介護のイライラはあなたのせいじゃない-原因の整理と自分を責めない7つの方法-

親の介護でイライラしてしまうのはあなたのせいじゃない|自己嫌悪を減らす方法アイキャッチ画像
料理中に義母に呼ばれ、家事を中断せざるを得ずイライラする女性を描いたリード漫画。介護と家事の両立に疲れ、感情が揺れ始める場面。|介護のイライラはあなたのせいじゃない-原因の整理と自分を責めない7つの方法-
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夜、一人で反省しながら「なんでイライラしてしまったんだろう」と落ち込む女性を描いたリード漫画。優しくできない自分を責めて苦しむ心情を表す導入シーン。

この記事の冒頭では、家事と介護の両立に悩み、思わずイライラしてしまう女性を描いた4コマのリード漫画を掲載しています。
日常の中で優しくできない自分を責めてしまう心の動きを通して、本編のテーマへとつながる導入部分です。

「なんでこんなにイライラしてしまうんだろう…」
「本当は優しく接したいのに、できない自分が嫌い…」
「こんな自分、最低だ…」

介護をしていると、こんなふうに自分を責めてしまうことはありませんか?

「もっと優しくしなきゃ」と思うほど、うまくいかない。
「イライラしないようにしよう」と決めても、また同じことで怒ってしまう。

そして、心の中でそっとつぶやく。

私って…性格悪いのかな…?

でも、その考えは今日で終わりにしてほしいんです。

なぜなら、あなたの「優しくできない」には必ず理由があるから——。
そしてその理由は、あなたが弱いからでも、性格が悪いからでもありません。

むしろ逆です。

「人一倍、その人を大切に思っている」
「人一倍、その人と一生懸命向き合ってきた」

——だからこそ、心が限界を迎えてしまっただけなんです。

この記事では

この記事では
介護でイライラしてしまう本当の理由を整理しながら
あなたが少しずつ「自分を責めない」ための方法を見つけていけるように、
やさしく丁寧にお話ししていきます。

心を軽くする7つの具体策とともに、
「優しさ」をもう一度取り戻す小さな一歩を見つけていきましょう。


そらのアイコン

【この記事を書いた人】
看護師(臨床経験10年以上)/家族ケア専門士として活動
・国立大学非常勤講師(高齢者看護学実習指導教員)
・グリーフケア専門士取得
・カウンセラー
・集中治療室・救急外来から在宅医療・介護施設まで幅広い現場を経験。

・年間60件以上の認定調査実施。

目次
  • いつもイライラしてしまう自分が嫌だ
  • もっと優しくしたいのに、それができない
  • 同じことで何度も怒って、自己嫌悪になる
  • 頼れる人がいなくて、全部自分で抱えている
  • 限界まで我慢して、心がすり減っている
  • 「私さえ我慢すれば」と自分を後回しにしてきた
  • 「これって私だけ…?」と孤独を感じている

——大丈夫。
あなたは独りではありません。

介護をしている多くの人が、同じように悩み、苦しみ、涙を流しています。

そして、そのほとんどが「どうすればこの気持ちから抜け出せるのか」を知らないまま、自分を責め続けています。

でも、あなたはもう違います。

「なぜ優しくできないのか」
「どうすれば心がラクになるのか」

その答えを、今ここで知ることができるから。

そして、この記事を読み終える頃には、あなたはきっと「自分を嫌いになる必要なんてなかった」と感じられるはずです。

一緒に進んでいきましょう。

イライラは「性格」ではなく“心のサイン”

介護をしていると、ほんの些細なことでもイライラしてしまうことがあります。

さっきも言ったよね!?

どうしてわかってくれないの!?

もう勘弁してっ…!

こんなふうに思ってしまった自分にショックを受け、自己嫌悪に陥る…。

でも、私は知っています。
あなたが、本当は怒りたいわけではなかったということを。

むしろ ——
「大切にしたい」「優しくしたい」
そう思っているからこそ、上手くできなかった自分を責めてしまうのです。


「優しくしたいのにできない」ときに起きていること

多くの人が誤解していることがあります。

「イライラする私は優しくない」
「優しくできない私はダメな人」

でも、それは真実ではありません。

イライラは“性格の問題”ではなく、“心の限界を知らせるサイン”です。

  • 睡眠不足が続いている
  • 休む時間がない
  • 1人で抱えている
  • 誰にも気持ちを出せない
  • 常に気を張っている

こんな状態が続けば、誰だってイライラは募ります。
この状態に終わりが見えなければ、心が擦り切れて当然です。


自分を責める前に知っておきたい“当然の反応”

ここで、1つ大切なことを伝えます。

もしあなたに本当に優しさがなかったなら——
“イライラして自己嫌悪になること”もないはずです。

「自分は優しくできていない…」と思い悩むこと自体「優しさを大切にしたい」心の表れなんです。

つまりあなたは、最初からずっと“優しい人”のままなんです。


苦しいのは「あなたがサボってきたから」じゃない

介護は、心も体も削られます。

仕事、家事、家族のこと、自分のこと…
すべてをやろうとして、限界を超えている人がほとんどです。

「もっと優しくしなきゃ」と思えるあなたは、実はもう十分すぎるほど頑張ってきたはずです。

だからこそ、「イライラしてしまったダメな自分」ではなく、「イライラしてしまうほど、必死に向き合ってきた」と、あなたには思ってほしいんです。


まずは「イライラしてしまう自分」を否定しないことから始める

優しくできない自分を嫌いになる前に、「私、限界だったんだな…」と気づけたほうが何倍も健全です。

そしてこの記事では、この先の章で

✅ なぜイライラしてしまうのか
✅ 優しくなれない“本当の理由”
✅ 心が軽くなる考え方と具体的な方法

を、ステップを追って解説していきます。


そんな対応になってしまうくらい、私は限界だったんだ。

この視点を持てた瞬間から、少しずつ、自分を許せるようになっていきます。

そして、今の自分を知ることが「また優しくできる自分」に戻るための最初の一歩です。

「優しくしたい気持ちはあるのに、優しくできない…」
「頭ではわかっているのに、気持ちがついてこない…」

このような“心の矛盾”を、介護をする多くの人が抱えています。
そして、この“心の矛盾”が、あなたの心と身体を限界に追い込んでいる原因の1つです。

でも、この矛盾には、ちゃんとした理由があります。

ここでは、なぜ優しくしたいのに優しくできないのか?
その裏にある“本当の理由”を、わかりやすく紐解いていきます。


期待と深い愛情によって強いショックを受けているから

「何度言ってもわかってくれない」
「前はできていたのに、どうして…?」

介護をしていると、このように感じてしまうことは、よくあります。

“分かってくれると信じていた”
“「できていた」あの頃のように戻ってほしい”
このような“期待”があると、変わってしまった現実を目の当たりにしたときに、そのギャップの大きさと比例して、大きなショックを受けることになります。

では、期待することが悪いということでしょうか?

それは違います。

期待は「相手を大切に思っている証拠」です。

イライラの根っこには、実は“深い愛情”があります。

元気だった過去の姿
元気になってほしい未来
そこに大きな想いがあるからこそ、ギャップが大きく、ショックも大きいのです。

つまり、あなたが深い愛情を持って接しているからこそ、強いショックを受ける。
それが強いイライラとなって表れるのです。

「好きの反対は無関心」という言葉があります。

あなたは、相手にちゃんと関心を持って接している。
深い愛情があるから関心を向けられている。
だからこそ、あなたは今、大きなショックを受けてイライラしてしまっているのです。

イライラしてしまうことは、愛情が深い証拠。
だからこそ“優しくなれない自分”を責めなくていいんです。


いい介護をしなきゃ!という想いが心の余裕を奪っていくプレッシャー

介護をしている人の多くは、こんな思いを抱えています。

  • 「ちゃんとやらなきゃ」
  • 「失敗しちゃいけない」
  • 「迷惑をかけたくない」
  • 「私が頑張らなきゃ」
  • 「周りから“良い家族”と思われたい」

この“完璧にやらなきゃ”という気持ちが、心を追い詰めていきます。

そしてプレッシャーが強いほど、心の余裕はなくなる。
その結果「優しくできない自分」へと繋がってしまうのです。

近い存在だから…
大切な人だから…
完璧にこなさなければ!
——と、あなたは思っているのかもしれません。

しかし、介護に完璧はありません。
そして、完璧な介護でなくても、相手は充分満足して、感謝して、喜んでくれます。

これは、看護師として多くの患者さんのケアをしてきたからこそ、自信を持って言えることです。

大切な人に「完璧な介護をしてあげたい」と思えるあなたの優しさは、この先もずっと大切にしていてください。
でも、「完璧じゃなくても大丈夫」ということも覚えていてください。


「自分ばっかり…」と感じる孤独が心をすり減らす

「なんで私だけこんなに…?」
「他の家族は手伝ってくれない…」
「誰にもわかってもらえない…」

不安や負担を抱えながら、自分一人で頑張って介護をしていませんか?

同じ家の中の家族も、まるで他人事のよう…


そんな“孤独感”が、あなたの心をすり減らす一番の要因なんです。

誰か一人でも、あなたの気持ちに寄り添ってくれていれば——
あなたはもっと楽に、優しくできたかもしれません。

“孤独”は、優しさを奪います。

逆に言えば、孤独を減らせれば、優しさは自然と戻ってきます。

あなたが今、優しくできないのは、もしかしたら強い孤独を感じているからかもしれません。

孤独を感じることは、弱さではなく“あなたが誰かを想っている証”です。

自分の心に
「今、私は孤独を感じているんじゃないかなぁ?」
と優しく問いかけてみてください。

あなたの心は、今なんて答えてくれましたか?


自分より相手を優先することで優しさが枯れていく

あなたは、今までずっと自分以外の人を優先してきたのではないですか?

  • 自分の時間は後回し
  • 感情を飲み込む
  • 本音を我慢する
  • 「大丈夫」と無理に笑う
  • 泣きたいのに泣かない

自分を犠牲にして、誰かを優先し続ける…

それは“優しさ”であり“責任感”でもあります。

でも同時に、自分の気持ちに蓋をして、心のエネルギーをどんどん減らしていく行為でもあるんです。

エネルギーがなくなれば、優しくなれなくて当然です。

むしろ、優しくできないどころか、全てのことにやる気も出なくなっているのではないでしょうか?
その無気力は、 “怠け” ではなく、頑張り過ぎた結果の“燃え尽き状態”なのです。

自分を労わることは、ワガママではなく“優しさを守るための大事なセルフケア”です。
「優しくできない」は、そんなセルフケアを行うための合図です。


「優しくしなきゃ!」と思うほど心が硬くなる

あなたは、「家族には優しくしなければならない」と思っていませんか?

家族はとても大切な存在です。

ですが、いくら大切な存在でも、常に優しくし続けるということが可能だと思いますか?

どんなに大好きで大切な相手にだって、ムカつくし、失望するし、嫌いだっ!て思う瞬間…
普通にありますよね。

ですが、なぜか介護をする側になると、自分も世間目も

「家族なんだから優しくして当然でしょ!」
「家族なんだから優しくしなきゃ……」

そんな、勝手な“常識”を介護者に押し付ける傾向があると私は感じます。

そして、その言葉を自分で自分に繰り返し言い聞かせ、心をどんどん追い詰めていく。

優しくしなきゃという言葉。
この言葉の裏には、今のあなたではダメと自分を否定する言葉が隠れています。

この繰り返される自己否定が、心に傷をつけて、優しくすることを難しくしていくのです。

優しさは、頑張って出すものではなく、心がゆるんだときに自然と戻ってくるのです。


「優しくしたい」という家族への想いがあなたを苦しめていた

  • 期待と愛情が深いから変わってしまったことへのショックが大きい
  • 完璧な介護をしなければという思考からのプレッシャー
  • ワンオペによる孤独感
  • 自己犠牲と他者優先
  • 優しくしなければならないという“常識”の押し付け

これらの5つの「優しくできない理由」を振り返ってみると、ある“共通点”が見えてきます。

それは——

「優しくしたい」と願う気持ちがあるからこそ苦しくなっていた

ということ。

つまり 、「優しくしなきゃ!」と頑張ばり続けた結果、優しくできる力がなくなるほど心が疲れてしまったんです。

この後の章では、その疲れの正体をさらに深く理解し、「どうすれば優しさを取り戻せるのか」について一緒に見ていきます。

「何度言ってもわかってくれない」
「前はできていたのに、どうして…」
「もう限界…!」

こうしたイライラ怒りという感情の奥には、もっと深い「本当の感情」が隠れています。

それが、

  • 悲しさ
  • つらさ
  • 不安
  • 孤独
  • 喪失感(失われていく現実への苦しさ)

実はこれらの“感情”こそが、イライラの源なんです。


怒りは心を守るための“バリア”

心理学では、怒りは“二次感情”と呼ばれています。

感情は一次感情と二次感情に分けられます。
寂しい、悔しい、不安などの感情を一次感情といい、怒りを二次感情といいます。

何が「二次」なのかというと、怒りそのものは実は本心ではなく、「本当の気持ち(一次感情)」を守るために出てくる“バリア”
つまり、怒りは何か別の感情から二次的に発生する感情であるということです。

たとえば…

「何度言っても同じことを繰り返す母」にイライラしたとき、こんなふうに考えたとします。

  • もう、あの頃のお母さんには戻らないのかな…(悲しさ)
  • この先どうなるんだろう…(不安)
  • 私ばっかりでしんどい…(孤独)

こんな悲しさや不安、孤独といったつらさから自分を守るために“怒り”という感情に変えている。

怒りは「悪」ではなく、
**自分を守るために生まれた“防衛反応”**なんです。


【介護者のイライラ体験談①】何度も同じことを繰り返す母

何度も同じことを繰り返す母にイライラしてしまった。
小さなことでイライラする自分が嫌いになった話。

「母が認知症で、何度言っても同じことを繰り返します。買い物に連れて行っても、家に醤油があるのに醤油を2本も買おうとするんです。
家にあるから要らない!と何度言っても分かってくれません。
独り暮らしなのに醤油を何本も使い切れるわけないじゃないですか?
そんなことも分からない母にすごくイライラして、気づいたら声を荒げてしまいました…。そんな自分が嫌で家に帰ってから涙が出ました。」
【40代女性】

【介護者のイライラ体験談②】「当たり前」ができなくなった母

以前は自分で料理をしていた母が一人で料理も出来なくなった。
当たり前だったことができなくなったことに苛立ち怒鳴ったことに罪悪感を感じた話。

以前は自分で料理をしていた母が、今は食事も一人では、できなくなりました。
『なんでこんなこともできないの?』と思ってしまいます。
認知症だから仕方がないと思いつつも、それくらいできるでしょ!とも思ってしまう自分に、後から罪悪感で押しつぶされそうになりました。」
【40代女性】

この2つのエピソードにも、

  • 「前はできていたのに…」という悲しみ
  • 「できるはず」「分かるはず」という期待と失望
  • 「あの頃の母はいない…」という寂しさ
  • 「この先どうなるの?」という不安
  • 「優しくできない自分が嫌」いう自分への不満

さまざまな一次感情が隠れていることが分かります。


感情を抑えるほど怒りは強くなる

「怒っちゃいけない」
「我慢しなきゃ」
「感情を出したら迷惑になる」

そうやって一次感情を押し込めると、心の中に“悲しみ・不安・孤独”が溜まり続けます。

溜まった感情は行き場を失い、最終的に“怒り”として一気に爆発してしまいます。

今のあなたの状態は、我慢に我慢を重ねた末ではないですか?
今までどれだけ我慢してきたのか、どれだけ頑張ってきたのか、もう一度振り返ってみてください。

そして、そこまで頑張ってきた自分を、まずはぜひ「よく頑張ったね」と褒めてあげてください。


怒りを減らすには「一次感情に目を向ける」

怒りそのものを「抑えよう」とするのではなく

▢怒りを感じる前に私はどんな気持ちだった?
私は今、何に悲しって思ってる?
▢何が怖かった?
▢何に不安って思った?

と、自分がどんな一次感情を抱いていたのか?怒りの奥にある感情がどんなものなのか?自分の心に聞いてみる。

そこから気付いた一次感情が分かると、不思議と怒りは弱まっていきます。


「怒り」は悪ではなく「心からのメッセージ」

感情を表す言葉に「喜怒哀楽」というものがあります。

なんとなく、喜と楽は良い感情、怒哀は悪い感情というイメージを持っているのではないでしょうか?

ですが、感情自体には、実は良いも悪いもありません。
感情はただ湧いてくるもの。

感情から発生した行動に善悪はあっても、感情には善悪はないんです。

では感情とは何か?

それは、心からのメッセージです。

怒りは、あなたの心がこう叫んでいるサインだと思ってください。

「本当は悲しい」
「不安で苦しい」
「誰かにわかってほしい」

怒りの中にあるこの声に気づけたとき、あなたの“優しさ”は再び動き始めます。


次の章では、「なぜ感情を押し殺してしまうのか?」
その背景をさらに深く掘り下げていきます。

あなたが「自分を責めずに感情と向き合えるようになる」ための大切な一歩になります。

ここまでで、イライラや怒りの裏には、「悲しみ」「不安」「孤独」などの一次感情があると分かりました。

では——
なぜ私たちは、その一次感情を素直に出せずに抑え込んでしまうのでしょうか?

実は、そこには“介護をする人特有の背景”があります。


「弱音を吐いてはいけない」と思ってしまう優しさが感情を抑え込む

介護をしている人の多くは、とても責任感が強く、優しい人です。

だからこそ、

  • 「私が頑張らなきゃ」
  • 「弱音を吐いたら迷惑になる」
  • 「大変って言ったら、相手を否定するみたいで言いにくい」
  • 「みんな我慢しているんだから、自分だけ弱音は言えない」

そうやって自分の気持ちを飲み込み、感情を自分の中に閉じ込めてしまいます。

ときに、あなたの長所である「責任感」は、このようにあなたの心を苦しくしてしまう原因になることがあります。


「感情を出すことは甘えと思い感情が出せない

特に真面目な人ほど

「イライラするなんて未熟」
「泣きたいなんて弱い」
「怒るなんて人としてダメ」

と考えます。

あなたも、ネガティブな感情を持つこと自体を悪いことだと決めつけていませんか?

「感情が湧いてこない」は心からのSOS

真面目な日本人の中には、「感情は出さずに我慢するもの」「感情を表に出すことは甘えだ」と考える文化が根強くあります。

私たちは文化的にも感情を出す=負けと捉えがちなんです。

でも、本当は逆です。

感情を感じられることは、“心が生きている証”です。
感情が湧いてこないとき。
それは、心からのSOSのサインなので、まずは休むことを優先してください!

「空気を読むこと」に慣れ過ぎている

また、人間は言葉で理解し合う生き物でもあります。

空気を読む文化を持つ日本人は、察する能力が高く、察してもらい慣れています。そのため、自分の感情を表に出すことに慣れていません。

つらいときは「つらい」と言葉にして、誰かに理解してもらっても良いんですよ。


感情を抑え込むと“心にフタ”がされてしまう

一時的に感情を押し込めると、「やり過ごせた」「気持ちが落ち着いた」と感じるかもしれません。

そして、感情を押し込め続けると、感情にフタをすることが“当たり前”になってしまいます。

しかし、押し込められた感情が消えることはありません。

見えないところでどんどん溜まり、心の中で圧力が高まり続けます。

そして、ある日突然…

  • 急に涙が止まらなくなる
  • 些細なことで爆発する
  • 何も感じなくなる(燃え尽き)
  • 自分を傷つける思考になる

こんな“心が限界を超えたサイン”が出てきます。


感情を抑えることは「自分自身を否定すること」になる

たとえば、「悲しい」と感じている自分に対して

そんなことで泣くな!

しっかりして!

もっと我慢しなよ!

こう言い聞かせてしまうことは、“自分の感情そのものを否定すること”になります。

否定された感情は、安心できる場所を失い、さらに苦しくなる。

——そして最終的に、こう思います。

こんな気持ちになる自分がダメなんだ…

感情を抑えれば抑えるほど、自己嫌悪は強くなっていきます。


感情は「出す」ことで落ち着きを取り戻していく

ここで一つ、大事な事実をお伝えします。

感情は“抑えるもの”ではなく“流すもの”。

  • 悲しいときに泣いたら、少し落ち着いた
  • 不安を誰かに話したら、少し軽くなった
  • イライラを言葉にしたら、冷静になれた

こんな経験、ありませんか?

感情は“出ていく”ことで初めて落ち着きを取り戻すんです。

体験談|自分の気持ちを知ってくれている人がいることが安定に繋がる

介護の情報を共有するノート。そこに感情のままに言葉を書き連ねる家族。
書くことで気持ちの整理ができ、イライラしすぎず日常を過ごせている話

介護サービスが入っていると、家族と関わっている専門職との情報共有にノートを使用することが多いです。
そのノートの中に日々の介護のイライラや、認知症症状による失敗(用意しておいたご飯を食べ忘れた、お米を1日のうちに何度も炊いてしまった、など)を綴るご家族も少なくありません。
しかし、そんな「ノートの中にイライラを書き綴っているご家族」でも、会ってお話をしてみると意外と精神的に安定していると感じることがあります。
介護をしながら仕事をされている方も多く、直接お話を聞ける機会が少ない中、ノートに自分のイライラした気持ちを素直に書いて“誰か”に自分の気持ちを知ってもらうことができる。
自分の気持ちを素直に出すことができる場所がある。
そして、それを受け止めてくれる誰かがいる。
それだけでも、介護をされている方にとっては「嫌な気持ちを書いても良いんだ」と思うことができるのではないかと私は思っています。
【30代看護師】


感情を出せる人は「弱い人」ではなく「心を守れる人」

我慢し続けられる人って、とても「強い人」だと思いますよね?

でも、本当に強さとは

  • 「今、自分はしんどい」と気づける人
  • 「助けて」と言える人
  • 「自分の心を守ろう」とできる人

これは弱さではなく“自分を大切にできる優しさ”“弱い自分を認めることができる強さ”です。

この優しさと強さの両方を併せ持つことができる人が、自分を守るために「助けて」と声を上げられる人です。

口から出さなくても、書くだけでも、心を落ち着けることができます。


まずは「自分の本当の気持ち」に気づくことから始めよう

感情を抑え込まないための「はじめの一歩」は、感情を表に出すことではありません。
感情を抑え込まないための1つ目のステップは“自分の感情に気づくこと”です。

  • 「あ、今ちょっと悲しかったんだな」
  • 「本当は不安だったんだな」
  • 「寂しかったのかもしれない」

自分の気持ちに気づけるようになるだけで、心の負担は確実に減っていきます。


次の章では、「なぜ“自分の気持ち”より“相手”を優先してしまうのか?」について、掘り下げていきます。

この“根本のクセ”を理解することで、あなたの心はもっとラクになります。

私が見てきた介護をしている人中には、「自分のことは後回し」、「相手が最優先」という生き方をしている人がたくさんいました。

それは、あたなの大きな優しさであり、あなたの強い責任感であり、あなたの深い愛情でもあります。
でも、その優しさが“ある瞬間”から自分自身を苦しめる原因に変わってしまうことがあるんです。

ここでは、なぜ「自分より相手」を優先してしまうのか?
そして、その優しさを“自分を守れる形”に変えていくにはどうすればいいのか?
この2つの疑問について、一緒に考えていきます。


自分より相手を優先してしまう理由①「私がやらなきゃ」という“使命感”

介護をしている人の心の中には、こんな思いが根付いています。

  • 「迷惑をかけたくない」
  • 「家族だから、私がやらなきゃ」
  • 「他の人には任せられない」
  • 「私が我慢すれば丸く収まる」

この“使命感”は、あなたの優しさそのものです。

しかし、使命感が強くなりすぎると、「自分を犠牲にすること=正解」と考えるようになってしまいます。

あなたの優しさの象徴である“使命感”は、ときにあなたを傷つける諸刃の剣になるというこをと覚えておいてください。


自分より相手を優先してしまう理由②優しさが“当たり前”になると誰も気づかなくなる

あなたがどれだけ頑張っても、最初は「頑張ってくれてる」と思ってもらっても、その状態が続くと、周りは「それが普通」だと思い始めます。

  • 「いつもやってくれるから大丈夫でしょ」
  • 「あなたが一番分かってるし」
  • 「頼りになるから安心してるよ」

感謝されるどころか、“頼られるのが前提”になる。

その結果…

助けてほしいときほど、誰も助けてくれない。

という状況に陥ってしまうんです。


「大丈夫」と笑うクセが苦しさを増幅させる

本当はしんどいのに、つい言ってしまう言葉。
「大丈夫」

でも、心の中では
「全然大丈夫じゃないよ…」
「誰か助けて…」
と叫んでいる。
そんなことって、実はよくありますよね?

“大丈夫なフリ”を続けることで、誰にも本音を理解されなくなる。

それどころか、“大丈夫なフリ”を続け過ぎて、自分ですら自分の気持ちが分からなくなってしまう。

大丈夫ではないときの「大丈夫」には、こういった弊害があるんです。

その「大丈夫」は、あなたの本当の気持ちですか?


“自分を後回し”にするほど優しさを失ってしまう

自分を後回しにして、誰かを優先し続けると、心はエネルギーを消耗し続けます。

エネルギーがなくなれば…

  • イライラしやすくなる
  • 優しくできなくなる
  • 相手の言葉や行動に敏感になる
  • 小さなことでも傷つきやすくなる
  • 自己嫌悪に陥る

つまり、優しさで誰かを守るための行動が、いつの間にか“優しさを奪う原因”になってしまうのです。


本当の優しさは「自分を大切にすること」も含まれる

ここで、大切な真実をお伝えします。

“自分を犠牲にする”ことだけが優しさではありません。

本当の優しさは、次のような形も持っています。

  1. 自分を大切にしながら
  2. 無理のないペースで
  3. 長く続けていける方法で
  4. お互いを尊重しながら支え合えること

「自分を大切にする」ことと「相手を大切にする」ことは両立できます。

相手に優しくしている分、同じくらいの優しさを自分にも向けて、お互いを大切にできると良いですね。


自分を犠牲にしない優しさは“持続する優しさ”

一時的に自分を削って頑張ることはできます。
でも、それは長くは続きません。

  • あなたが笑えること
  • あなたに余裕があること
  • あなたの心が安定していること。

それが結果的に、相手にとっても一番安心できる環境を作ることにもなります。

相手が安心できる→自分に余裕が持てる
→余裕があるから優しくなれる→優しいから相手が安心できる

あなたが笑って、あなたが余裕があり、あなたの心が安定していると、このように良い循環が生まれます。


あなたが優しさを取り戻すために必要なのは「自己否定」ではなく「自己理解」

「どうして私はこんなにイライラするの?」
「優しくできない私はダメなの?」

そう思ってしまいそうになりますが——

そうではありません。

あなたは今まで、“優しさゆえに”自分を後回しにしてきました。

だからこそ、優しさを取り戻すために「自分を大切にする力」を育てる必要があるのです🌱


次の章では、ここまで何度か触れてきた 「頼ること=悪ではない」という価値観を、
しっかりと言葉で“ひっくり返し”ます。

そしてそれが、あなたの心を根本からラクにしてくれる“ターニングポイント”になります。

介護をしている人の多くが、心のどこかでこう思っています。

「人に頼るなんて、申し訳ない」
「迷惑をかけたくない」
「自分がやるべき」
「助けを求めるなんて、弱い人がすること」

でもそれは、あなたが「責任感」と「優しさ」を持っているからこそ生まれる考え方。

そして、その優しさは本当に尊いものです。

しかし、ここで一つ大切なことをお伝えしたいのです。

頼ることは”負担を渡す”ことではなく“守り続ける力を増やす”こと。
独りで抱えるより、安心して続けられる形を選ぶほうがもっと優しくなれる。


「頼らないこと」が“正解”になるように育ってきた

私たちは小さい頃から

  • 「人に迷惑をかけちゃダメ」
  • 「自分のことは自分でしなさい」
  • 「我慢しなさい」

こんなふうに言われて育ってきたのではないでしょうか?
この言葉たちは「頼る=悪いこと」という価値観を心の奥に刻み込みます。

そして、その結果「人に頼るなんて恥ずかしいこと」と考えるようになってしまった。

小さい頃から繰り返し言い聞かせられてきたこと。
だから大人になっても「助けて」と言えないのは当たり前なんです。


でも介護は「1人で背負うこと」を前提にしていない

介護は本来、チームで支えることを前提に考えられています。

在宅介護の中枢をなす支援のかたちである「地域包括ケアシステム」というのが、まさにそれですね。
👉地域包括ケアシステムについてはこちら|厚生労働省

  • 家族だけで抱えることは想定されていない
  • 介護保険やサービスは「助けを求めるため」にある
  • ケアマネジャー、看護師、ヘルパー…

「支えるプロ」が存在するのはそのためです。

「全部自分でやらなきゃ」と思い込んでしまうことは、本来の国が考えている介護の仕組みとは真逆なんです。

これは真面目な人が陥りがちな在宅介護の罠の1つです。


頼ることは「サボる」ことではなく「守る」こと

「頼ったら負け」
「自分が頑張ればいい」

そう思ってしまう気持ちはよくわかります。

でも、あなたが無理をし続けると、どうなるでしょう?

  • 心が限界を迎えてしまう
  • 体を壊してしまう
  • 家庭や家族関係も壊れてしまう

それは、あなたにとっても、家族にとっても、望まない未来でしょう

だからこそ「頼ることは、未来のあなたと家族を守るための愛ある選択」と考えることが大切なんです。


頼ることは“強さ”

人に頼るには、「自分の弱さを認める勇気」「相手を信じる強さ」が必要です。

  • 「助けてほしい」と自ら言えること
  • 「何ができて」、何が「できないか」が自分で分かっている
  • 「任せた結果を相手に委ねる」と信じていること
  • 「ありがとう」と頼った相手の想いに感謝ができること

これこそが、本当の“強さ”であり“思いやり”です。

あなたが誰か頼る時に不安になる「甘え」や「丸投げ」は、これとは違い

  • 助けてほしいとは言わないで察してもらう
  • 任せたのに結果を相手に委ねられない
  • 依頼を断ることを許さない
  • 感謝がない(感謝をしても相手の行動にしか目を向けない)

これらの多くの項目を満たしていることを、人は「甘え」「丸投げ」と感じます。


頼ってくれて「ありがとう」と言われることもある

意外かもしれませんが、「頼られた側が救われる」ことも実際は多いです。

あなたも誰かに頼られたときに

  • 「信頼してくれて嬉しい」
  • 「頼ってくれてありがとう」
  • 「自分も役に立ててよかった」

このように感じた経験はないでしょうか?

頼ることは“相手の存在価値”を認める行為でもあるんです。


愛される“あなた”が幸せでないと多くの人が悲しむことになる

介護をしていると忘れがちですが、一番大切なのはあなたが心身ともに健康でいることです。

なぜなら、ここまで読んでくれているあなたは、家族の中で誰よりも頼られている存在のはずです。

そんなあなたが倒れたら介護は続けられません。
それどころか、今の「家族の生活」が成り立たなくなります。

当然のことですが、あなたは「介護をするためだけ」にいる存在ではありません。

しかし、家族を第一に考え、家族のために自分を犠牲にしてまで行動する優しいあなたが、倒れてしまうこと——。
つまりは、あなたが不幸せになることは、それだけで家族・友人・知人…多くの人が悲しみを感じることでもあるのです。

自分を守ることは、自分と自分以外の多くの人の幸せを守ることでもある。

ひとりで全部抱えること”は、実は家族にとってもリスクになる。
だからこそ、頼るとは『家族の未来を守る責任ある選択』なんです。


次の章では、
「そうは言っても、頼るのって難しい…」という“心の壁”を一緒に見つめながら、「どうすれば、罪悪感なく頼れるようになるのか?」“具体的なステップ”として落とし込んでいきます。

ここを乗り越えれば、あなたの心は一気にラクになります。


前章で「頼ることは弱さではなく、あなたと家族を守る優しい選択」とお話ししました。

頭では「確かにその通り!」と思えても、実際に頼るとなると心が止まってしまうことってありますよね?

「頼ったほうがいい」と分かっているのに「頼れない自分」がいる。

その“心のギャップ”こそが、あなたを苦しめてきた大きな原因のひとつです。

ここでは

なぜ「頼れない」と感じてしまうのか
その“心の壁”をどう優しく越えていくか
罪悪感を減らしながら頼るための“具体的な方法”

この3つを分かりやすくお話しします。


“頼れない”と感じる心の壁①「頼る=迷惑をかける」と思ってしまう

「忙しいのに悪いな…」
「負担を増やしたくない…」

でも、ここで少し視点を変えてみてください。

あなたは、“頼られること”が迷惑だと思いますか?

誰かに「あなたを信頼しているから、お願いしたい」と言われたとき…

  • 「頼ってくれて嬉しい」
  • 「自分も役に立ててよかった」
  • 「信頼されているって感じる」

こんなふうに思うこともありますよね?

「頼る」ことは、迷惑ではなく「信頼を示す行為」。


“頼れない”と感じる心の壁② 頼んでも「どうせ分かってもらえない」と諦めてしまう

過去に「頼んだのに裏切られた」「話しても理解されなかった」。
そんな経験があると、頼るのが怖くなります。

でも、それは「頼ることが悪い」のではなく、「頼る“相手”や“伝え方”が合っていなかった」だけかもしれません。

次の章では、頼る時の伝え方については、次の章で具体的に解説していきます。


“頼れない”と感じる心の壁③ 「私がやらなきゃ」という責任感が離れない

「他の人じゃ無理」
「私が一番わかってる」
「人に任せたらもっと大変になるかも」

たしかに、あなたが一番詳しいし、一番頑張ってきました。

でも、それは“全部を自分一人で背負うべき”という理由にはなりません。

その責任感の強さは、本当にとても素敵です。
でも“抱え込みすぎ”は、あなたも家族も守れなくなってしまいます。


“頼れない”と感じる心の壁④ 頼ることへの罪悪感が強すぎる

「自分が楽をするために頼むなんて…」
「手を抜くみたいでイヤ…」

真面目なあなたは、そう考えてしまうでしょう

でも、少し考えてみてほしいのです。

もし、あなたが誰かに・何かに頼って、心も身体も“少し楽”になったとします。
その結果、家族に優しくできる時間や気持ちが増えたら、あなたと家族に、どんな変化が起こりますか?

あなたの頭の中に、少し良いイメージが湧いたでしょうか?

私は、頼ることは「手抜き」ではなく幸せな時間が増える選択肢なんだと思っています。


誰かに頼る時の考え方|「逃げること」ではなく「続けるための戦略」と考える

介護はマラソンのようなものです。
42.195kmを全力疾走し続けたら倒れてしまいます。

介護は、ある日突然、なんの準備もなく始まります。
そして、いつ終わりが来るのかゴールも見えません。

そう考えると、練習もできず、永遠と走らされているようなものなので、マラソンよりも過酷ですね。

マラソンを走りきるには、途中で水を飲み、最後まで走り切れるペースを維持して、誰かに支えてもらいながら進んでいきます。

これは介護でも同じです。

頼ることは「介護を投げ出すこと」ではなく、「介護を続けていくための戦略」の1つと考えましょう。


次の章では、「優しくできない日があっても大丈夫」と心から思える“許しと希望”**をお届けします。

この章を読み終える頃には、「頼ることも、弱さも、感情も、全部“人間らしさ”なんだ」と感じられるはずです。


「またイライラしてしまった…」
「優しくできなかった…」
「どうして私はこうなんだろう…」

繰り返しになりますが、大事なことなのであらためて伝えます

こんなふうに感じる日があっても、それは“あなたに優しさがない”からではありません。

優しくできない日があるのは、それだけあなたが一生懸命、限界まで頑張ってきた証です。

“優しくない”のではなく、“心が疲れすぎて余力がなかった”だけだということを、もう一度自分に言い聞かせてあげてください。


優しさは“性格”ではない - “心の余裕”で変わるも-

「私は優しい人間じゃないのかも…」
そう思ってしまうことがあるかもしれません。

でも、優しさは“生まれつきの性格”ではなく、“心に余裕があるときに自然に出てくる力”です。

  • しっかり眠れた日
  • 誰かと少し話せた日
  • 自分の時間が持てた日

こんな日は、いつもより優しくできたという経験がありませんか?

人は“優しさが出せるほどの余裕がなければ優しくできない”というのは、あなたも経験上感じていると思います。

あなたが“その瞬間”に優しくできなかったのは、単に優しくできるほどの余裕がなかっただけです。

どうか、余裕がなくなるまで頑張った自分を責めないであげてください。


「優しくなりたい」と思えるあなたは、すでに優しい

もし、本当にそこに優しさがなかったら、「優しくしたかった」「また優しくなりたい」なんて思わないでしょう。

優しくない人は、もし優しくできなかったとしても、そこで感情は動きません。

優しくできなかった“過去”に、少しでも感情が動いていることが、そこに「優しさがある証」なんです。

——大丈夫。
あなたは、今もずっと変わらず「優しいあなた」です。


優しさは“消える”ものではなく“眠る”もの

大切なのは「ずっと優しくいること」ではありません。

一度優しさを失ったように見えても、また戻れることこそが本当の強さです。

  • イライラしてしまっても
  • うまくできない日があっても
  • 感情が揺れてしまっても

それでも「また優しくなりたい」と思えるなら、あなたの優しさは、ちゃんとあなたの中に戻ってきます。

優しさは決してなくなりません。
今は、あなたの中で静かに息をひそめているだけ。

休めばまた顔を出してくれる“回復できる力”なんです。


自分を大切にすることが優しさを呼び戻すきっかけになる

眠ってしまっている“優しさ”を呼び戻すのに、大きな努力完璧な変化は必要ありません。

大事なのは “ほんの小さな一歩” を踏み出すことです。

  • 5分だけ一人の時間をつくる
  • 「今日はしんどい」と口にしてみる
  • 誰かにちょっと話を聞いてもらう
  • 好きなものをひとつ、自分に許可する

こうした小さな“自分を大切にする行動”が心の余裕を少しずつ回復させます。

余裕が戻れば、優しさも自然と戻ってきます。


「自分を大切にしてね」

小さい頃から、私はこの言葉をよく言われてきた気がします。
一般的にもよく使われる言葉だと思います。

でも——
具体的にどうすることが「自分を大切にする」ことなのか、少なくとも私の経験の中では誰も教えてくれませんでした。

心理学を学び、たくさんの自己啓発本を読んできました。

その中でも「自分を大切にする具体的な方法」には出会えなかった。

そんな私が、ある日気が付いたのは「自分とのドタキャン」という考え方でした。

今日はラーメン食べたいな✨

明日は近くの温泉にでも行って、ゆっくり休もう

そう思っても、いざ当日になると

あー、やっぱめんどくさい!

今日はやめておこう。
また今度でいいや…。

こんなふうに自分との約束を後回しにしてしまう——。
あなたも、こんな「自分とのドタキャン」経験ありませんか?

友達や家族との約束なら、特別な理由がない限りやぶらないのに…なぜか「自分との約束」だけは、簡単にキャンセルしてしまう。

そこにこそ、自分を大切に知るためのヒントがあるんだと、私は気づきました。

「自分との約束」を誰かとの約束と同じくらい大切にしてみよう

気分が変わって予定を変更することは、誰にでもあります。

でも——
その理由が「面倒くさい」だけなら、あなたは“自分との約束”を大切にできていなかったのかもしれません。

「自分との約束を守る」って、少し大げさに聞こえますよね。
でも、誰かとの約束を大切にしているあなたなら、きっとその大切さが分かるはずです。

あなたが誰かとの小さい約束を大切にしている理由は、約束を大切にする=相手を大切にすることだと理解しているからではないですか?

それなら、あなたは“自分との約束”も同じように扱えるはずです。

「今日は早く寝よう」
「10分だけでも散歩しよう」
「好きな音楽を聴こう」

そんな小さな約束を後回しにせず叶えてあげる。
それだけで、心は確実に軽くなります。

友達との約束を守ると信頼が深まるように、自分との約束を守ることは“自分への信頼”を取り戻すこと。

明日、ひとつだけでも良いんです。
何か、自分との“小さな約束”を叶えてあげてください。
その瞬間、あなたの中で“自分を信じる力”が静かに育ちはじめます。

自分を大切にするとは「大切な人と同じように」自分を扱うこと

“今のあなた”は、大切な人にはしないことを、自分にしてしまっているのではないでしょうか?

私は、自分を大切にするとは「大切な人と同じように自分を扱うこと」だと定義してます。

この記事ではここまで、余裕がなければ優しくすることは難しいと、お伝えしてきました。

毎日の介護で余裕がなくなってしまっている“今のあなた”は、きっと——

  • 自分との小さな約束を破る
  • 自分を後回しにする
  • 自分に対して冷たい言葉を向ける
  • 自分の心の声を無視する
  • しんどいのに休ませてあげない

こんなことを繰り返してしまっているのではないですか?

大切な人には絶対にしないことを、自分には繰り返しやってしまっている。
それって、つまり——
自分を大切にできていないということでもあるんです。

いきなり、大切な誰かと同じように自分を扱うことは難しいかもしれません。

ですが、「大切な誰かと同じように自分を大切にしても良い」と、まずは自分に許可を出してあげること。

それなら、今この瞬間から、できる気がしてきませんか?

今日からできる“小さなセルフケア”3選|私が実践している習慣

私は、どういったことが自分を雑に扱っているのかに気づいてからは、次のような方法で「自分を大切にする」を実行しています。

  • どんなに小さな約束であっても自分との約束を守る
  • 他の人と同じような言葉を選んで自分にも語り掛ける
  • できなかった時は自分にちゃんと謝罪をする

どれも、あなたが大切な人に対して、 “当たり前” にやっていることですよね。

たとえば——

  • 「コーヒー飲みたいな」というような小さな約束であっても約束はちゃんと守る
  • 他の人に掛けないようなキツい言葉を自分にも掛けない
  • ついドタキャンしてしまったときは、「そうだよね、行きたかったよね。それなのにごめんね。」と自分の中で気持ちを汲んであげる。

どれも小さなことですが、 “自分を大切に扱う練習” です。

そして、もし心が疲れた日には、深呼吸を3回して、こうつぶやいてください——。

大丈夫〇〇(自分の名前)は、よく頑張ってるよっ♪

その一言が、あなたの心をやさしく支えてくれるはずです。

自分を大切にできる人ほど、誰かに優しくできる余裕を取り戻していけます。

続きにくい大きな変化よりも、積み重ねやすい小さな行動を続けることが大切です。


この章では、自分を大切にする方法について紹介しました。

次は、介護で溜まったストレスから心を開放する簡単な方法——
「今日からできる“心を軽くする具体策”」を7つにまとめてお伝えします。

真面目な人ほど、 “心の余白” を作るのが苦手になりがちです。

24時間、365日
休むことなく続く介護 ——。
この先いつ終わりが来るかもわからない ——。

そんな状況で介護をしていれば、 “心の余白”はなくなり、イライラするのは当然です。

日々の小さな出来事にも、心が重くなり、怒りが爆発してしまう日もあるでしょう。

そこで、この章はストレスが溜まり、怒りが爆発する前の小さなうちに、少しずつ心を軽くする簡単な方法を紹介していきます。

「5分だけ離れる」-物理的距離が“心の余白”をつくる-

イライラを感じても、我慢をして、自分の気持ちを無視し続ける——
そして、嫌な気持ちを抱えつつも、「自分がやらなきゃ」と介護をし続けている。

もしかしたら、あなたの毎日は、そんな「我慢の介護」の繰り返しかもしれません。

イライラを感じたら、その場から5分だけ離れてみる

そんな時間ない!と思う方は、30秒だけでも良いので、その場から一度離れてみましょう。

人間の怒りは6秒間しか継続しないと言われています。
👉6秒間で怒りを可視化~感情的ではなく理性的に~ | 【公式】日本アンガーマネジメント協会

少しの時間、イライラする場所から離れてみるだけでも、あなたの気持ちを冷静にさせのに、充分な時間になります。

合図は短く「ちょっと深呼吸してくるね」でOK。

  • 深呼吸をする
  • 外の空気を吸う
  • グッと両肩を上に持ち上げてストーンッと脱力する(筋弛緩法)
  • 冷水で手首を冷やす
  • 暖かい飲み物を飲む

環境を変えるだけでも、脳がリセットできます。

イライラを感じた時こそ、いったん物理的な距離を取ってみましょう。
少し冷静になれたとき、きっとあなたの“本当の気持ち”、怒りの中にある一次感情が見えてきます。

“吐く”から始める深呼吸-“感情がととのう”呼吸法-

イライラしたら5分だけ離れてみましょう——
と、心を軽くする方法を紹介しました。

その中にで、「深呼吸をする」ことをオススメしました。

ここでは、リラックスできる簡単な方法の代表格「深呼吸」ついて、少し詳しく見ていきたいと思います。

本題に入る前に、ここで1回休憩を挟みましょう。

スマホを置いて(パソコンの人はキーボードから手を放し)、ゆっくり深呼吸をしてみましょう。

できましたか?

いま、深呼吸をしてくださいと言われて

ス—————ッ

…と、大きく息を吸うことから始めませんでしたか?

医療の世界では、息を吐くことを「呼気」、息を吸うことを「吸気」と言います。
呼吸という漢字は、「呼気が先」、「吸気が後」になっています。

人の身体も漢字と同じように、実はまずは息を吐くことが大事なんです。
※息をしっかりと吐くと、体が「息を吸いたい」と反応して自然と肺が膨らんでくれます

💡ポイント①:深呼吸は吐くことから始める


人間には自律神経と呼ばれる「活動的なスイッチ(交感神経)」と「休息のスイッチ(副交感神経)」を切り替える機能が備わっています。

この自律神経は、心臓や腸の動きなどを管理してくれています。
緊張すれば心臓はドキドキするし、呼吸も早くなる。
ご飯を食べた後に眠くなるのも、この自律神経の影響もあるのです。

基本的には、臓器は、自分が意識しなくても止まっては困るので、自律神経が管理してくれているのですが、唯一自分でもコントロールできるところがあります。

それが、肺(呼吸)です。

イライラした時や緊張した時、呼吸は早くなります。(交感神経優位=緊張状態)
お風呂に浸かっている時や寝ている時、呼吸はゆっくりになります。(副交感神経優位=リラックスしてる状態)

人間の身体は面白いもので、行動に気持ちがついてきます。
つまり、意図的に早く呼吸をすれば緊張し、ゆっくり呼吸をするとリラックスできるということです。

イライラしている自分に気付いたら、ゆっくり呼吸をすることを意識してみましょう。

💡ポイント②:イライラしたらゆっくりした呼吸を心がける


呼吸法には、色々なものがありますが、基本的には、どの方法も「吐く」を長くすることが一般的です。

呼気:吸気が2:1となるように
例えば、8秒吐いたら——、4秒吸う—。
というように、吐くほうを長く意識できると、よりリラックス効果が高まります。

💡ポイント③:吐く時間と吸う時間は「2:1」を意識する

「吐くこと」と「ゆっくり(大きく)」、「“吐く”を長く」を意識して深呼吸をすることで、より“心がととのう”のが実感できるでしょう。

“書く・話す”-気持ちを吐き出すことで心のデトックス-

深呼吸が「吐くことが大事」なのと同じように、感情も吐き出すことがとても大切です。

でも、我慢強い人にとって——
感情を吐き出すことが、一番難しかったりします。

ここでは、そんなあなたが、無理なく感情を外に出せる「書く」「話す」方法の2つに分けて紹介していきます。

書く:思考の“見える化”で心をととのえる

頭の中だけで考えていると、なかなか考えはまとまりません。

イライラや不安は、心の中でぐるぐる…グルグル…
同じ思考が回り続け、気づけば頭の中がいっぱいに——。

そんなときは、一度「思った言葉をそのまま」紙に書いてみましょう。

綺麗にまとめようとしなくて大丈夫です。
思ったことを、そのまま殴り書きしていいんです。

自分の中にある気持ちを、全て“そのまま”書きまくってください ✎___

文字にすることで、あなたの頭の中にあった感情が「見える化」します。

自分の気持ちが「見える化」すると、少し冷静になることができます。
そして、あらためて「自分は、こんなふうに思っていたんだな」と気づくことができます。

ここで、もう一つ大切なことは、怒りの奥に隠れた「一次感情」も一緒に探すこと。
(※ここで言う「一次感情」とは、前の章で触れた“本当の気持ち”のことです)

そして、書きだしたそのままの想いと、見つけた「一次感情」を、否定せずに

「そう感じていたんだね」——
と、自分で大切に受け止めてあげましょう。

特別なノートを用意する必要もありません。
スマホのメモでも、裏紙でもOK。
大切なのは、 “誰にも見せない前提で書くこと”です。

誰かに読まれるかも、と思うと、つい「いい人の文章」になってしまいます。
ここでは、あなた自身のためだけに書く。
その自由さが、心を軽くしてくれるのです。

書き終わったら、誰にも分からないようにビリビリに破いて、ゴミ箱に捨てちゃいましょう!

先に紹介した介護者によるノートを使用して介護のイライラを書き連ねていた話も、書いて自分のことを知っている人に想いを伝えたことで、心が軽くなったんでしょうね。
👉【体験談】介護のイライラをノートに書き続けた人が見つけた“心の変化”を見る

話す:声に出すことで、気持ちが整理されていく

もうひとつの「吐き出す」方法は、話すことです。

信頼できる人に話すと、心の中で絡まっていた思いが少しずつほぐれていきます。
話すことで、自分の感情が“音”になり、整理されていくのです。

「介護のことなんて話せる人なんかいない」
そう思う人もいると思います。

そんなときは独り言でもいいですし、生成AIに話してみるのもおすすめです。
※私はchatGPT「アドバイスはいらないから、このイライラに寄り添って」と、たまにグチを聴いてもらっています。

声に出すことは、自分の「自分はこう思っていたんだ」を客観的に気づける行為です。

「頭の中だけで考える」と、「声を出す・その声を自分の耳で聞く」
この2つは、自分の感覚としては似ているかもしれません

ですが、まったく別物です。

声に出すと、自分の言葉が耳から入ってくる。
そのとき、頭の中だけで考えていたときとは違う気づきが生まれます。

この「話す」というのは、相手に理解してもらうことが目的ではなく、自分を理解するために話すのです。

もし涙が出てきても、それは悪いことではありません。
それは、心が動き出した証拠。
止めていた思いが外に流れ出しているだけなのです。

泣いている自分もOK
怒っている自分もOK

どんな自分にもOKを出してあげて、自分はいつも自分の味方でいてくださいね。


信頼できる話す人がいないという人は、プロに頼むのも1つの方法です。

介護サービスを使っている人は、サービスに来てくれる人やケアマネジャーに——。
そういう人もいないという人は、地域包括支援センターに行くと、介護の専門家が親身になって話を聴いてくれます。

地域包括支援センターは、お住まいの地域ごとに設置されています。
介護や暮らしのことで困ったとき、どなたでも無料で相談できます。

地域包括支援センターの詳細は、下記のサイトをご覧ください。
👉地域包括ケアシステム|厚生労働省

日常の中に“吐き出す習慣”を

深呼吸(身体)・書く(頭)・話す(心)——
どれも「吐き出す」という同じ方向のセルフケアです。

無理にポジティブにならなくても大丈夫。
まずは、自分の気持ちを“外に出す”だけで、心は自然と軽くなっていきます。

今日もほんの少しでいいので、深呼吸をして、書いて、話して——。
小さな心のデトックスを日常に取り入れてみてください。

“触れる”セルフケア-ハンドケアで伝わる安心が『細胞レベル』で心をととのえる-

日本語には昔からある言葉「手当て」

頭が痛いとき
お腹が痛いとき
そして、誰かの心がつらいとき

人は「触れること」で、痛みを和らげようとします。

実はこの「手当て」——。
医療の世界でも「タッチケア」「タッチング」と呼ばれ、科学的にも「触れる」ことの効果は証明されているんです。

参考論文:『セルフタッチのストレス緩和効果についての実験的研究 ―皮膚状態の把握可能性に着目して― 山口 創 教授 指導

医学的にも効果がある「触れる」という行為——
あなたは普段、どれだけ意識して自分にしているでしょうか?

一日の内に何度も触れる自分の身体。
きっと多くの人が、「触れ方」を意識することは、あまりないかもしれません。

でも、簡単な触れ方を意識するだけで、凝り固まったあたなの心と身体をほぐすことができます。

自分に優しさを伝える触れ方には、次の2つのポイントがあります。

  1. 水滴が肌を伝うようにゆっくり
  2. ベルベットに触れる時のように柔らかく

以前、私がハンドケアセラピストとして講師を担当したセルフハンドケアのイベントの参加者さんが記事を書いてくれました。
こちらにも、触れる時のポイントが分かりやすく書いてあるので、参考にしてみてください。

👉自分に優しくするための「セルフハンドケア」体験談を読んでみる

この2つのポイントを意識して触れることで、身体は「オキシトシン」と呼ばれる幸せを感じるホルモンを分泌し始めます。

ハンドクリームを塗る時
お風呂上りに化粧水を付ける時

そんな、 “何かのついでの数秒” でも良いんです。

自分のために、自分に目を向けて、ゆっくり、優しく自分に触れてあげてください——
そうすることで、あなたの手が、あなた自身を癒す“リラクゼーション”になります。

オキシトシンのおかげで、あなたの心と身体が細胞レベルで、ととのっていくことでしょう。


抵抗が下がると、お願いしたことへの罪悪感も減らすことができます。

“頼る”-逃げではなく続けるための“戦略”

どんな人でも、頼らなければ、孤立限界は必ず訪れます。

どんなに優しくても、どんなに責任感が強くても——
ひとりで全部を抱えることはできません。

だからこそ、「頼ること」は、介護を続けるために必要な力なんです。


介護で困ったときの具体策【ケース別ガイド】

ここでは、実際によくある介護の場面別に、「どこに」「何を」頼ればいいのか、具体例を用いて見ていきましょう。

朝、出かける前に用意しておいた薬が、帰ってきたら、そのまま机の上に置いてある——。
見当たらないと思ったら、タンスの奥に隠してあった——。

介護をしたことがない人から見たら、大したことのない小さな出来事かもしれない。

でも、責任を持って介護をしている人にとっては

家族なのに、ちゃんと管理していない
家族なのに、ちゃんと看ていない

誰かにそう責められるかもしれない不安が積み重なっていく出来事——。

そんな時は、訪問介護に服薬確認をお願いすることができます。
デイサービスにお願いして、デイサービスに行ったらすぐに飲んでもらうという方法を取っている方もいます。
1日1回の見守りであっても、あなたの負担はぐっと減ります。

詳しい相談先・サービス依頼先はこちら 👉 「薬の内服を確認したい」へ


浴槽をまたげなくなってきて、抱えてあげないと出られない。
腰も痛くて、これ以上は続けられそうにない……。

そんな時は、訪問入浴サービス訪問介護を活用してみましょう。
専用浴槽を持ち込むタイプのサービスもあり、安全かつ介助者の体への負担も軽減できます。

服薬介助と同様に、デイサービスに行ってお風呂を利用しているという方も多いです。


夜に何度もトイレに起きるため、寝不足が続いている。


夜になると、外出しようとして寝てくれない。
いつ玄関を開けて出て行ってしまうか分からないから、心配でゆっくり眠れない。

日中あんなに寝ているのに、夜になると起きてしまう。

夜寝てくれないことは、介護をしているご家族にとって一番つらいことの一つかもしれません。
睡眠不足は、心にとっても身体にとっても、大きな負担です。

このような場合は、ショートステイや入院施設のある病院の「レスパイト(家族が休むための社会的入院)」の利用を検討してみるのもいいでしょう。
一時的に施設で預かってもらうことで、介護者自身が体を休められる「まとまった時間」を取ることができます。

また他にも、保険外サービス(保険を利用しないサービス:金額が高くなる分、自由度が高い)を利用するという方法もあります。


離れて暮らしている両親の様子が気になる。
でも頻繁には帰れない——。

そんな時は、警備会社や生協・牛乳・新聞配達などの地域業者が行っている「見守りサービス」を上手に活用しましょう。

また、民生委員地域包括支援センターへ相談しておくことで、
いざという時に地域で見守りが受けられます。

他にも、隣人の方に見に行ってもらっているという方もいます。
前もってご近所づきあいをしておく、もしくはご本人の近所の交友関係を把握しておくということも、介護には重要な要素になります。

地域包括支援センターは、ご自身が住んでいるところのではなく、当事者となる方(介護が必要になっている方:この例でいえばご両親)の居住地の地域包括支援センターへご相談ください。

今まで私が看護師として出会ってきた「介護の心配」を挙げて、それに対しての相談先/依頼先を一覧にしてみました。

介護の心配事・困りごと相談場所お願いできる人・場所
薬を飲んだか心配地域包括支援センター、ケアマネジャー訪問介護、デイサービス、家族、隣人、薬局(薬剤師訪問サービス)
お風呂に入れられない地域包括支援センター、ケアマネジャー訪問入浴、訪問介護、訪問看護、
デイサービスなど
夜、寝てくれない地域包括支援センター、ケアマネジャー病院(連携室)、保険外サービス事業者ショートステイ、レスパイト入院、
訪問看護(緊急時)、保険外サービスなど
遠くに住む両親が心配地域包括支援センター(ご本人住所地)、ケアマネジャー家電量販店(カメラ購入相談)など訪問介護、デイサービス、
見守りサービス事業者(警備会社、生協)民生委員、隣人など
健康状態が心配地域包括支援センター、ケアマネジャー
病院
訪問看護、病院(訪問診療)、デイサービスなど
介護の心配事・困りごと相談場所お願いできる人・場所
外出したい(旅行、買い物など)保険外サービス事業者、介護タクシー保険外サービス事業者、介護タクシー
爪が切れない地域包括支援センター、ケアマネジャー
病院(皮膚科、整形外科)

訪問ネイルケア
訪問看護、訪問介護、デイサービス、訪問ネイルケア、病院など
連絡が取れない
連絡が取れなくなるのが心配
地域包括支援センター、ケアマネジャー
隣人、民生委員、警察など
訪問介護、デイサービス、家族、隣人
ご飯が作れない
ご飯を食べたか心配
地域包括支援センター、ケアマネジャー訪問介護、デイサービス、配食サービス事業者、コンビニ、など
入院費が心配(入院中)
介護の費用が心配
【入院費】 病院、市町村役場
【介護費用】地域包括支援センター、
      ケアマネジャー
【入院費】 病院、市町村役場
【介護費用】地域包括支援センター、
      ケアマネジャー
入れる施設を探している地域包括支援センター、ケアマネジャー【入院中】病院(連携室)地域包括支援センター、ケアマネジャー【入院中】病院(連携室)

※1:この表は一例です。状態・地域により利用できるサービスは異なります。
  介護保険サービスの利用には、ケアマネジャーによるケアプランが必要です。
  担当ケアマネがいない場合は、ご本人の住所地の地域包括支援センターへご相談ください。
  👉 地域包括ケアシステム|厚生労働省

介護の「困った!」に対してオールマイティに相談できるのが、地域包括支援センターケアマネジャーです。
「迷ったら、まずはこの2つの窓口へ相談」と覚えておくと良いでしょう。

あなたが「少し頼ってみよう」と思えた時、その一歩が、心を軽くする始まりになります。

休ませる-心を戻す仕組み「回復ルーティンを作る」-

心臓の動き、起床と睡眠、排泄、生理周期など、人間の身体にはたくさんのリズムが備わっています。

このリズムが崩れると、体調も崩れていってしまうことがあります。

そこで、 “自分が回復するためのリズム” 回復ルーティンを作ってあげることが、身体と心を整えるカギになります。

そこで、自分だけの回復するためのルーティン(リズム)を作ってあげることが、身体を整えることには重要です。


「やることが終わってから休もう」と思っているうちは、なかなか休めません。

気づけば一日が終わり、「今日も自分の時間なんてなかったな」とため息をつく——。

でも、それを続けていると、心も身体も、いつの間にか限界を超えてしまいます。

だからこそ、「休む」もケアの一部として、あらかじめ“休む仕組み”を生活の中に作っておくことが大切です。


“休む時間”を“先取り”する

「空いたら休もう」と考えていては、休む時間をどんどん先送りしてしまい、休むことは難しくなります。

介護をしていると、空いた時間には次の用事が入り、結局いつも「自分のことは後回し」になってしまうものです。

だからこそ、休む時間は“先に決めてしまう”のがポイント💡

たとえば、

「木曜の午前は“何もしない時間”」
「日曜の朝は、好きな音楽を聴く時間」

このように、スケジュールの中に“休みの予約”を入れてしまいます。
カレンダーに書き込んでもいいですし、スマホにリマインダーを設定しても構いません。

“休みを後回しにしない仕組み”を作ることで、
「休むことに罪悪感を感じない自分」に、少しずつ変わっていけます。


“心の帰る場所”を持っておく- “お気に入り”は心の安全地帯-

休むというのは、ただ横になることではありません。

心が落ち着きを取り戻す時間と空間を持つことです。

家の中なら、
お気に入りの椅子に座って、
お気に入りのマグカップでお茶を飲む。

この「お気に入り」っていうのが、すごく大切!

「お気に入り」が、あなたを “心の帰る場所” に連れて行ってくれる鍵になります🔓🔑

たくさんの「お気に入り」があれば、それだけあなたの心の安全地帯が増えるということです。

もし外出できるなら、近くのカフェ、公園、図書館など、「ここに来るとホッとする」と思える場所をいくつか見つけておきましょう。

この椅子に座ると落ち着く

この香りを嗅ぐと安心する

こんな小さな感覚の積み重ねが、 “あなたの心が帰る場所” を作っていきます。


5分でできる“プチ休息”

「ゆっくり休む時間なんてない」と感じるときこそ、5分の“プチ休息”を生活の中に取り入れてみてください。

ほんの少しの時間でも、意識して“休むスイッチ”を入れることで、心と体は確実に回復していきます。

  • 椅子に座って、深く息を吐く(2:1呼吸法)
  • 温かい飲み物を飲むときに、香りをゆっくり味わう
  • 手のひらを重ねて軽く温める(セルフハンドケア)
  • カーテンを開けて空を見上げ、背伸びをする

「短い休みでは意味がない」と思うかもしれません。
でも、短くても心を取り戻せる休みを繰り返すことが、一番の予防策です。


今日から作れる“休む仕組み”3選

“休む”ことは、怠けることではありません。
むしろ、介護を続けるための技術です。

・予定に「休み」を先に入れる
・心が戻る場所をいくつか持つ
・5分の休息を習慣にする

この3つの仕組みを持つだけで、心と体の余裕が少しずつ戻ってきます。

ふとした瞬間にあなたの心を「戻す仕組み」を今日から少しずつ作っていきましょう。

ゆるめる-完璧主義を手放す勇気-

介護をしている人ほど、責任感が強く、まじめで優しい。
——だからこそ、「ちゃんとやらなきゃ」「失敗してはいけない」と思ってしまう。

でもそれは、あなたが悪いのではありません。

完璧主義なあなただからこそ、今も“誰か”を大切にし続けられているのです。

ただ、その完璧な優しさの歯車が一つ狂い始めてしまうと——
「もっとできたはず」「あの時ああしていれば」と、自分を責める思考のループに入ってしまう。

そんな“完璧主義の罠”からあなたが抜け出すには、まずは完璧主義を手放す勇気が必要なんです。

ここでは、「完璧主義をやめる」ではなく、「完璧主義を手放す勇気を持つこと」に焦点を当てた、最善の一手を紹介します。


最善の一手:『未完成』を練習をする

未完成のまま出すことや、失敗することが苦手なあなた——。

完璧主義の人にとって、実は“未完成”回復への入口なんです。

介護は、毎日が「終わらないこと」の連続です。
食事を片づけても、次の食事を数時間後には作らなければならない。
洗濯を終えても、すぐにまた山ができる。

そんな“終わらない日常”の中で、「完璧に終わらせる」ことを続けていれば、疲労がたまって、心に余裕がなくなるのは当然ですよね。

終わらない日常を「完璧に終わらせる」ことを——
いま、この瞬間から、諦めましょう!

完璧を諦めたって良いんです。
だって、完璧主義のあなたの「未完成」は、どうやったって「合格点」なんですから。
完璧主義」の私が言うんです。間違いありません。

さあ、今日から「途中で止めていい」を練習して「未完成」に自分を慣れさせてみませんか?


完璧主義を手放す勇気を持つための5ステップ

では、ここから「完璧主義を手放す勇気を持つための5ステップを紹介していきます。

ステップに進む前に】

この5ステップは「日数」ではなく「タイミング」で進めてOK

この5つのステップは、
1日ごとに進める“スケジュール”ではありません。
あなたの中で「ちょっとできそうかも」と思えた時にだけ、次のステップに進めばOK。

1週間かかってもいい。
1か月かかってもいい。
ステップ1で止まっていても、それで成功

完璧主義を手放す練習は、 “速さ”ではなく“優しさ”で進めるもの。
「今日できた分だけで十分」と、自分に優しく語り掛けられたら大成功です。


STEP
未完成でやめるものを「探す」

まずは、日常の中から「未完成」でやめても良いものを探してみましょう

たとえば、

  • ベッドメイキングでシーツの角をピシッとさせないまま終える
  • 洗濯物を全部たたまず、あと1枚だけ“後でたたむ”にする
  • お茶碗をすぐに洗わず、「今はここまで」でいったん座る

💡ここでのポイントは、自分のこだわりが強いことは選ばないことです!
 できるだけこだわりがない=未完成でも許せるものを探してみましょう。

こだわりが強いものであればあるほど、「未完成」に対して、強いストレスを感じてしまいます。

あなたの中の、「まあいっか」を探すのが、このステップ1です。

こうした“未完成のまま一度手を止める”行為は、相手に迷惑をかけずにできる、小さな“脱・完璧”の練習です。

最初は落ち着かないかもしれません。
でも、その“落ち着かなさ”を感じることこそが、完璧主義を手放すための、勇気ある第一歩です。

STEP
ほんの少しだけ「途中で止めてみる」

ステップ1で見つけた「まあいっか」の中から、1つだけ選んで「途中で止める」を実際に練習してみましょう。

だだし!!

  • 洗濯物を1枚だけ残してみる
  • 食器を1つだけ洗わずにおく
  • シーツの角を1カ所だけ整えない

と「まあいっか」を最小限に抑えてください

💡ここでは、「サボる」のではなく、「未完成でも大丈夫」 を体験することが目的です。

STEP
「未完成」の幅を少しずつ広げていくる

例えば洗濯物を1枚だけ残すことを「まあいっか」に選んだとしたら、次は2枚だけ残してみましょう。

「未完成の量」を少しずつ増やしていくと、心が“中途半端”に慣れ、余白を持てるようになります。

💡ここで注意:最初にも伝えましたが、「未完成の幅」は急には上げないでください

完璧主義のあなたは、最小限の「まあいっか」でも、意外と負担が掛かっています。
そこに慣れてきたからといって、ハイペースに幅を広げていくと、また「完璧主義を手放そうとしていた勇気」を、また強く握り始めてしまいます。

少なくとも、幅を広げた後は、数日は慣れるまで同じ「まあいっか」の量を続けるようにしてください。


少しずつ、少しずつ幅を広げていき最終的には

「今日は、『今日・明日で絶対に使う物』だけは畳んでおこう」

——そんな“柔らかい完了ライン”を自分で決められるところを目指します。

完璧主義の人は、「終わりの基準」を他人や常識に委ねがちです。
でも、この練習によって、「自分で終わりを決める力」もちゃんと育っていきます。

STEP
未完成を人と共有してみる

余裕が出てきたら、その“途中のまま”を誰かに見せてみましょう。

「まだ途中なんだけど、今日はここまでにした」
「洗濯途中でやめちゃったけど、それでもいいかな」

訪問スタッフや家族に、そんなふうに話してみてください。

完璧主義の人にとって、「人に見せる」 は怖いことかもしれません。
でも実際には、「人に見せる=安心が返ってくる」ことがほとんどです。

ただ、どうしても人に見せるのが不安だとしたら、訪問スタッフやケアマネジャーなどの介護に携わる専門職に、直接ではなく、ノートなどに書いて伝えてみると、少し不安は少なくなります。
そして、会話とは違う、見返せる「文字」という形で、自分の成長と評価を確認することができるので、書いて専門職に伝えるのが、私のオススメです。

この「途中を見せる体験」は、きっとあなたに「未完成でも大丈夫」という新しい実感を与えてくれるでしょう。


STEP
「未完成」を味方にする

未完成という言葉を、「中途半端」ではなく「余白」として扱ってみてください。

余白があるから、誰かが手を差しのべられる ——
完璧でないからこそ、他人の優しさが入ってくる ——

そして「未完成のまま終われた自分」を責めずに
「途中で止められた自分、よくやったな」と声をかけてあげてください。

ここまで来たら、もうあなたの「完璧主義を手放す勇気」は大きく成長しています🌱


完璧主義を手放すことは「自分を信じるということ」

完璧主義を手放すというのは、自分を甘やかすことではなく、自分を信じる練習です。

完璧ではない私でも許してくれる人がいる
完璧ではなくても意外と困ることはない

完璧ではない自分をそのまま信じられるようになる——

それが「完璧主義を手放す=自分を信じる」ということです。

この5ステップには、「正しい順番」も「期限」もありません。
どこから始めても、止まっても、戻っても大丈夫。

今日できた分だけでいい。
完璧じゃなくても、あなたはすでに、ちゃんと優しい。

“未完成のまま終われた自分”に〇をつけて、その一歩一歩を、どうか誇りに思ってください。


大切な人に対してイライラしてる自分が許せない——。

そう思ってこの記事にたどりついた。

深呼吸をして、少しずつ心をととのえ、
誰かに頼りながら、自分を休ませてきたあなた。

休むことですら一生懸命に頑張ってきた。

その積み重ねは、誰かを大切にしてきた証であり、
同時に、あなた自身を取り戻す道。

そして今、完璧を手放し、未完成を受け入れられたあなたは
—―きっと、もう大丈夫。

「もう自分を嫌いにならなくていい」
そう思えるようになった今だからこそ、あなた自身への“最後の優しさ”を、もう一度ここで見つけてきてください。

「もう自分を嫌いにならなくていい」——
——その言葉を、あなたの心にそっと置いてラストを迎えましょう。

ここまで読んでくれたあなたは、たくさんの優しさを、自分に向けてこれました。

深呼吸をして
少しずつ心をととのえ
誰かに頼りながら
自分を休ませてきた。

きっとあなたは、休むことですら一生懸命に頑張ってきたでしょう——

その積み重ねは、誰かを大切にしてきた証であり、同時に、あなた自身を取り戻す道です。

このブログで紹介した7つの心を軽くする方法のうち、どれかひとつでも「やってみようかな」と思えたなら——
もう、それだけで十分です。

“できた”とか“変われた”という結果よりも、
「自分の心に目を向けられた」こと自体が、
もうすでに、大きな一歩だから。

介護でイライラしてしまうのは、あなたのせいじゃありません。
それは、誰かを想う心が深い証拠です。

あなたは、充分な優しさを誰かに向け続けてきたはずです。
これからは、ほんの少しでもいい——
その優しさを自分にも向けてあげてください。

完璧じゃなくても大丈夫。
途中で止まっても大丈夫。
イライラしてしまう日があっても、大丈夫。

あなたが歩んできた日々の中に、
ちゃんと“優しさ”は生きています。

どうか、そのままのあなたで
これからも、少しずつ、心を軽くしていけますように——。

—— SoRaより


このブログは、看護師(臨床経験10年以上)、家族ケア専門士が書いています
集中治療室・救急外来・内科・外科・整形外科・訪問看護・特別養護老人ホーム・デイサービスなど、幅広い医療・介護現場を経験
認定調査員として年間60件以上の要介護認定調査を行い、介護制度と在宅介護の現場にも精通
国立大学非常勤講師(高齢者看護学実習指導教員)
心理学・カウンセリングを15年以上学び、現在はカウンセラーとしても活動

【資格・実績】
・ 看護師
・家族ケア専門士

・DMAT隊員
・グリーフケア専門士
・認定調査員(年60件訪問)
・ハンドケアセラピスト
・アロマテラピー検定1級
・ヒューマンギルドにてアドラー心理学・カウンセラー養成講座修了
・ユマニチュード基礎講座修了


「医学的知識 × 心理学的支援 × リラクゼーション」を組み合わせて
介護をするご家族の身体と心を支えるための活動をしています。

最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

SoRaでは
介護に困っているご家族へのサポート
・大切な人を亡くされた方の心のケア
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を行っています。

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