代理意思決定:家族が代わりに決断をしなければならない時

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「代理意思決定」
あまり聞いたことがない言葉かもしれません。

病院では、この「代理意思決定」をしなければならない場面がよくあります。

代理意思決定とは、簡単に言えば、治療方針や手術の同意などに対して、第三者(ほとんどはご家族)が、本人に代わり、その意思を示す・決定することをいいます。

「代理意思決定」という言葉は聞いたことはなくても、こういった場面を経験している人は多いのではないでしょうか?
また、ドラマや人からの話などで、聞いたことがあるかもしれません。

本人、家族の心の準備が出来ているかどうかは関係なく、ある日突然、この「代理意思決定」は迫られます。

大切な家族がいるからこそ、今、「代理意思決定」について、一緒に考えてみましょう。

目次

1.代理意思決定とは —家族の意思ではなく、本人の意思を代わりに伝えること—

代理意思決定とは、第三者(ほとんどはご家族)が、本人に代わり、その意思を示す・決定することです。
あくまでも、「家族の意思」ではなく、「本人の意思」「本人の代わり」に伝えることです。

入院をしていると、意識がない患者さんや、認知症を患い自分で何かを決めることができない患者さんの代わりに、ご家族が重要なことを決断しなければならない時があります。

例えば

  • 手術の説明で、成功率や合併症のリスクなどを確認したうえでの同意
  • ご飯が食べられなくなった時に、経管栄養(直接、胃に管を通して栄養を取る方法)というものを行うかどうか
  • 万が一の時に、延命(人工呼吸器や心肺蘇生)を行うかどうか

…など、こんな時に、ご本人の代わって、ご家族に決断してもらうことがあります。

こういった場面では、「大切な家族にもっと長生きしてほしい」「いなくなることを受け入れられない(受け入れる準備が、まだできていない)」といった、家族の想いがあるのは当然でしょう。

しかし、その「家族の想い」が、「本人の想い・意思」を反映していないことがあります。

元気な時に『管に繋がれるのなんて嫌』『食べられなくなったら、そのままでいい』と言っていた」
でも、いざとなったら、それを受け入れることはできず、自分たちの「生きていて欲しい」を優先して、延命を望んだ。

実際、こういったことはよく起こります。

この例が、「間違い」というわけではありません。

しかし

  • 「本人の意思を反映させないのではないか」
  • 「家族の意見だけを優先してしまっていないか」

こういった視点を持って、本人の代わりに意思決定していかなければならない難しさがあるということを、知っていただきたいのです。

2.「なるべく早く決めてください」と急かされる中で、決断しなければならないことがある

医療者側としては、命に関わる状態であるほど

いつ何が起こるか分からないから、早く決断をしてもらいたい!

と考えます。

そのため、延命を希望するか・しないかについて

  • 「なるべく早くご家族で相談して答えを出してほしいです」
  • 「予断を許さない状況なので、早めに決めていただきたいです」

と、ご家族に伝えることがあります。

延命治療に関しては、意思を確認していないと、基本的には全力で延命することを最優先にします。
しかし、もしご本人が、本当は延命を望んでいなかったら、ご本人の意思に反した治療を行ってしまうことになってしまいます。

その場合、必要のない苦痛を与えてしまうことになるということにもなります。

医療者は、もしもの事が起こる可能性が考えられる場合、こういった事態が起こらないためにも、早急に決断をしてもらおうと、ご家族を急かしてしまうような伝え方をしてしまうことがあります。

3.重要なことだからこそ、家族は簡単に決められない!

大事な決断だからこそ決められない
急かされても、重要なことだからこそ、簡単に決められない

医療者側の気持ちが分かったからといって、重要なことを簡単に決めることはできませんよね。

家族が決断できない理由としては

  • 不安や責任の重さ
  • 命の選択をする気がして罪悪感を抱く
  • 一度決めたら変えられないのではないかと思っている

このようなことが挙げられます。

①不安や責任の重さから、すぐに決断できない

手術がうまくいかないもしれない
上手くいったとしても合併症が起こるかもしれない

これを自分たちが決めることで、本人の命を縮めることになるかもしれない

延命をしないって言ったら、見捨てたことになるのではないか

…と、命に直結するような決断であればあるほど、まるで「命の選択をしている」みたいに感じてしまい、不安や責任の重さに、決断することができなくなります。

②決断をしたことを後悔することもある

「延命治療はしない」と決断したとしても、ご本人がお亡くなりになった時に

自分たちが決めたせいで、こういう結果になった

もっといい方法があったのではないか

あの時、違う決断をしていれば、今も元気に生きていたのかもしれないのに

…と、後悔罪悪感をもってしまうご家族もいらっしゃいました。

延命に限った話ではないですが、延命は命に関わることのため、後悔や罪悪感が強いです。

そして、延命の場合は特に、「延命をする」と決めても、「延命をしない」と決めても、万が一のことが起きた場合、どちらを選んでも後悔をし、罪悪感をもつことが多いです。

でも、決して誤解しないでください。
延命をするか・しないかを決めたとしても、「命の選択」をしたわけではありません。

見捨てたわけでも、苦しい思いをさせようとしたわけでもありません。

大切な人の人生を、一生懸命考えて決めた結果です。

どうか「自分のせいで…」と思わないでください。

そして、そういう後悔や罪悪感を持たないためにも、本人の意思を一番に考えて、「代理意思決定」をする必要があるんです。

③一度決めたことなのに迷ってしまう

不安や責任の重さを乗り越え、「後悔しない」と決断したとしても、一度決めたことを、迷ってしまうこともあります

そして、一度決めたことに迷いが生じて、心が揺れることを良くないことだと、思っているご家族も多いです。

大事なことだからこそ、迷って当然です。
迷うのが、当たり前なんです。

迷って良いんです。
迷った時には、医師や看護師に相談してください。

もう一度説明を聞くなり、話し合いをするなり、ご家族の意見や想いを、再確認すればいいだけなんです。
そのために、医師や看護師などの専門職がいるんです。

どうか独りで、家族だけで背負わず、専門職を頼ってください。
そして、一緒に迷って、一番いい方法を一緒に考えていきましょう。

4.医療者がサポートすべきこと

ここまでは、代理意思決定について、御家族に向けて書いてきました。

ここからは、サポートする人に向けて書いていきます。

ここまで読んでくれたご家族、もしくは代理意思決定が今後必要になると考えている医療者・サポートする人ではない方は

「こういったことをサポートしてもらえば良いんだ」
「こういうふうに関わってもらえば良いんだ」

という参考にしてみてください。

①家族には罪悪感や後悔、恐怖があること前提に関わる

自分のことですら迷うような決断。
それを「他人の代わり」に行わなければならない。

迷いも多く、決断もしにくいのは当然です。

そして、迷って考え抜いて決めたことだからこそ

本当に良かったんだろうか

他に方法はなかったんだろうか

本人はこの結果を本当に望んでいたんだろうか

という気持ちを強く持ってしまうんだと思います。

大切な家族の事だからこそ、すぐには決められないし、迷いも生まれる。

代理意思決定に関わる医療者は、このご家族の不安や責任、後悔、迷いがある。
これらの想いが、あって当たり前ということを前提に関わっていく必要があります。

そして、そこに配慮しながら「なるべく早く決断してもらう」ように、サポートしていく必要があります。

ここに配慮をせずに、決断を急かしてしまうと、「決められない」と言われて、ご家族も医療者も困る状況にしてしまう。
もしくは、ご家族に不要な不安や後悔を生んでしまいます…。

家族会議参加する看護師、代理意思決定支援をする看護師のイラスト

②少しでも家族の負担を少なくするために「一緒に考える」

私たち医療者は、ご家族に決断を丸投げするのではなく、この罪悪感や後悔、決断をすることへの恐怖を持つことを想定しなければなりません。

また、そういった気持ちを、少しでも感じないように、軽減するように関わっていく必要があります。

そのために医療者は

「患者さんがどんな価値観を持っていたのか」
「もし、自分がその人だったら、どんな決断をするのか」

など、「ご本人の希望」を確認するための情報を、ご家族に聞きながら、ご本人の代わりに「ご本人の希望を伝える役割」ご家族にお願いしていく必要があると思います。

つまり「ご家族の希望」ではなく、「ご本人の希望」になるべく近づけるために、「一緒に考える」ことが
医療者の役割だと個人的には思います。

③「ご家族の希望」を聞くことで、罪悪感を背負わせてしまう

代理意思決定をした(する)ご家族の不安や迷いに対して、配慮をせずに決断を急かしてしまうと、ご家族に不要な不安や後悔を生んでしまうと 前述しました。

これ以外にも、ご家族がどうしたいかという「ご家族の希望」を聞いてしまうと、ご本人の意に沿わない治療をしてしまう可能性があります。

その結果、ご家族に、本来背負わなくていい罪悪感や責任を持たせることになってしまいます。

そうならないように「ご本人の希望」に沿えるように、患者さんが

・どんな価値観を持っているのか
・どんな考えをしている人なのか

これらを考え、ご家族に決断をしてもらう。

もし、本人が今この場にいて答えられるとしたら、何て言うだろう?

ということを、ご家族に考えてもらえるように質問を投げかけていくことが、「不要な罪悪感や責任を負わせないサポート」だと思います。

④命の長さを決めるのではなく、命の質を決める

延命治療を望まないと決めた、ご家族の中には

なんだか見捨てたみたいに思われないか心配で…

本人は見捨てられたと思わないでしょうか?

と、不安になるご家族もいらっしゃいます。

そのため

この決断は
患者さんの命の長さ
を決める事ものではなく、患者さんの命の質に関わる決断であること。
自分たちの決めたことが、見捨てるということを意味するわけではないということ。

こういったことも、同時にご家族に伝えていかなければなりません。

5.代理意思決定をするご家族に伝えたいこと

代理意思決定をするうえで、ご家族に伝えたいことは

  • 本人の希望を考えることが、本人と自分たちのためだということ
  • 抱いてしまった罪悪感は、その人を大切に想えていた証拠だということ

この2点です。

①「自分たちの希望」ではなく「ご本人の希望」を考えてほしい

もしこれを読んでいる方が、こういった重大な決断をしなければならない時に、覚えておいてほしいのは

大切な家族だから

  • 長生きしてほしい
  • 元気になってほしい

という想いがあるとは思います。

しかし「自分たちの希望」ではなく、「ご本人の希望」を考えて答えを出すことが、「代理意思決定」です。

長生きしたい
でもご飯を食べられなくなるくらいなら
死んだほうがましだ

下の世話にはなりたくない

…など、ご本人が今までに、どんなことを言ってたか
今ここに、ご本人がいたら、答える事が出来たら、何て言うだろうか

自分たち家族の想いや希望の前に、ご本人の今までの想いや希望…
そこに目を向けて考えていただきたいです。

医療者は、ご家族の想いも大切にしたい気持ちもあります。
しかし、やはり一番は「治療を受けるご本人の想いが大切」だと思います。

そのため、ご家族の想いや希望と一緒に

「本人だったら、こう言うだろう」
「本人だったら、こう考えるだろう」

というのも教えていただきたいです。

②罪悪感もその人への大切な想い

ここまで「本人の希望」を考えてほしいと伝えてきました。

最後にもう1つお伝えしたいのは

きっと、どんなに考えても、どんなにいろんな事をやりつくしたとしても、後悔や罪悪感は必ずある

ということです。

この気持ちが無くなることは、決してないと思います。

でも、それは悪いことではないんです。

その罪悪感や後悔は、その人に向けた想いの強さが生んだもの、その人への気持ちの強さの表れです。

なので、つらい気持ちかもしれないけど、その気持ちが大きければ大きいほど
想いが大きかった・強かった
という証拠です。

今ある罪悪感や後悔の裏には、その人への愛情が隠れています

つらい毎日を送らなくていい
悲しんでいてはいけない
罪悪感や後悔なんて持たなくていい

こんな無責任なことを言うつもりはありません。

そこには、その人にしか分からないつらさがあり

その罪悪感や後悔の裏には愛情があるんだよ

と言われた程度で無くなるような、簡単な想いではないということは、分かっているつもりです。

それでも、「今感じている辛さ」「その人への愛情があったから」
「その人への想いの強さ」
知ることで、今の想いを単に「つらいもの」ではない、という視点を持てる。
それだけでも、今あるつらさの形が、少し持ちすい形に変わってくれるんじゃないかと思います。

罪悪感や後悔でつらい時は、愛情深いからこそ、後悔や罪悪感があると、思い出してみてください。

罪悪感と愛情深さについて、こちらでも解説していますので、こちらも読んでみてください

6.まとめ

本人に代わり、意思決定をしなければいけない場面。

高齢化社会になり、そういった場面はどんどん増えているのかもしれません。
そして、コロナ禍で浮き彫りになった看護師の不足(看護師の不足は問題としては元々ありましたが)

これによって、ご家族への意思決定のサポートに時間や人員を割くことが難しい環境になってしまったといえます。

だからこそ、「代理意思決定」というものがどういうものなのか。
家族それぞれの「意思」をいつ・どのように確認していくのか。

事前に知っておき、準備しておかなければなりません。

ご本人にとっても、ご家族にとっても、悔いのない最期を迎えられるように、僕ら医療者もサポートしていけるよう、日々研鑽を積んでいかなければと思います。

この記事が、少しでも誰かの役に立てば幸いです。

最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

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