核症状周辺症状(BPSD)という2つの症状に分けられます。

難しく感じる言葉かもしれませんが、簡単にいうと、

・中核症状は、脳の変化そのものから起こる症状

・周辺症状は、その中核症状に不安や環境、体調などが重なって表れやすくなる症状
です。

それぞれ、少し詳しく解説していきます。

中核症状とは

中核症状は、認知症になると多くの方に見られる基本的な変化です。

具体的には

【記憶障害】
▶昔のことは覚えているが、最近のことは起こったエピソード自体を忘れてしまう

【見当識障害】
▶時間・場所・人が分からなくなる

【理解判断力障害】
▶思考速度の低下、複数の情報処理が困難、目に見えない仕組み(ATMや電話など)が理解できなくなる

【実行機能障害】
▶料理や買い物など、頭の中で計画・手順を組み立てて行うことができなくなる

などの変化(症状)があります。

たとえば、

  • 同じことを何度も聞く
  • 直前の出来事を忘れてしまう
  • 今日が何日か分かりにくい
  • 今いる場所が分からなくなることがある
  • 急にたくさんのことを言われると混乱しやすい
  • いつもの家事や手続きの順番が分からなくなる

といったものです。

こうした変化は、脳の働きが変わることで起こっています。

周辺症状(BPSD)とは

周辺症状(BPSD)は、認知症に伴って見られる行動や気持ちの変化です。

たとえば、

  • 怒りっぽくなる
  • 介護を嫌がる
  • 落ち着かず歩き回る
  • 「物を盗られた」と訴える
  • 不安が強くなる
  • 幻覚や妄想が見られる
  • 昼夜逆転する

といったものです。

家族にとっては、中核症状よりも、この周辺症状の方がつらく感じられることも多いかもしれません。

なぜ、周辺症状(BPSD)が起こるのか

BPSDの背景には、
・自分に起こっている変化への不安
・話が理解できない混乱
・音や動きなどの周囲からの刺激が多すぎる
・自分の体調による苦痛(痛み、苦しさなど)

など、いろいろなものが重なっています。

怒る、拒否する、落ち着かないといった「反応」の裏には、本人なりの理由やつらさがあることが多いんです。

それを、上手く伝えることができず
怒る
拒否する
落ち着かない
といった反応で表現しているということです。

周辺症状(BPSD)は治る可能性がある

周辺症状(BPSD)は、行動・心理症状とも呼ばれています。

本人の性格、環境や人間関係など、本人を含めた周囲の様々な要因が絡み合い、日常生活に支障をきたすような行動の問題や、精神的な問題が出てきます。

そのため、
周囲の要因となっている「原因」を取り除くこと
症状が治る、もしくは軽くなる可能性もあるのが、この「周辺症状」です。

参考情報

認知症の人への対応には、いくつかの基本があります。

ただ、
特別な技術が必要というより、まず大切なのは「安心できる相手であること」だと私は感じています。

認知症のある方は、周りからは分かりにくくても、不安混乱を抱えていることがあります。

・何が起きているのか分からない
・言われていることがうまく理解できない
・今まで出来ていたのに、できないことが増えた

そんな戸惑いの中で、急かされたり、否定されたり、強く言われたりすると、さらに本人が抱いている不安は強くなっていきます。

だからこそ、
まずは「正しいことを伝える」よりも、「安心してもらうこと」を意識するのが本人にとっても、家族にとっても大切です。

まず安心してもらうことを優先する

認知症の方と関わっていると、
「それは違うよ」
「さっきも言ったよ」
と言いたくなる場面は少なくありません。

でも、
そこで正しさを押し通そうとすると、かえって不安や怒りを強めてしまうこともあるでしょう。

もちろん、
危険がある時や大きな誤解につながる時は、そのままにできないことはあります。

ただ、
日常のやりとりの中では、まず相手が安心できることを優先した方が、うまくいく場面が多いです。

たとえば、事実をすぐ訂正するよりも、

  • まず「気持ち」を受け止める
  • 不安そうなら安心できる言葉をかける
  • 落ち着いてから必要な説明をする

といった順番の方が、受け入れられやすいでしょう。

急がせない、責めない、試さない

認知症のある方は、理解したり思い出したりするのに
時間がかかることがあります。

そして、
そんな自分の「変化」に、不安や焦りも感じていることが多いです。

そこに対して、

  • 早くして
  • なんで分からないの
  • 覚えてる?
  • さっき言ったでしょう

といった言葉が重なると、元々あった混乱や不安が、より強まってしまいます。

家族としては、毎日のことだからこそ、つい急かしてしまうこともあるでしょう。

しかし、
「認知症の方への対応」の知識と技術として、急かさないようにするという意識を持つことが大切です。

また、
「覚えているか試す」ような関わりも、本人の自信を失わせやすいです。

家族にとっては確認のつもりでも、本人は責められているように感じてしまうこともあります。

試すたくなるのは「心配」だからです。
心配なのは「大切」だからですよね。

心配だから試してしまう気持ちはよく分かります。

でもその前に、「大切」という気持ちもセットで伝える必要があるということを覚えておきましょう。

だからこそ、急がせるより待つ、責めるより支える、試すより自然に補う、という関わり方が大切です。

本人の世界を頭ごなしに壊さない

認知症の方の言葉や行動は、周囲から見ると「現実」とずれているように見えることがあります。

たとえば
90歳の女性が、自分の母親がまだ健在で、自分自身が10代だと思っていることがあります。

現実では、ご両親は亡くなっていて、ご本人は90歳なんです。

でも、
その時の本人にとっては、それが「その人の中の世界」=「その人の感じている事実」なんです。

それを頭ごなしに否定すると、
「分かってもらえない」
「怖い」
と感じさせてしまい、その不安や恐怖が様々な症状として出てきてしまうということがあります。

相手の世界を理解することと気持ちを想像することが大切

何でも話を合わせれば良いか?
というと、そうではありません。

大切なのは
その人の世界を理解しようとする姿勢
どんな気持ちかを想像すること
です。

たとえば、

・不安なのか
・寂しいのか
・怖いのか
・混乱しているのか

そうした背景を考えると、関わり方も変わってきます。

できないことより、できることに目を向ける

逃がした魚は大きい

こんな言葉があるように、人は「あるもの」よりも
「無いもの」に目を向けてやすい傾向にあります。

特に、
手に入れたものを失った場合、自分のものであることが「当たり前」と感じているため、「無くなったもの」に、より意識が向いてしまいます。

それは、本人だけでなく家族も同じです。

前はできていたのに

と思うからこそ、つらくなりやすいんです。

でも、
実際には、全部ができなくなるわけではありません。

・時間をかければできること
・声のかけ方を変えればできること
・部分的ならできること

など、できなくなった中にも「まだまだできること」が沢山あります。

認知症という病気が進行する中、「できること」を残せていることは、実はとてもすごいことなんです。

当たり前を当たり前とは思わずに「できないことを補う」だけでなく、できることを活かす視点を持つこと。

そうすると、
本人の自信や落ち着きにもつながりやすいく、家族としても、ネガティブな感情を持ちにくくなります。

現場で感じたこと

私自身、最初からいつも上手く対応できたわけではありません。

自分の祖母に対して、
間違っていることを「間違っている」と伝えてしまい
かえって拒否を強めてしまったこともありました。

一方で、
説明を急ぐのではなく、
まず安心してもらうことを意識して、
表情や声のトーン、距離感を整えてから関わると、
受け入れられやすくなったこともあります。

認知症の方への対応では、「何を言うか」も大切ですが、それ以上に
「どう伝わるか」
「どう伝えるか」

と考えることが大切だと感じるようになっていきました。

この章の参考資料

  • 厚生労働省「認知症の人の日常生活・社会生活における意思決定支援ガイドライン」
  • 厚生労働省「認知症のある方への支援」
  • 認知症サポーター向け資料(「驚かせない・急がせない・自尊心を傷つけない」)

ここまで説明してきたように、認知症の人への対応には基本があります。

ただ、
実際の介護では、基本を知っていても、いつもその通りに上手くいくとは限りません。

ここでは、
その理由を現実に近い形でお伝えします。

同じ対応をしても反応は毎回同じではない

認知症ケアには基本があります。

ですが、
基本に忠実に対応しても、いつも同じようにいくとは限りません。

昨日は、
落ち着いて受け入れてくれた声かけが、
今日は上手くいかない。

前に安心してくれた言い方なのに、
別の日には拒否される。

認知症の方と関わる中で、
「いつもはこれで上手くいってるのに、何で今日はダメなの⁉」
と感じることはないでしょうか?

「前にこれで上手くいったから、今回もそうしよう」と考える。
それはとても自然なことですし、間違いではありません。

むしろ、
上手くいった経験をもとに関わろうとすることは大切です。

ただ、
認知症のある方の反応は、その時の状態によって変わることがあります。

だからこそ、
ひとつの対応をそのまま当てはめるだけではなく、その時の反応を見ながら少しずつ合わせていくことが必要になります。

その日の体調や環境で大きく変わることがある

反応の違いには、ちゃんと理由が場合も多いです。

その日の体調や疲れ、
不安の強さ、
周りの環境などが影響している
なんてことも少なくありません。

たとえば、

  • 痛みや便秘があって落ち着かない
  • 眠くて頭が働きにくい
  • 疲れていて余裕がない
  • 何をされるのか分からず不安が強い
  • 周りが騒がしくて混乱しやすい
  • 話しかけるタイミングが悪く、受け止める余裕がない

といったことです。

家族から見ると、急に怒ったように見えたり、昨日はできたことが今日はできなかったりすると、

どうして今日はダメなんだろう

と感じると思います。

でも、
実際には、本人の中で体調が悪かったり、不安が強くなったりしていて、それが反応に出ていることがあります。

うまくいかない時は、言い方や関わり方だけを見直すのではなく、体調や周りの環境に原因がないかを見ることも大切です。

家族もいつも理想通りにはできない

認知症介護が難しいのは、
反応が変わること
正しい対応を知っていても上手くいかないこと

だけではありません。

毎日、介護が続いていくと、家族自身も疲れていきます。

忙しさもあります。
眠れない日もあります。
気持ちに余裕がない時もあります。

そんな中で、毎日、毎回、落ち着いて、優しく、理想的に対応し続けるのは簡単なことではありません。

だから、
うまくできない日があって当然です。

自分の中では
「いつもと同じように」
「基本に忠実に」
やっているつもりでも
・イライラが伝わってしまった
・きつい言い方になってしまった
・つい急かしてしまった
そんなことも起こるでしょう。

でも、
理想通りにできなかったからといって、
認知症の症状を強くしてしまったからといって、
「自分のせいだ」
「自分はだめだ」
と責めなくてよいです。

介護も「人間関係」だから完璧でなくて良い

介護は「人間関係」「コミュニケーション」です。

人間関係の中で
ケンカをすることもあるでしょう
不機嫌にあたってしまう日もあるでしょう
でも
それは「普通」のことです。

介護も同じです。

介護は、人と人との関わりの中で行うもの。
疲れて上手くできない日もある。
嫌な言い方をしてしまう日もある。
介護だからと言って、なにも特別に「理想」「完璧」を目指さなくて良いんです。

現場で感じたこと:揺らぎながら「正解」を探していこう

私は看護学生の頃に、認知症看護に興味を持ち始めました。

看護師になってから、様々な研修に参加して認知症看護を学びました。

そこでの学びを活かし、実際の現場で

この関わり方(やり方)なら、大丈夫だろう

と思ったことが、上手くいかなかったことが、何度もあります。

昨日は受け入れられた言葉が、今日は拒否につながるなんでことも何度もありました。

たくさん専門的な知識や技術を学んで、実践を積み重ねていても…です。

私の対応が悪かったのかもしれません。
たまたまその日は機嫌が悪かったのかもしれません。
体調が悪くなる前兆だったこともありました。

でも、こういう揺らぎの中で、毎回その人にとっての「正解」を探していく必要があるのだと思います。


▶介護でイライラしてしまう
 そんな自分を責めていると感じたら


認知症介護では、家族が特に困りやすい場面があります。

ただ、
表に見える言動だけを見ると、
「どうしてこんなことをするのだろう」
「どう対応したらいいのだろう」

と分からなくなりやすいものです。

ここでは、
家族が悩みやすい場面ごとに、背景の考え方と関わり方のヒントを整理していきます。

大切なのは、
「こうすれば必ずうまくいく」という正解を探すことではなく、目の前のその人に合わせて考える視点を
持つことです。

同じことを何度も聞かれるとき

認知症のある方に、同じことを何度も聞かれる。

これは、家族にとっても、つらいことの一つだと思います。

さっき答えたばかりなのに、また聞かれる。
何度説明しても、また同じことを繰り返す。

そんなことが続くと、
こちらも
「もう何回も言ったのに!」
「どうして覚えていないの!」
と言いたくなってしまいます。

ですが、本人の中では、
・前に聞いたこと自体を忘れている
・不安が強くて何度も確認したくなっている

こんなことが起こっています。

つまり、
家族から見ると「同じこと」でも、本人にとっては、
「初めてのこと」
「不安だから確認したいこと」
の場合があるということです。

まず大事なのは、
「何度も聞かれて困る」
という、自分たち家族のしんどさをそのまま認めること。

その上で、
「初めてのように」
「不安を解消してあげるために」

本人と接するのが良いでしょう。

忘れていることを、責めたり、注意したりするのは、逆効果になる場合があるので気をつけてください。

対処の工夫:覚えている事より安心してもらうことを優先する

毎回ていねいに長く説明しようとすると、家族の方が疲れてしまいます。
そのため、こういう場面では、

  • 短く、分かりやすく答える
  • 毎回なるべく同じ言い方で伝える
  • 予定や時間を紙に書いて見えるようにする
  • 言葉だけでなく、安心できる声のトーンで伝える

といった工夫が役立つことがあります。

大切なのは、「覚えていてもらうこと」より、その時の不安を少し減らすことです。

相手が求めているのは「正確な情報」ではなく「安心」

相手が求めているのは、正確な情報そのものより、「大丈夫」と感じられることかもしれません。

もちろん、
いつも穏やかに答え続けるのは、簡単ではありません。

介護をしている家族にとって、同じことを繰り返されるのは、それだけで気持ちが削られます。

なので、
イライラしてしまう自分を責めすぎず、そのうえで、「覚えてもらう」より「安心してもらう」を意識してみると、気持ちが少し楽になるかもしれません。

怒る・拒否するとき

今まで穏やかだった人が、急に怒ったり、強く嫌がったりすると、とても戸惑いますよね。

「どうしてそんなに怒るのだろう」
「こちらは良かれと思ってやっているのに」

と苦しくなることもあでしょう。

でも、怒りや拒否の奥には、ただのわがままではなく、理由があることも少なくありません。

対処の工夫:無理に向き合わずに、一度距離を取る

たとえば、

  • 何をされるのか分からず不安
  • 話の意味がうまくつかめず混乱している
  • 痛みや便秘などの体調の変化がある
  • 恥ずかしさや自尊心の傷つきがある

などです。

家族から見ると
「急に怒った」
「何でも嫌がる」
と見えても、
本人の中では、怖さや混乱が先にある
ということもあります。

こういう時に
無理に話を押し通そうとすると、さらに拒否が強くなることがあります。

まずはその場で説得しようとはせず、
・少し間をおく
・一度その場を離れる
といった対応をしてみるのが良いでしょう。

また、
伝える内容だけではなく、伝え方を見直すことも大切です。

  • 急いだ口調になっていなかったか
  • 一度にたくさん言いすぎていなかったか
  • 相手が疲れている時間帯ではなかったか
  • 何か不安を感じることがなかったか

こうしたことを振り返るだけでも、次の関わり方が少し変わることがあります。

怒りや拒否は不安や恐怖の表れかもしれない

もちろん、
毎回落ち着いて受け止めるのは、簡単ではありません。

怒られたり、強く拒否されたりすれば、家族も傷つきます。

でも、
大切なのは、拒否されたことを、そのまま
「自分を拒否された」
と受け取りすぎないことです。

そして、
「怒ったのには、何か嫌なことや怖いことがあったのかもしれない」という視点を持てるようになると、気持ちが少し楽になるのではないでしょうか。

現場で感じたこと

私も、患者さんに治療に必要なことを説明しても、理解してもらえず怒られたり、お風呂に入ってもらおうとしても、嫌がられたりした経験があります。

そういった時は、
少し距離をおいてから関わり直したり、
話し方・伝え方を変えてみたり、
一度、全然違う話をして、信頼してもらえるように話をしてみたり「安心してもらうこと」を目的として、まずは関わることを意識していました。

意外とちょっとしたきっかけで
簡単に受け入れてもらえて

あれ?
さっきまで怒ってたのは
何だったんだ?

と思うこともありました。

家族だからこそ、「ちゃんとやらないと!」という責任感から真正面から向き合う。
その結果、イライラしてしまうこともあると思います。

でも、
ときには「時間や距離を一旦開ける」ということもやっても良いんです。

それは「放置」でも「放棄」でもなく、良い関係を保つための工夫です。

入浴や着替えを嫌がるとき

入浴や着替えを嫌がられると、困ってしまいますよね。

清潔を保ちたい、気持ちよく過ごしてほしい
そう思うほど、

どうしてこんなに嫌がるのだろう

と苦しくなることもあるのではないでしょうか。

しかし、
本人の中には、こんな「嫌がる理由」があることも少なくありません。

たとえば、

  • 何をされるのか分からず不安になる
  • 服を脱ぐことが恥ずかしい
  • 寒い、疲れる、痛いなど身体的につらい
  • 手順が分からず混乱する
  • 急かされて怖くなる

といった理由があります。

対処の工夫:嫌な「理由」に目を向ける

嫌がる理由を
「単なるワガママ」
「めんどくさがっている」
と思い込んでいませんか?

実は、先に紹介した「本人なりの理由」が、そこにはあるかもしれません。

  • 何をされるのか分からず不安
  • 急に脱がされて怖い・恥ずかしい
  • 手順が分からない
  • 寒い
  • 疲れた・眠い

といった理由を知ることができれば

  • これから何をするかを短く伝える
  • 今から何をするのか事前に伝える
  • 一つずつ区切って声をかける
  • 寒くないように整える
  • 疲れていない時間を選ぶ

このように対処が可能になります。

大切なのは、
「何が嫌なのか」を知り、
できる形に整えること
です。

焦らず、相手の持っている「理由」に目を向けてみましょう。

着替えや入浴は自尊心・羞恥心に関わることと認識しておく

また、
当たり前と思うかもしれませんが、入浴や着替えは、自尊心羞恥心(恥ずかしさ)にも大きく関わります。

私もよく耳にしたことがありますが

下の世話にはなりたくない

とおっしゃる方は本当に多いです。

自分の立場で考えると
・着替えや入浴を見られることが恥ずかしい
・人に着替えや入浴を手伝ってもらうことは自尊心に関わる

ということは分かるんです。

ですが、
手伝う側になると
「ちゃんとやらなきゃ」
という方に意識が向いてしまい、自尊心や羞恥心に関わるということを忘れてしまうことがあります。

ちゃんとやることは大事ですが
「着替えや入浴は
自尊心や羞恥心に関わること」

と再認識するだけで、着替えや入浴の手伝いをする意識が少し変わります。

意識が変わると、相手の反応が変わることもあるでしょう。

現場で感じたこと:諦めるのも一つの選択肢

いくら色んな工夫をしても、
「嫌なものは嫌」
と拒否されてしまうこともしばしばあります。

私は、看護師という立場上、入院患者さんや入居者さんの着替えや入浴を簡単に諦めるわけにはいきませんでした。

でも、
どうしても嫌と言われてしまったら
諦めるのも1つです。

「困っているのは誰か?」を考えてみる

お風呂に入らない
着替えない
が数日続いたとしても命には関わりません。

では、
なぜ困るのか?
何が困るのか?

それは、もしかしたら誰かに
「あの人は家族をしっかり看ていない」
と思われるのが「困る」のかもしれません。

1日や2日お風呂に入っていなくても、着替えていなくても、私たちはご家族に「しっかり介護していない」とは思いません。

その大変さも知っているし、毎日頑張っているのも知っています。

だらか、
どうしても拒否されてしまったときは、勇気を出して「諦める」という選択をしても良い―

そう自分に許可を出してあげてください。

落ち着かず歩き回るとき

家の中を何度も行ったり来たりしたり、「帰る」と言って外に出ようとしたり、落ち着かず歩き回る様子が続くと、家族としては、とても心配になりますよね。

転倒や外出の危険もあるので、
「とにかく止めなければ!!」
と思うのも自然なことです。

でも、
こうした行動も、ただの問題行動として、片づけない方がよいことがあります。

本人の中では、何か理由があって動いている場合が多いです。

たとえば、

  • トイレに行きたい
  • どこか落ち着かない
  • 家に帰らなければと思っている
  • 誰かを探している
  • 体がつらい、じっとしていられない
  • 周りの環境が落ち着かず不安が強い

「目的」なんてないように見えるかもしれません。

でも実は、
本人の中には何らかの想いや、不安があることがあります。

歩き回る目的は「お父さんの夕飯」が心配だったから

入院中、夕方になると

「家に帰らなきゃ」

と毎日帰ろうとする女性がいました。

理由を聞くと

お父さん(旦那さん)に
ご飯を作ってあげなきゃ

と言うんです。

この方にとって、「お父さんのご飯を作ること」は、とても大切なことだったんだと思います。

こんな「想い」から、落ち着かずウロウロしていることもある。
だから、
ただ「座ってて」「歩かないで」と、止めるだけでは、かえって不安や混乱を強めてしまうことがあるんです。

最優先は「安全確保」を確保

まず大切なのは、安全を確保です。

・転びやすい物がないか
・外に出てしまわないか
・危ない場所に近づいていないか
などを見ることは欠かせません。

そのうえで、

  • 何か探している様子はないか
  • トイレや空腹、痛みなどの身体的な不快はないか
  • 暑さ寒さや騒がしさなど、落ち着きにくい環境ではないか
  • 「帰りたい」などの言葉の背景に不安がないか

を見ていくと、関わり方のヒントが見えてくることがあります。

対処の工夫:無理に留めずに一緒に歩いてみる

無理に止めるより、
・少し一緒に歩く
・気持ちを受け止める
・別の安心できる行動に誘う

などの対応で落ち着くこともあります。

大切なのは、行動そのものだけを見るのではなく、なぜ落ち着かないのかを考えることです。

現場で感じたこと

真夜中に突然

帰る!

と言って荷物をまとめ始めた入院患者さんと一緒に、荷物を持ちながら廊下を歩いたことがあります。

👴🏻「今から家に帰る」

「そうなんですね。
どうやって帰るんですか?」

👴🏻「バスに乗って帰る」

「でも、今は夜中だから
バスは走ってないですよ?」

👴🏻「じゃあ、娘にでも電話するわ」

「夜中に娘さんに電話したら、
娘さんビックリしませんか?」

会話をしながら、
ナースステーション前の
談話室までたどり着くと

👴🏻「なんだ!外、真っ暗だな」

「そうですね。まだ夜中ですからね。
外寒いですよ?
お家に帰るかは、
また明日一緒に考えましょ」

👴🏻「そうだな。
今日はここに泊まらせてもらえるか?」

―なんてこともありました。

必死に止めれば止めるほど、どんどん興奮してしまう…
ということがありますが、このように想いを受け止めたり、少し一緒に歩いて話していると、症状が落ち着くということは実際によくあります。

相手のしたいことを一緒にしてあげる「余裕」も大切

理由を考えること・確認することも大事ですが、単に「相手のしたいこと」を一緒にしてあげるだけでも、意外と落ち着いたりもします。

何が「正解」とは一概には言えませんが、対応する側が余裕を持つということも、大切なのかもしれません。

妄想や思い込みが強いとき

「お金を盗られた」
「知らない人が家にいる」
「悪口を言われている」

など、実際に起きていない事であっても、本人は事実と思っている——。

家族からすると事実とは違うため、驚いたり、傷ついたり、どう対応すればよいか分からなくなったりしやすい場面です。

こうした訴えも、本人の中では、
「そうに違いない」
と感じられているため、その「本人にとっての事実」を否定すると、

  • 分かってもらえない
  • ごまかされた
  • やはり怪しい(疑い)

と感じて、不安や不信感を強めてしまう場合があります。

こういう時は、まず事実を正すことより、感情にフォーカスを当てることが大切です。

たとえば、

  • 不安が強いのか
  • 怖くなっているのか
  • 混乱しているのか
  • 何かを失った感覚があるのか

といった背景です。

そのうえで、

  • まず気持ちを受け止める
  • 一緒に確認する形をとる
  • 安心できる言葉を添える
  • 話題や場面を少し変えて気持ちを切り替える

といった関わり方の方が、落ち着きにつながることがあります。

もちろん、家族である自分が疑われるのは、とてもつらいことです。

ですが、
本人は、誰かを責めたいのではなく、不安や混乱の結果、そういう反応になってしまっているのです。

だからこそ
本人の言っている言葉を、そのまま真正面から受け止めるのではなく、相手の感情だけに注目する。

感情を理解しようとする姿勢を持つことは、本人の安心だけでなく、家族の心を守るための方法でもあります。

妄想や思い込みが強く、生活への影響が大きい時や、安全面が心配な時は、家族だけで抱え込まず、主治医に相談することが大切です。

現場で感じたこと

【認知症の人の発言は否定してはいけない】

学生時代からそう教わってきました。

医療者にとっても「否定しないこと」
認知症対応の基本です。

ですが、
「お前は私に危害を加えようとしている」
「ここにあった財布が盗まれた」
という事実ではないことに対して、否定をせずに寄り添うということは、その「妄想」を肯定することになる。

でも、妄想に対して肯定的な発言は
症状を悪化させる可能性がある
…とも言われています。

正直

じゃあ、どうしろと…

という気持ちになります。

私自身は、「否定をしない!!でも肯定もしない。」の答えは「感情に寄り添うこと」だと思っています。

たとえば
財布を盗まれたのは妄想だとしても、財布を盗まれて、不安、怖い、悔しいという感情を抱いているのは「事実」です。

「本人の思い込んでいる事実(妄想)」より「本人の感情(事実)」にフォーカスを当てる

その後に
一緒に探してみる
一緒に思い出してみる
などの具体的な行動をするようにしています。

もちろん、
それでも上手くいかないこともあります。

でも、本人が落ち着きを取り戻すきっかけや、感じていることが「事実ではない」と気が付けるきっかけにはなっているんじゃないかと思っています。

ここまで、
認知症のある方に見られやすい症状や、家族が困りやすい場面についてお伝えしてきました。

その中で私がいつも感じるのは、認知症ケアでは「何を言うか」だけでなく、どう受け取られるかが、とても大切だということです。

正しい説明をすることより、まず安心してもらうこと、不安や怖さに目を向けること。

私は、看護師として、そうしたことを意識しながら
関わるようにしています。

ここでは、私が認知症ケアで特に大切にしていることを4つにまとめました。

ゆっくり関わる

私がまず意識しているのは、ゆっくり関わることです。

これは、話すスピードだけではありません。

動く速さ、近づく速さ、声をかける間の取り方も含めて、全体を少しゆっくりにすることを意識しています。

例えば
「怒っている人」を思い浮かべてください。

怒っている女性看護師

その「怒っている人」の
話すスピード
動くスピード
かなり早いのではないでしょうか?

速さ(早さ)は、人に対して、攻撃的な印象を与えてしまう場合があります。

ましてや認知症の方にとっては、速い(早い)=情報量が多いという状況は、情報処理が追い付かなくなり
混乱しやすくなってしまいます。

だから私は、
ゆっくり話す
ゆっくり動く

ことを一番に心掛けています。

また
説明を急がず、反応を待つことも大切にしています。

すぐに返事がなくても、
すぐに動いてもらえなくても、
少し待ってみる。
それだけで受け止め方が変わることもあります。

ゆっくり関わることは、ただ動作を遅くすることではなく、相手が安心してついてこられる速度に合わせることだと思っています。

柔らかさを意識する

次に意識しているのは、柔らかさです。

柔らかさというのは、口調のトーンや話し方、触れ方の「やわらかさ」のことです。

同じ言葉でも、少し口調が硬いだけで、相手が身構えてしまうこともあります。
※もちろん、丁寧な言葉遣いを好む方もいます。
そういう方には、その方に合わせて

「少し硬い口調」で話しかける時もあります。
「その人に合わせること」が大切ですね!

触れる時も同じです。
必要な介助のつもりでも、手に力が入っていたり、動きが硬かったりすると、それだけで緊張させてしまいます。

人は、言葉の意味そのものよりも、声の調子や関わり方の雰囲気の方が、強く印象に残ると言われています。
メラビアンの法則と言われています)

だから私は、
「何を言うか」だけでなく、「どう伝えるか」。
つまり、言葉以外の部分を大切にしています。

やわらかい声、
やわらかい手、
やわらかい関わり方。

それだけで、
安心に繋がることがあると感じています。

目線と表情を合わせる

私が大切にしている3つ目は、目線と表情です。

具体的には

  • いきなり言葉をかけるのではなく、まずはアイコンタクト
  • 目の高さを合わせる
  • 表情を大きく

などを意識しています。

認知症の方とのコミュニケーションでは、言葉だけで全てが伝えるのは、とても難しい―。

だからこそ、
表情や目線から伝わる安心感は、とても大きいものです。

目を合わせることは
「私はあなたを認識しています」
「あなたに伝えています」

というメッセージを含んでいます。

大げさかもしれませんが広い意味では
「あなたの存在を認めています」
ということです。

このメッセージが、安心感につながっているのだと
私は考えています。

目を合わせることで相手の感情を読み取れる

また、目線を合わせることは、相手の感情を読み取るためにも大切です。

不安そうなのか、緊張しているのか、怒りが強いのか、少し落ち着いてきたのか。

そうしたことは、言葉よりも先に表情に出ていることがあります。

そのためにも、目線を合わせることは、欠かせないことだと感じています。

表情で好意か敵意は伝わっている

高齢の方は、耳が遠くなってしまうという特徴もあります。

そのため、言葉で伝えても上手く聞こえていないことも、しばしばあります。

そのときに役立つのが「表情」です。

人はコミュニケーションを取る中で、良いことを言っているのか、嫌なことを言っているのかは、表情や声のトーンなどで判断しています。

つまり
表情を大きくすることで、相手が伝えようとしていることが、
「好意なのか」
「敵意なのか」
大まかな意味が伝わりやすくなります。

表情を合わせることで共感が生まれる

また、表情を合わせることもとても大切です。

これは、あなたも人と話す時に、無意識で行っていることでもあるでしょう。

例えば、悲しい話を聴いているとき、
聞いている側も悲しい顔になっています。

悲しい顔で聞いてくれているから、「分かってくれている」と感じます。

ニュースを読んでいる女性キャスター

反対に
Newsを読むアナウンサーが、真面目なニュースを読んでいるのに、笑っているように見えると
「このアナウンサーは不謹慎だ!」
と、たくさんのクレームの電話が入る―
なんて話を聞いたことがあるのではないでしょうか。

このように
場面や相手の話に表情が合っているのか、表情がズレているのか
——で、人は「共感」を判断しています。

表情をコントロールしていくことは、認知症の方の安心に大きく貢献してくれます。

タッチと距離感を大切にする

4つ目に意識しているのは、距離感タッチングです。

距離感は関係性の表れ

認知症のある方に関わる時は、どのくらいの距離で近づくか、どんなふうに触れるかでも、受け止め方が変わることがあります。

急に距離を詰めると、びっくりしたり、不安が強くなったりすることがあります。

逆に、距離が遠すぎると、気持ちが届きにくいこともあります。

だから私は、相手の反応を見ながら、距離感を合わせることを意識しています。

タッチング

必要な時には、そっと手に触れることもあります。

言葉だけでは届きにくい場面でも、触れ方によって安心が伝わることがあるからです。

あなたも、
落ち込んだときに特に言葉を掛けられなかったけど、背中をさすってもらって安心した——
なんて経験がありませんか?

このように触れる(タッチング)には、相手を安心させる効果があります。

ただ、
タッチングは、誰にでも同じように使えるものではありません。

触れられること自体が苦手な方もいますし、その日の状態によっても受け取り方は変わります。

また、
相手との関係性によっても、意味合いが大きく変化してしまうので、使い方には注意が必要です。

だからこそ大切なのは、
触れることそのものではなく、相手に合った距離と関わり方を探ることだと、私は思っています。


すべては安心してもらうための「土台」

私が意識しているのは、特別な技術というより、安心が伝わる関わり方の土台です。

そして、
その土台を形にしやすいのが、ハンドケアだと感じています。

ハンドケアは、いわゆる「手のマッサージ」をイメージしてくれて良いです。

※ここでは、イメージしやすくするために「マッサージ」という言葉を使用しています。
本来のあん摩マッサージ指圧師が行っている医業類似行為にあたる「マッサージ」のことではありません。

目的も無く触れると警戒されやすいですが

手が冷たいからのマッサージをしますね

と伝えると「触れる目的」が分かるので、触れられる不安が減ります。

また
「触れる」という行為は、「相手との距離」をゼロにすることでもあります。

人は関係性によって、「保つ距離」が変わります。

逆を言うと
物理的な距離が縮まることで、相手との関係が近いと感じます。

ハンドケアは
関係性の構築と安心感の提供に
とても役立ってくれる技術の1つです。

こちらの記事で、認知症ケアの中で私がハンドケアを
どう捉えているのかを詳しくお伝えします。

「ハンドケアの方法」:現在記事作成中です
もうしばらくお待ちください。

認知症介護は、知識があっても、それだけで乗り切れるものではありません。

相手の反応に戸惑ったり、思うようにいかないことが続いたりすると、家族の心も少しずつ疲れていきます。

イライラしてしまう。
優しくできない日がある。
もう無理かもしれないと思う。

そんなふうに感じることがあっても、おかしなことではありません。

毎日の介護の中でそう感じるのは、とても自然なことだと思います。

むしろ、
家族だからこそ、気持ちが強くなってしまうこともあるでしょう。


だからこそ、
「ちゃんとできない自分が悪い」と、ひとりで抱え込まないでほしいんです。

認知症介護は、家族だけで何とかしようとすると苦しくなりやすいものです。

困った時は、かかりつけ医地域包括支援センター
ケアマネジャーなどに遠慮せずに相談をしていきましょう。

私自身もカウンセリングを行っているので、今までの経験を踏まえつつ、ご相談にのることも可能です。
まずは、「お問い合わせ」よりご相談ください。
SoRaに「介護の無料相談」をしてみる

誰かに話すだけでも、気持ちが少し整理されることもあるでしょう。

「どう対応したらいいか分からない」
と言葉にするだけでも、次の一歩が見えやすくなることもあります。

がんばり続けることより、無理をしすぎないこと!

それも、認知症介護では大切なことの1つだと思います。


認知症は、もの忘れだけではなく、判断のしにくさや段取りの難しさ、不安や拒否など、さまざまな形で生活に影響が出るものです。

また、
認知症にはいくつかの種類があり、中核症状と周辺症状(BPSD)を分けて考えることで、「認知症の方の中で何が起きているのか」が少し整理しやすくなります。

対応の基本はあります。
ですが、
実際の介護は教科書通りにはいかないことも多く、
その日の体調や環境、本人の不安の強さによって
反応が変わることがあります。

だからこそ大切なのは、
正解をひとつに決めることではなく、目の前のその人を見ながら関わり方を考えていくことです。

介護をしていると、うまくできない日もあります。
イライラしてしまう日もあります。
でも、
それだけで「自分はダメだ」と責めないでください。

認知症介護は、ひとりで抱え込まなくていい。

この記事が、少しでもそう感じられるきっかけになれば嬉しいです。

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このブログは、看護師(臨床経験10年以上)、家族ケア専門士が書いています
集中治療室・救急外来・内科・外科・整形外科・訪問看護・特別養護老人ホーム・デイサービスなど、幅広い医療・介護現場を経験
介護認定の認定調査員として、韮崎市からの依頼を受け、年間60件以上の要介護認定調査を行い、介護制度と在宅介護の現場にも精通
国立大学非常勤講師(高齢者看護学実習指導教員)
心理学・カウンセリングを15年以上学び、現在はカウンセラーとしても活動

【資格・実績】
・ 看護師
・家族ケア専門士

・DMAT隊員
・グリーフケア専門士
・認定調査員(年60件訪問)
・ハンドケアセラピスト
・アロマテラピー検定1級
・ヒューマンギルドにてアドラー心理学・カウンセラー養成講座修了
・ユマニチュード基礎講座修了


「医学的知識 × 心理学的支援 × リラクゼーション」を組み合わせて
介護をするご家族の身体と心を支えるための活動をしています。

最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

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