介護でイライラしてしまう…優しくできない自分を嫌いになる5つの理由と心を軽くする方法
「なんでこんなにイライラしてしまうんだろう…」
「本当は優しく接したいのに、できない自分が嫌い…」
「こんな自分、最低だ…」
介護をしていると、こんなふうに自分を責めてしまうことはありませんか?
「もっと優しくしなきゃ」と思うほど、うまくいかない。
「イライラしないようにしよう」と決めても、また同じことで怒ってしまう。
そして、心の中でそっとつぶやく。
私って…性格悪いのかな…?
でも、その考えは今日で終わりにしてほしいんです。
なぜなら、あなたの「優しくできない」には必ず理由があるからです。
そしてその理由は、あなたが弱いからでも、性格が悪いからでもありません。
むしろ逆。
「人一倍、その人を大切に思っている」
「人一倍、その人と一生懸命向き合ってきた」
だからこそ、心が限界を迎えてしまっただけなんです。
この記事では
・あなたが「優しくできなくなる本当の理由」
・自己嫌悪から抜け出す考え方
・イライラを減らして心をラクにする方法
・上手くいかない日の“自分の守り方”
・「優しさ」をもう一度取り戻すための小さな一歩
について、感情に寄り添いながら、わかりやすく丁寧にお話しします。
あなたは自分を嫌いになる必要なんてない
- いつもイライラしてしまう自分が嫌だ
- もっと優しくしたいのに、それができない
- 同じことで何度も怒って、自己嫌悪になる
- 頼れる人がいなくて、全部自分で抱えている
- 限界まで我慢して、心がすり減っている
- 「私さえ我慢すれば」と自分を後回しにしてきた
- 「これって私だけ…?」と孤独を感じている
——大丈夫。
あなたは独りではありません。
介護をしている多くの人が、同じように悩み、苦しみ、涙を流しています。
そして、そのほとんどが「どうすればこの気持ちから抜け出せるのか」を知らないまま、自分を責め続けています。
でも、あなたはもう違います。
「なぜ優しくできないのか」
「どうすれば心がラクになるのか」
その答えを、今ここで知ることができるから。
そして、この記事を読み終える頃には、あなたはきっと「自分を嫌いになる必要なんてなかった」と感じられるはずです。
一緒に進んでいきましょう。
「イライラしてしまう自分が嫌い」それは“心が限界”というサイン
介護をしていると、ほんの些細なことでもイライラしてしまうことがあります。
さっきも言ったよね!?
どうしてわかってくれないの!?
もう勘弁してっ…!
こんなふうに思ってしまった自分にショックを受け、自己嫌悪に陥る…。
でも、私は知っています。
あなたが、本当は怒りたいわけではなかったということを。
むしろ ——
「大切にしたい」「優しくしたい」
そう思っているからこそ、上手くできなかった自分を責めてしまうのです。
イライラするのは「優しさが足りないから」ではない
多くの人が誤解していることがあります。
「イライラする私は優しくない」
「優しくできない私はダメな人」
でも、それは真実ではありません。
イライラは“性格の問題”ではなく、“心の限界を知らせるサイン”です。
- 睡眠不足が続いている
- 休む時間がない
- 1人で抱えている
- 誰にも気持ちを出せない
- 常に気を張っている
こんな状態が続けば、誰だってイライラは募ります。
この状態に終わりが見えなければ、心が擦り切れて当然です。
本当に優しくない人は「自分を責めない」
ここで、1つ大切なことを伝えます。
もしあなたに本当に優しさがなかったなら——
“イライラして自己嫌悪になること”もないはずです。
「自分は優しくできていない…」と思い悩むこと自体「優しさを大切にしたい」心の表れなんです。
つまりあなたは、最初からずっと“優しい人”のままなんです。
苦しいのは「あなたがサボってきたから」じゃない
介護は、心も体も削られます。
仕事、家事、家族のこと、自分のこと…
すべてをやろうとして、限界を超えている人がほとんどです。
「もっと優しくしなきゃ」と思えるあなたは、実はもう十分すぎるほど頑張ってきたはずです。
だからこそ、「イライラしてしまったダメな自分」ではなく、「イライラしてしまうほど、必死に向き合ってきた」と、あなたには思ってほしいんです。
まずは「イライラしてしまう自分」を否定しないことから始める
優しくできない自分を嫌いになる前に、「私、限界だったんだな…」と気づけたほうが何倍も健全です。
そしてこの記事では、この先の章で
✅ なぜイライラしてしまうのか
✅ 優しくなれない“本当の理由”
✅ 心が軽くなる考え方と具体的な方法
を、ステップを追って解説していきます。
そんな対応になってしまうくらい、私は限界だったんだ。
この視点を持てた瞬間から、少しずつ、自分を許せるようになっていきます。
そして、今の自分を知ることが「また優しくできる自分」に戻るための最初の一歩です。
「優しくしたいのに優しくできない」その裏にある“5つの本当の理由”
「優しくしたい気持ちはあるのに、優しくできない…」
「頭ではわかっているのに、気持ちがついてこない…」
このような“心の矛盾”を、介護をする多くの人が抱えています。
そして、この“心の矛盾”があなたの心と身体を限界に追い込んでいる原因の1つです。
でも、この矛盾にはちゃんと理由があります。
ここでは、なぜ「優しくしたいのに優しくできない」のか?
その裏にある“本当の理由”を、わかりやすく紐解いていきます。
優しくできない理由①「相手を大切に思っているからこそ期待してしまう」
「何度言ってもわかってくれない」
「前はできていたのに、どうして…?」
そんなふうに感じてしまうのは
“分かってくれると信じている”
“「できていた」あの頃のように戻ってほしい”
という“期待”があるから。
そしてその期待は、「相手を大切に思っている証拠」です。
期待をしていれば、上手くいかないとショックを受ける。
ショックが大きいから、イライラに変わってしまう。
イライラの根っこには、実は“深い愛情”があるんです。
つまり、あなたが深い愛情を持って接しているからこそ。
「好きの反対は無関心」という言葉があります。
あなたは優しく愛情深いからこそ、大きなショックを受けてイライラしてしまっているのです。
優しくできない 理由②「いい介護をしなきゃ!というプレッシャー」
介護をしている人の多くは、こんな思いを抱えています。
- 「ちゃんとやらなきゃ」
- 「失敗しちゃいけない」
- 「迷惑をかけたくない」
- 「私が頑張らなきゃ」
- 「周りから“良い家族”と思われたい」
この“完璧にやらなきゃ”という気持ちが、心を追い詰めていきます。
そしてプレッシャーが強いほど、心の余裕がなくなり、その結果「優しくできない自分」へと繋がってしまうのです。
近い存在だから、大切な人だから、「完ぺきにこなさなければ!」とあなたは思っているのかもしれません。
しかし、介護に完璧はありません。
そして、完璧な介護でなくても、相手は充分満足して、感謝して、喜んでくれます。
これは、看護師として多くの患者さんのケアをしてきたからこそ、自信を持って言えることです。
大切な人に「完璧な介護」をしてあげたいあなたの優しさは大切にしていてください。
でも、完璧でなくても大丈夫ということも覚えていてください。
優しくできない理由③「自分ばかりが頑張っているという孤独」
「なんで私だけこんなに…?」
「他の家族は手伝ってくれない…」
「誰にもわかってもらえない…」
気がつけば、自分一人が不安や負担を抱え込み、自分一人が頑張って介護をしていませんか?
同じ家の中の家族も、まるで他人事のよう…。
そんな“孤独感”が、あなたの心を最もすり減らす要因なんです。
誰か一人でも、あなたの気持ちに寄り添ってくれていれば、あなたはもっと優しくできたかもしれません。
“孤独”は、優しさを奪います。
逆に言えば、孤独を減らせれば、優しさは自然と戻ってきます。
あなたが今優しくできないのは、もしかしたら強い孤独を感じているからかもしれません。
自分の心に一度問いかけてみましょう。
優しくできない 理由④「 “自分の気持ち”より“相手”を優先してきたから」
あなたは、今までずっと自分以外の人をを優先してきませんでしたか?
- 自分の時間を後回しにする
- 感情を飲み込む
- 本音を我慢する
- 「大丈夫」と笑う
- 泣きたいのに泣かない
自分を犠牲にして、誰かを優先し続ける。
それは“優しさ”であり“責任感”でもあります。
でも同時に、自分の気持ちに蓋をして心のエネルギーをどんどん減らしていく行為でもある。
エネルギーがなくなれば、優しくできなくて当然です。
むしろ、優しくできないどころか、全てのことにやる気も出なくなっているのではないでしょうか?
それは“怠け”ではなく、頑張り過ぎた結果の“燃え尽き状態”なのです。
優しくできない 理由⑤「“優しくしなきゃ”は“今の自分”を否定する言葉」
「優しくしなきゃ」
「怒っちゃいけない」
「我慢しなきゃ」
そう自分に言い聞かせれば言い聞かせるほど、心はさらに追い詰められます。
なぜなら、優しくしなきゃという言葉は、今のあなたではダメと自分を否定する言葉だからです。
(優しくできない私はダメ。だから)優しくしなきゃ
と無意識であなた自身は、あなたの言葉を受け止めています。
そして自分を責めると、相手のことも責めやすくなってしまいます。
同じように介護でつらく悩みを抱えている人に、あなたはどんな言葉を掛けてあげますか?
きっと、優しい言葉を掛けてあげるのではないでしょうか?
誰かに話しかける時のように、誰かを励ます時のように、自分にも言葉を掛けてあげてください。
優しくできないのは“優しくないから”ではない
ここまでの5つの理由を振り返ってみると、
ある“共通点”が見えてきます。
それは——
「優しくしたい」と願う気持ちがあるからこそ苦しくなっていた
ということ。
つまり 、優しくできないのではなく、優しくできる力を奪われるほど心が疲れていただけなんです。
この後の章では、その疲れの正体をさらに深く理解し、「どうすれば優しさを取り戻せるのか」を一緒に見ていきます。
イライラの正体は“怒り”ではなく「悲しみ・不安・喪失感」
「何度言ってもわかってくれない」
「前はできていたのに、どうして…」
「もう限界…!」
こうしたイライラや怒りという感情の奥には、もっと深い「本当の感情」が隠れています。
それが、
- 悲しさ
- つらさ
- 不安
- 孤独
- 喪失感(失われていく現実への苦しさ)
実はこれらの“感情”こそが、イライラの源なんです。
「二次感情」である怒りは心を守るためのバリア
心理学では、怒りは“二次感情”と呼ばれています。
感情は一次感情と二次感情に分けられます。
寂しい、悔しい、不安などの感情を一次感情といい
怒りを二次感情といいます。
何が「二次」なのかというと、怒りそのものは実は本心ではなく、「本当の気持ち(一次感情)」を守るために出てくる“バリア”。
つまり、怒りは何か別の感情から二次的に発生する感情であるということです。
たとえば…
「何度言っても同じことを繰り返す母」にイライラしたとき、こんなふうに考えたとします。
- もう、あの頃ののお母さんには戻らないのかな…(悲しさ)
- この先どうなるんだろう…(不安)
- 私ばっかりでしんどい…(孤独)
こんな悲しさや不安、孤独といったつらさから自分を守るために“怒り”という感情に変えている。
怒りは「悪」ではなく、
**自分を守るために生まれた“防衛反応”**なんです。
【介護者のイライラ体験談①】何度も同じことを繰り返す母
何度も同じことを繰り返す母にイライラしてしまった。
小さなでイライラする自分が嫌いになった話。
「母が認知症で、何度言っても同じことを繰り返します。買い物に連れて行っても、家に醤油があるのに醤油を2本も買おうとするんです。
家にあるから要らない!と何度言っても分かってくれません。
独り暮らしなのに醤油を何本も使い切れるわけないじゃないですか?
そんなことも分からない母にすごくイライラして、気づいたら声を荒げてしまいました…。そんな自分が嫌で家に帰ってから涙が出ました。」
【40代女性】
【介護者のイライラ体験談②】「当たり前」ができなくなった母
以前は自分で料理をしていた母が一人で料理も出来なくなった。
当たり前だったことができなくなったことに苛立ち怒鳴ったことに罪悪感を感じた話。
「以前は自分で料理をしていた母が、今は食事も一人でできなくなりました。
『なんでこんなこともできないの?』と思ってしまいます。
認知症だから仕方がないと思いつつも、それくらいできるでしょ!とも思ってしまう自分に、後から罪悪感で押しつぶされそうになりました。」
【40代女性】
この2つのエピソードにも、
- 「前はできていたのに…」という悲しみ
- 「できるはず」「分かるはず」という期待と失望
- 「あの頃の母はいない…」という寂しさ
- 「この先どうなるの?」という不安
- 「優しくできない自分が嫌」いう自分への不満
さまざまな一次感情が隠れていることが分かります。
抑え込むほど怒りは強くなる
「怒っちゃいけない」
「我慢しなきゃ」
「感情を出したら迷惑になる」
そうやって一次感情を押し込めると、心の中に“悲しみ・不安・孤独”が溜まり続けます。
溜まった感情は行き場を失い、最終的に“怒り”として一気に爆発してしまいます。
今のあなたの状態は、我慢に我慢を重ねた末ではないですか?
今までどれだけ我慢してきたのか、どれだけ頑張ってきたのか、もう一度振り返ってみてください。
そして、そこまで頑張ってきた自分を、まずはぜひ「よく頑張ったね」と褒めてあげてください。
怒りを減らすには「怒りを抑える」のではなく「一次感情に目を向ける」
怒りそのものを「抑えよう」とするのではなく
▢怒りを感じる前に私はどんな気持ちだった?
▢私は今、何に悲しって思ってる?
▢何が怖かった?
▢何に不安って思った?
と、自分がどんな一次感情を抱いていたのか?怒りの奥にある感情がどんなものなのか?自分の心に聞いてみる。
そこから気付いた一次感情が分かると、不思議と怒りは弱まっていきます。
「怒り」は悪ではなく「心のメッセージ」
感情を表す言葉に「喜怒哀楽」というものがあります。
なんとなく、喜と楽は良い感情、怒哀は悪い感情というイメージを持っているのではないでしょうか?
ですが、感情自体には、実は良いも悪いもありません。
感情はただ湧いてくるもの。
感情から発生した行動に善悪はあっても、感情には善悪はないんです。
では感情とは何か?
それは、心からのメッセージです。
怒りは、あなたの心がこう叫んでいるサインだと思ってください。
「本当は悲しい」
「不安で苦しい」
「誰かにわかってほしい」
怒りの中にあるこの声に気づけたとき、あなたの“優しさ”は再び動き始めます。
次の章では、「なぜ感情を押し殺してしまうのか?」
その背景をさらに深く掘り下げていきます。
あなたが「自分を責めずに感情と向き合えるようになる」ための大切な一歩になります。
「感情を抑え込む」ことで心が苦しくなる2つの理由
ここまでで、イライラや怒りの裏には、「悲しみ」「不安」「孤独」などの一次感情があると分かりました。
では——
なぜ私たちは、その一次感情を素直に出せずに抑え込んでしまうのでしょうか?
実は、そこには“介護をする人特有の背景”があります。
感情を抑え込む理由①「迷惑をかけたくない」「弱音を吐いてはいけない」と思ってしまう
介護をしている人の多くは、とても責任感が強く、優しい人です。
だからこそ、
- 「私が頑張らなきゃ」
- 「弱音を吐いたら迷惑になる」
- 「大変って言ったら、相手を否定するみたいで言いにくい」
- 「みんな我慢しているんだから、自分だけ弱音は言えない」
そうやって自分の気持ちを飲み込み、感情を自分の中に閉じ込めてしまいます。
ときに、あなたの長所である「責任感」は、このようにあなたの心を苦しくしてしまう原因になることがあります。
感情を抑え込む理由②「感情を出すことは負け・甘え」と思ってしまう
特に真面目な人ほど
「イライラするなんて未熟」
「泣きたいなんて弱い」
「怒るなんて人としてダメ」
と考えます。
あなたも、ネガティブな感情を持つこと自体を悪いことだと決めつけていませんか?
「感情が湧いてこない」は心からのSOS
真面目な日本人の中には、「感情は出さずに我慢するもの」、「感情を表に出すことは甘えだ」と考える文化が根強くあります。
私たちは文化的にも感情を出す=負けと捉えがちなんです。
でも、本当は逆です。
感情を感じられることは、“心が生きている証”です。
感情が湧いてこないとき。
それは、心からのSOSのサインなので、まずは休むことを優先してください!
「空気を読むこと」に慣れ過ぎている
また、人間は言葉で理解し合う生き物でもあります。
空気を読む文化を持つ日本人は、察する能力が高く、察してもらい慣れています。そのため、自分の感情を表に出すことに慣れていません。
つらいときは「つらい」と言葉にして、誰かに理解してもらっても良いんですよ。
感情を抑え込むと“心にフタ”がされる
一時的に感情を押し込めると、「やり過ごせた」「気持ちが落ち着いた」と感じるかもしれません。
しかし実は、押し込められた感情が消えることはありません。
見えないところでどんどん溜まり、心の中で圧力が高まり続けます。
そして、ある日突然…
- 急に涙が止まらなくなる
- 些細なことで爆発する
- 何も感じなくなる(燃え尽き)
- 自分を傷つける思考になる
こんな“心が限界を超えたサイン”が出てきます。
感情を抑えることは「自分自身を否定すること」になる
たとえば、「悲しい」と感じている自分に対して
そんなことで泣くな!
しっかりして!
もっと我慢しなよ!
こう言い聞かせてしまうことは、“自分の感情そのものを否定すること”になります。
否定された感情は、安心できる場所を失い、さらに苦しくなる。
——そして最終的に、こう思います。
こんな気持ちになる自分がダメなんだ…
感情を抑えるほど、自己嫌悪が強くなっていく仕組みです。
感情は「出す」ことで落ち着きを取り戻す
ここで一つ、大事な事実をお伝えします。
感情は“抑えるもの”ではなく“流すもの”。
- 悲しいときに泣いたら、少し落ち着いた
- 不安を誰かに話したら、少し軽くなった
- イライラを言葉にしたら、冷静になれた
こんな経験、ありませんか?
感情は“出ていく”ことで初めて落ち着きを取り戻すんです。
体験談|自分の気持ちを知ってくれている人がいることが安定に繋がる
介護の情報を共有するノート。そこに感情のままに言葉を書き連ねる家族。
書くことで気持ちの整理ができ、イライラしすぎず日常を過ごせている話
介護サービスが入っていると、家族と関わっている専門職との情報共有にノートを使用することが多いです。
そのノートの中に日々の介護のイライラや、認知症症状による失敗(用意しておいたご飯を食べ忘れた、お米を1日のうちに何度も炊いてしまった、など)を綴るご家族も少なくありません。
しかし、そんな「ノートの中にイライラを書き綴っているご家族」でも、会ってお話をしてみると意外と精神的に安定していると感じることがあります。
介護をしながら仕事をされている方も多く、直接お話を聞ける機会が少ない中、ノートに自分のイライラした気持ちを素直に書いて“誰か”に自分の気持ちを知ってもらうことができる。
自分の気持ちを素直に出すことができる場所がある。
そして、それを受け止めてくれる誰かがいる。
それだけでも、介護をされている方にとっては「嫌な気持ちを書いても良いんだ」と思うことができるのではないかと私は思っています。
【30代看護師】
感情を出せる人は「弱い人」ではなく「心を守れる人」
我慢し続けられる人って、とても「強い人」だと思いますよね?
でも、本当に強さとは
- 「今、自分はしんどい」と気づける人
- 「助けて」と言える人
- 「自分の心を守ろう」とできる人
これは弱さではなく“自分を大切にできる優しさ”と“弱い自分を認めることができる強さ”です。
この優しさと強さの両方を持ち合すことができる人が、自分を守るために「助けて」と声を上げられる人です。
まずは「自分の本当の気持ち」に気づくことから始めよう
感情を抑え込まないための「はじめの一歩」は、感情を表に出すことではありません。
感情を抑え込まないための1つ目のステップは“自分の感情に気づくこと”です。
- 「あ、今ちょっと悲しかったんだな」
- 「本当は不安だったんだな」
- 「寂しかったのかもしれない」
自分の気持ちに気づけるようになるだけで、心の負担は確実に減っていきます。
次の章では、「なぜ“自分の気持ち”より“相手”を優先してしまうのか?」について、掘り下げていきます。
この“根本のクセ”を理解することで、あなたの心はもっとラクになります。
自分より相手を優先しすぎてしまうときに思い出してほしいこと
私が見てきた介護をしている人中には、「自分のことは後回し」、「相手が最優先」という生き方をしている人がたくさんいました。
それは、あたなの大きな優しさであり、あなたの強い責任感であり、あなたの深い愛情でもあります。
でも、その優しさが“ある瞬間”から自分自身を苦しめる原因に変わってしまうことがあるんです。
ここでは、なぜ「自分より相手」を優先してしまうのか?
そして、その優しさを“自分を守れる形”に変えていくにはどうすればいいのか?
この2つの疑問について、一緒に考えていきます。
「私がやらなきゃ」という使命感が、あなたの心を追い詰めていませんか?
介護をしている人の心の中には、こんな思いが根付いています。
- 「迷惑をかけたくない」
- 「家族だから、私がやらなきゃ」
- 「他の人には任せられない」
- 「私が我慢すれば丸く収まる」
“誰かがやらなきゃ”ではなく、 “私がやらなきゃ”と感じてしまうこの“使命感”は、あなたの優しさそのものです。
しかし、使命感が強くなりすぎると、「自分を犠牲にすること=正解」と考えるようになってしまいます。
あなたの優しさの象徴である“使命感”は、ときにあなたを傷つける諸刃の剣になるというこをと覚えておいてください。
“優しさが当たり前”になったとき、心は静かに疲れていく
あなたは毎日介護を頑張っている。
最初は「頑張ってくれてる」と感謝されても、その状態が続くと、周りは「それが普通」だと思い始めます。
優しさが日常に溶け込み、当たり前になった瞬間、感謝されなくなってしまいます。
- 「いつもやってくれるから大丈夫でしょ」
- 「あなたが一番分かってるし」
- 「頼りになるから安心してるよ」
感謝されるどころか、“頼られるのが前提”になる。
その結果…
助けてほしいときほど、誰も助けてくれない。
という状況に陥ってしまうんです。
「大丈夫」と言い続けるうちに、自分の本当の気持ちが見えなくなる
本当はしんどいのに、つい言ってしまう言葉。
「大丈夫」
でも、心の中では
「全然大丈夫じゃないよ…」
「誰か助けて…」
と叫んでいる。
そんなことって、実はよくありますよね?
“大丈夫なフリ”を続けることで、誰にも本音を理解されなくなる。
それどころか、“大丈夫なフリ”を続け過ぎて、自分ですら自分の気持ちが分からなくなってしまう。
大丈夫ではないときの「大丈夫」には、こういった弊害があるんです。
その「大丈夫」、あなたの本当の気持ちですか?
“自分を後回し”にすると、優しさは少しずつ枯れていく
あなたは誰かを大切にするために、自分を後回しにしていませんか?
- 自分の予定より相手が優先
- 自分の食べたいものよりも誰かの食べたいものを作る
など、日常の小さいことでも、誰かのために自分が我慢する。
その優しさは、自分の我慢で成り立っていないか、今一度、自分の行動を思い返してみてください。
自分を後回しにして、誰かを優先し続けると、あなたの心はエネルギーを消耗し続けます。
エネルギーがなくなれば…
- イライラしやすくなる
- 優しくできなくなる
- 相手の言葉や行動に敏感になる
- 小さなことでも傷つきやすくなる
- 自己嫌悪に陥る
つまり、優しさで誰かを守るための行動が、いつの間にか“優しさを奪う原因”になってしまうのです。
本当の優しさは「自分を大切にすること」も含まれる
ここで、大切な真実をお伝えします。
“自分を犠牲にする”ことだけが優しさではありません。
本当の優しさは、次のような形も持っています。
- 自分を大切にしながら
- 無理のないペースで
- 長く続けていける方法で
- お互いを尊重しながら支え合えること
「自分を大切にする」ことと「相手を大切にする」ことは両立できます。
相手に優しくしている分、同じくらいの優しさを自分にも向けて、お互いを大切にできると良いですね。
自分を犠牲にしない優しさは持続する
一時的に自分を削って頑張ることはできます。
でも、それは長くは続きません。
- あなたが笑えること
- あなたに余裕があること
- あなたの心が安定していること。
それが結果的に、相手にとっても一番安心できる環境を作ることにもなります。
相手が安心できる→自分に余裕が持てる
→余裕があるから優しくなれる→優しいから相手が安心できる
あなたが笑って、あなたが余裕があり、あなたの心が安定していると、このように良い循環が生まれます。
無理のない優しさこそ、長く続くものです。
「優しくできない自分」を責めるより、理解してあげよう
「どうして私はこんなにイライラするの?」
「優しくできない私はダメなの?」
このように、 “優しくできない自分”を責めたくなる瞬間は、誰にでもあります。
ですが——
あなたは自分を責めるべきではありません。
あなたは今まで、“優しさゆえに”自分を後回しにしてきました。
だからこそ、優しさを取り戻すために「自分を大切にする力」を育てる必要があるのです🌱
次の章では、ここまで何度か触れてきた 「頼ること=悪ではない」という価値観を、
しっかりと言葉で“ひっくり返し”ます。
そしてそれが、あなたの心を根本からラクにしてくれる“ターニングポイント”になります。
「頼ることは弱さじゃない」-それは“あなたと家族を守る優しい選択”-
介護をしている人の多くが、心のどこかでこう思っています。
「人に頼るなんて、申し訳ない」
「迷惑をかけたくない」
「自分がやるべき」
「助けを求めるなんて、弱い人がすること」
でもそれは、あなたが「責任感」と「優しさ」を持っているからこそ生まれる考え方。
そして、その優しさは本当に尊いものです。
しかし、ここで一つ大切なことをお伝えしたいのです。
頼ることは”負担を渡す”ことではなく“守り続ける力を増やす”こと。
独りで抱えるより、安心して続けられる形を選ぶほうがもっと優しくなれる。
「頼らないこと」が“正解”になってきたあなたへ
私たちは小さい頃から
- 「人に迷惑をかけちゃダメ」
- 「自分のことは自分でしなさい」
- 「我慢しなさい」
こんなふうに言われて育ってきたのではないでしょうか?
この言葉たちは「頼る=悪いこと」という価値観を心の奥に刻み込みます。
そして、その結果「人に頼るなんて恥ずかしいこと」と考えるようになってしまった。
小さい頃から繰り返し言い聞かせられてきたこと。
だから大人になっても「助けて」と言えないのは当たり前なんです。
介護は「ひとりで背負うこと」を前提にしていない
介護は本来、チームで支えることを前提に考えられています。
在宅介護の中枢をなす支援のかたちである「地域包括ケアシステム」というのが、まさにそれですね。
👉地域包括ケアシステムについてはこちら|厚生労働省
このような、システムや制度があるということは、 “支え合うことを前提”に作られているということ。
- 家族だけで抱えることは想定されていない
- 介護保険やサービスは「助けを求めるため」にある
- ケアマネジャー、看護師、ヘルパー…
「支えるプロ」が存在するのは、家族と一緒に支え合うためです。
「全部自分でやらなきゃ」と思い込んでしまうことは、本来の国が考えている介護の仕組みとは真逆なんです。
これは真面目な人が陥りがちな在宅介護の罠の1つです。
頼ることは“サボること”ではなく、“自分と家族を守ること”
「頼ったら負け」
「自分が頑張ればいい」
そう思ってしまう気持ちはよくわかります。
でも、あなたが無理をし続けると、どうなるでしょう?
- 心が限界を迎えてしまう
- 体を壊してしまう
- 家庭や家族関係も壊れてしまう
それは、あなたにとっても、家族にとっても、望まない未来でしょう。
頼ることは、家族全員の健康と安全を維持する力
だからこそ「頼ることは、未来のあなたと家族を守るための愛ある選択」と考えることが大切なんです。
頼ることは“弱さ”ではなく“本当の強さ”
-弱さを見せる勇気がある人こそ強い-
人に頼るには、「自分の弱さを認める勇気」と「相手を信じる強さ」が必要です。
- 「助けてほしい」と自ら言えること
- 「何ができて」、何が「できないか」が自分で分かっている
- 「任せた結果を相手に委ねる」と信じていること
- 「ありがとう」と頼った相手の想いに感謝ができること
これこそが、本当の“強さ”であり“思いやり”です。
あなたが誰か頼る時に不安になる「甘え」や「丸投げ」は、これとは違い
- 助けてほしいとは言わないで察してもらう
- 任せたのに結果を相手に委ねられない
- 依頼を断ることを許さない
- 感謝がない(感謝をしても相手の行動にしか目を向けない)
これらの多くの項目を満たしていることを、人は「甘え」や「丸投げ」と感じます。
頼ってくれて「ありがとう」と言われることもある
意外かもしれませんが、「頼られた側が救われる」ことも実際は多いです。
あなたも誰かに頼られたときに
- 「信頼してくれて嬉しい」
- 「頼ってくれてありがとう」
- 「自分も役に立ててよかった」
このように感じた経験はないでしょうか?
頼ることは“相手の存在価値”を認める行為でもあるんです。
そして、あなたの“頼る勇気”が、相手にも優しさを思い出させるきっかけになります。
あなたが幸せでないと“あなたの大切な誰か”の幸せも続かない
介護をしていると忘れがちですが、一番大切なのはあなたが心身ともに健康でいることです。
なぜなら、ここまで読んでくれているあなたは、家族の中で誰よりも頼られている存在のはずです。
そんなあなたが倒れたら介護は続けられません。
それどころか、今の「家族の生活」が成り立たなくなります。
当然のことですが、あなたは「介護をするためだけ」にいる存在ではありません。
しかし、家族を第一に考え、家族のために自分を犠牲にしてまで行動する「優しいあなた」が倒れてしまう…。
つまりは、あなたが不幸せになることは、それだけで家族・友人・知人…多くの人が悲しみを感じることでもあるのです。
なぜなら、人って大切な誰かが笑顔でいることで安心できる生き物なんです。
そして、あなたは、大切な誰かにとっての“大切な人”でもあるから——。
あなたの幸せは、巡りめぐって、まわりの人の“心の支え”にもなるんです。
自分を守ることは、自分と自分以外の多くの人の幸せを守ることでもある。
ひとりで全部抱えること”は、実は家族にとってもリスクになる。
だからこそ、頼るとは『家族の未来を守る責任ある選択』なんです。
次の章では、
「そうは言っても、頼るのって難しい…」という“心の壁”を一緒に見つめながら、「どうすれば、罪悪感なく頼れるようになるのか?」“具体的なステップ”として落とし込んでいきます。
ここを乗り越えれば、あなたの心は一気にラクになります。
「頼ったほうがいい」と分かっていても頼れない“5つの心の壁”
前章で「頼ることは弱さではなく、あなたと家族を守る優しい選択」とお話ししました。
頭では「確かにその通り!」と思えても、実際に頼るとなると心が止まってしまうことってありますよね?
「頼ったほうがいい」と分かっているのに「頼れない自分」がいる。
その“心のギャップ”こそが、あなたを苦しめてきた大きな原因のひとつです。
ここでは
✅ なぜ「頼れない」と感じてしまうのか
✅ その“心の壁”をどう優しく越えていくか
✅ 罪悪感を減らしながら頼るための“具体的な方法”
この3つを分かりやすくお話しします。
“頼れない”と感じる心の壁①「頼る=迷惑をかける」と思ってしまう
「忙しいのに悪いな…」
「負担を増やしたくない…」
でも、ここで少し視点を変えてみてください。
あなたは、“頼られること”が迷惑だと思いますか?
誰かに「あなたを信頼しているから、お願いしたい」と言われたとき…
- 「頼ってくれて嬉しい」
- 「自分も役に立ててよかった」
- 「信頼されているって感じる」
こんなふうに思うこともありますよね?
「頼る」ことは、迷惑ではなく「信頼を示す行為」。
“頼れない”と感じる心の壁② 頼んでも「どうせ分かってもらえない」と諦めてしまう
過去に「頼んだのに裏切られた」「話しても理解されなかった」。
そんな経験があると、頼るのが怖くなります。
でも、それは「頼ることが悪い」のではなく、「頼る“相手”や“伝え方”が合っていなかった」だけかもしれません。
次の章では、頼る時の伝え方については、次の章で具体的に解説していきます。
“頼れない”と感じる心の壁③ 「私がやらなきゃ」という責任感が離れない
「他の人じゃ無理」
「私が一番わかってる」
「人に任せたらもっと大変になるかも」
たしかに、あなたが一番詳しいし、一番頑張ってきました。
でも、それは“全部を自分一人で背負うべき”という理由にはなりません。
その責任感の強さは、本当にとても素敵です。
でも“抱え込みすぎ”は、あなたも家族も守れなくなってしまいます。
“頼れない”と感じる心の壁④ 頼ることへの罪悪感が強すぎる
「自分が楽をするために頼むなんて…」
「手を抜くみたいでイヤ…」
真面目なあなたは、そう考えてしまうでしょう
でも、少し考えてみてほしいのです。
もし、あなたが誰かに・何かに頼って、心も身体も“少し楽”になったとします。
その結果、家族に優しくできる時間や気持ちが増えたら、あなたと家族に、どんな変化が起こりますか?
あなたの頭の中に、少し良いイメージが湧いたでしょうか?
私は、頼ることは「手抜き」ではなく幸せな時間が増える選択肢なんだと思っています。
誰かに頼る時の考え方|「逃げること」ではなく「続けるための戦略」と考える
介護はマラソンのようなものです。
42.195kmを全力疾走し続けたら倒れてしまいます。
介護は、ある日突然、なんの準備もなく始まります。
そして、いつ終わりが来るのかゴールも見えません。
そう考えると、練習もできず、永遠と走らされているようなものなので、マラソンよりも過酷ですね。
マラソンを走りきるには、途中で水を飲み、最後まで走り切れるペースを維持して、誰かに支えてもらいながら進んでいきます。
これは介護でも同じです。
頼ることは「介護を投げ出すこと」ではなく、「介護を続けていくための戦略」の1つと考えましょう。
次の章では、「優しくできない日があっても大丈夫」と心から思える“許しと希望”**をお届けします。
この章を読み終える頃には、「頼ることも、弱さも、感情も、全部“人間らしさ”なんだ」と感じられるはずです。
「優しくできない日があっても良い」- 優しさは必ずあなたの中に戻ってくる-
「またイライラしてしまった…」
「優しくできなかった…」
「どうして私はこうなんだろう…」
繰り返しになりますが、大事なことなのであらためて伝えます
こんなふうに感じる日があっても、それは“あなたに優しさがない”からではありません。
優しくできない日があるのは、それだけあなたが一生懸命、限界まで頑張ってきた証です。
“優しくない”のではなく、“心が疲れすぎて余力がなかった”だけだということを、もう一度自分に言い聞かせてあげてください。
優しさは“性格”ではない - “心の余裕”で変わるも-
「私は優しい人間じゃないのかも…」
そう思ってしまうことがあるかもしれません。
でも、優しさは“生まれつきの性格”ではなく、“心に余裕があるときに自然に出てくる力”です。
- しっかり眠れた日
- 誰かと少し話せた日
- 自分の時間が持てた日
こんな日は、いつもより優しくできたという経験がありませんか?
人は“優しさが出せるほどの余裕がなければ優しくできない”というのは、あなたも経験上感じていると思います。
あなたが“その瞬間”に優しくできなかったのは、単に優しくできるほどの余裕がなかっただけです。
どうか、余裕がなくなるまで頑張った自分を責めないであげてください。
「優しくなりたい」と思えるあなたは、すでに優しい
もし、本当にそこに優しさがなかったら、「優しくしたかった」「また優しくなりたい」なんて思わないでしょう。
優しくない人は、もし優しくできなかったとしても、そこで感情は動きません。
優しくできなかった“過去”に、少しでも感情が動いていることが、そこに「優しさがある証」なんです。
——大丈夫。
あなたは、今もずっと変わらず「優しいあなた」です。
優しさは“消える”ものではなく“眠る”もの
大切なのは「ずっと優しくいること」ではありません。
一度優しさを失ったように見えても、また戻れることこそが本当の強さです。
- イライラしてしまっても
- うまくできない日があっても
- 感情が揺れてしまっても
それでも「また優しくなりたい」と思えるなら、あなたの優しさは、ちゃんとあなたの中に戻ってきます。
優しさは決してなくなりません。
今は、あなたの中で静かに息をひそめているだけ。
休めばまた顔を出してくれる“回復できる力”なんです。
自分を大切にすることが優しさを呼び戻すきっかけになる
眠ってしまっている“優しさ”を呼び戻すのに、大きな努力や完璧な変化は必要ありません。
大事なのは “ほんの小さな一歩” を踏み出すことです。
- 5分だけ一人の時間をつくる
- 「今日はしんどい」と口にしてみる
- 誰かにちょっと話を聞いてもらう
- 好きなものをひとつ、自分に許可する
こうした小さな“自分を大切にする行動”が心の余裕を少しずつ回復させます。
余裕が戻れば、優しさも自然と戻ってきます。
自分を大切にする方法-自分との約束を守る-
「自分を大切にしてね」
小さい頃から、私はこの言葉をよく言われてきた気がします。
一般的にもよく使われる言葉だと思います。
ですが、具体的にどうすることが「自分を大切にする」ことなのか、少なくとも私の経験の中では誰も教えてくれませんでした。
心理学を学び、たくさんの自己啓発本を読んできました。
その中でも「自分を大切にする具体的な方法」は見つかりませんでした。
今日はラーメン食べたいな✨
明日は近くの温泉にでも行って、ゆっくり休もうかなっ♬
私は休みの日に、よくこんなこと考えたりします。
でも、いざ出かけようとすると
あー、やっぱめんどくさい!
今日はやめておこう。
また次の休みでいいや…。
休み当日になると、急にめんどくさくなって予定をキャンセルしてしまうんです。
あなたもこんな経験あるのではないでしょうか?
あるとき、私はこう思ったんです。
これって自分との約束のドタキャンじゃないの?…と。
友達との約束、パートナーとの予定、仕事でのアポイント
優しく真面目なあなたは、特別な理由がない限り「ドタキャン」なんてしないのではないですか?
にもかかわらず、私と同じように「自分との約束」は、簡単に破っていませんか?
大切な人との約束と同じように自分との約束を扱う
気分が変わって予定を変更することはあるでしょう。
でも、その予定を変更した理由が「面倒くさい」であるなら、あなたは自分との約束を大切にしていなかったことになります。
自分を大切にするとは「大切な人と同じように」自分を扱うこと
大切な人に対して、面倒くさいを理由に約束をドタキャンすることはないでしょう。
大切な人にはしないことを、自分にはしている。
それは、つまり自分を大切にしていないということです。
逆に、大切な人にするのと同じことを自分にしてあげることが「自分を大切にする」ということだと私は思います。
私が意識している「自分を大切にする方法」|3つの具体例
私は、どういったことが自分を雑に扱っているのか気づいてからは、次のような方法で「自分を大切にする」を実行しています。
- どんなに小さな約束であっても自分との約束を守る
- 他の人と同じような言葉を選んで自分にも語り掛ける
- できなかった時は自分にちゃんと謝罪をする
どれも、大切な人に対しては当たり前にやっていることですね。
具体的には
- 「コーヒー飲みたいな」というような小さな約束であっても、約束をちゃんと守る。
- 他の人に掛けないようなキツい言葉を自分にも掛けない。
- ついドタキャンしてしまったときは、「そうだよね、行きたかったんだよね。ごめんない。」と自分の中で、行きたかった気持ちを汲んであげる。
といった感じです。
やっていることは小さいことかもしれませんが、小さくても「自分を大切にしている行動」です。
続きにくい大きな行動よりも、積み重ねやすい小さな行動を繰り返していくことが大切ですね。
自分を大切にしていても、介護が続く限りストレスは積み重なっていきます。
ストレスが積み重なってしまえば、自分を大切にしようとする気力も失ってしまいます。
次の章では、日々の介護でたまったストレスから心を開放する簡単な方法、「今日からできる“心を軽くする具体策”」を7つにまとめて紹介します。
今日からあなたの心を軽くする8つの具体策
24時間、365日
休むことなく続く介護。
この先いつ終わりが来るかもわからない。
そんな状況で介護をしていれば、イライラするのは当然です。
日々の小さな出来事にも、心が重くなり、怒りが爆発してしまう日もあるでしょう。
そこで、この章はストレスが溜まり、怒りが爆発する前の小さなうちに、心を軽くする簡単な方法を紹介していきます。
心を軽くする方法① 距離をとる「30〜90秒タイムアウト」
イライラを感じたら、そのまま我慢せずに、一度その場から30〜90秒だけ離れてみる。
人間の怒りは6秒間しか継続しないと言われています。
👉6秒間で怒りを可視化~感情的ではなく理性的に~ | 【公式】日本アンガーマネジメント協会
たった1分だけでも、イライラする場所から離れてみる。
これだけでも、少し冷静になることができます。
合図は短く「ちょっと深呼吸してくるね」でOK。
- 深呼吸をする
- グッと両肩を上に持ち上げてストーンッと脱力する(筋弛緩法)
- 冷水で手首を冷やす
生理的にクールダウンすると、自分の一次感情が掴みやすくなります。
心を軽くす方法② 気持ちを“出す”(話す/書く)
- 話す:誰か1人に「今日はしんどい」と短く共有してみる。
- 書く:ノートやスマホにメモをしてみる。
【1-3-1メモ法】
ステップ①:今の気持ちを1つ書く(例「悔しい」)
ステップ②:その気持ちになっている理由を3つ書く(例「同じ会話が続いた」「寝不足」「手伝いがない」)
ステップ③:そんな今の自分への“一言”を書く(例「それでも私は向き合ってる」)
先に紹介した介護者によるノートを使用して介護のイライラを書き連ねていた話も、書くこと自体が心を軽くしていたということです。
👉【体験談】の話に戻る
心を軽くする方法③ “頼るため”のスモールステップ(断られにくい伝え方)
頼るためにはお願いをしなければなりません。
頼ることが苦手な人は、なんて言って頼ればいいのかもわからないかもしれません。
お願いは最小単位で伝えると、簡単に伝わります。
また、「なんて伝えたら良いのか」と悩むことも減るので、頼ることへの負担が減ります。
お願いは「①依頼+②期限+③効果」の3つを伝える。
例えば、朝のゴミ出しを例に挙げてみます。
「①明日の朝のゴミ出し、②10分だけお願いできる?
③その間に朝食の準備が進むから助かるわ」
→ 依頼の具体的な内容・おおよそ掛かる時間・理由が揃うと相手の依頼への抵抗も下がります。
抵抗が下がると、お願いしたことへの罪悪感も減らすことができます。
心を軽くする方法④ サービスを一点投入(“逃げ”ではなく“続ける戦略”)
介護をしている中で「負担だな」と感じたり、「あれ?なんか前より物忘れが増えた?」と介護をされている人の変化に気付くことがあると思います。
始めは、小さな気付き、些細な変化かもしれません。
しかし、時間が経つにつれ、それらは積み重なって大きな負担へと変わっていきます。
「あれ?」「ちょっとしんどくなってきた」と感じたら、早めに医療介護職の人たちに相談するようにしましょう。
特に担当のケアマネジャーに相談して「週1回・30分だけ」など、小さく試すから始めるのが良いでしょう。
例:デイサービス半日/ショートステイ月1回/訪問介護の家事支援。
「私が休める=家族に優しくできる時間が増える」という視点で選ぶことも大切!
心を軽くする方法⑤ 自分の回復ルーティンを作る
心臓の動き、起床と睡眠、排泄、生理周期など、人間の身体にはたくさんのリズムが備わっています。
このリズムが崩れると、体調も崩れていってしまうことがあります。
自分の中のルーティン(リズム)を作ってあげることも、身体を整えてあげることには重要なことです。
また、人は習慣の生き物なので「○○をすると●●する」というルーティンを作ることも効果的です。
例えば、「介護でイライラした時には大好きな甘い物を1つ食べてよい」というルールを作り、実行し続けたとします。
そうすると、イライラする→大好きな物が食べられる→機嫌が直るというルーティン(リズムが生まれます。
これを繰り返していくことで、習慣化していき「大好きな物を食べることでイライラが回復する」というオリジナルの「心を軽くする方法」が出来上がります。
心を軽くする方法⑥ 環境の工夫で“トリガー”を減らす
一言で「介護のイライラ」と言っても、人によってイライラのきっかけ(トリガー)は違います。
あなたのイライラのきっかけ(トリガー)は何ですか?
例えば
同じ質問を繰り返すことにイライラしている人であれば、繰り返し聞かれる質問は紙のメモを見える場所に返答を書いておく。
物がなくなってイライラしてしまう人であれば、物の定位置を2〜3箇所だけ決める。しまってある場所にラベリングする。(タンスの引き出し毎に「シャツ」「パンツ」と書いておく)
日々のやることの多さにイライラしてしまう人であれば、「今日は絶対にやらないリスト」を作り、今日の自分に免除を出してあげる(例:掃除は明日に回す)
このような工夫で、イライラのきっかけ(トリガー)から、自分を遠ざけてみるのも一つの方法です。
心を軽くする方法⑦ 心がラクになる“置き換えフレーズ”
実は、イライラの原因が、自分が自分に掛けてる「冷たい言葉」という人も少なくありません。
自分を責める言葉を使ってしまった時は、一度立ち止まり、違う言い方を探してみるのも良いでしょう。
例
- ×「また怒った…最低」 → ○「それだけ私、頑張ってた」
- ×「私がやらなきゃ」 → ○「できる人と分担するのが最善」
- ×「弱いから頼る」 → ○「続けるために頼る」
心を軽くする方法⑧全部完璧にやろうとしないこと
ここまで心を軽くする7つの方法を紹介してきました。
それぞれ合う方法、合わない方法があると思います。
いろんな方法を試してみて、自分に合った方法を見つけてください。
そして、一番大事なことは「全部やる」「ちゃんとやる」と思わないこと。
1つだけ選んで今週試してみよう。
できたらいいな。
くらいの軽い気持ちで取り組んでいくことが大事です。
【優しくできない自分が嫌い…】それでもあなたは優しい人のままです
ここまで読んできて、気持ちが大きく揺れたり、読んでいて”あの頃”の気持ちに戻ってしまった人もいると思います。
真剣に向き合うからこそ気持ちは揺れ動きます。
“優しさ”を取り戻そうとするあなたは、今もずっと優しい人のままです。
次の章では、この記事全体を振り返りながら、
✅ あなたの優しさの本質
✅ ここまで得た気づき
✅ これからの小さな一歩
を整理していきます。
「もう自分を嫌いにならなくていい」そう思える状態で、ラストを迎えましょう。
まとめ:優しくできない日があっても、あなたの中の“優しさ”は消えない
介護の中で何度もぶつかってきた
「イライラしてしまう自分」
「優しくできない自分」
それを「ダメだ」と責めるのではなく、「なぜそう感じたのか」を一緒に見つめてきました。
最後にもう一度、全体を振り返っていきましょう。
あなたのイライラや自己嫌悪には“ちゃんと意味”があった
「優しくできない」と感じる裏には、必ず“理由”がありました。
- 相手を大切に思っていたから、期待してしまった
- 「ちゃんとしなきゃ」と自分にプレッシャーをかけていた
- 「自分ばかり」と感じるほど、孤独だった
- 自分の感情より相手を優先してきた
- 感情を抑えすぎて、心が限界に近づいていた
どれも「優しさ」や「責任感」から生まれたもの。
あなたは何も変わっていない。
あなたは最初からずっと“優しい人”だったのです。
“優しさを失った”のではなく、“優しさを出せないほど疲れていただけ”
優しさは“性格”ではなく“心の余裕”。
- 心が元気なとき は 優しくできる
- 心が疲れているとき は 優しさを出せない
これは自然なこと。
優しさは消えない。
ただ、少し疲れて眠っているだけです。
「頼ること」は、弱さではなく“あなたと家族を守る優しい選択”
- 一人で抱え込むことが正解ではない
- 介護は本来「チーム」で支えるもの
- あなたが安定していることが、家族の安心につながる
あなたの心が安定していることこそ、家族にとって一番の安心です。
無理を続けるより、 “続けられる形” を選ぶほうがずっと責任ある優しさです。
“小さな一歩”で心は必ず軽くなる
介護は、完璧である必要はありません。
- 5分休む
- 誰かに少し話す
- サービスを一度だけ試してみる
- 「今日はしんどい」と言葉にする
そんな小さな行動が、心に余裕をつくり、また優しさを呼び戻してくれます。
「小さな約束を守る」ことで優しいあなたは戻ってきてくれる
自分を大切にする。
その方法は「自分との小さな約束を守ること」
自分を大切にするということは、自分に優しくしているということ。
自分に優しくできれば、口から優しい言葉が出てきます。
優しい言葉に囲まれると、心に余裕が生まれます。
自分に余裕が生まれれば、あなたの優しさは自然と戻ってきます。
「優しくなれない」と悩んだら、まずは、小さいことから始めていきましょう。
完璧じゃなくていい。揺れながらでいい。
介護は綺麗ごとだけでは続きません。
優しくできない日があって当然です。
大切なのは
「ずっと優しくいること」ではなく、「また優しさに戻ろう」と思えること。
「優しくしたいけど優しくできない」と揺れるあなたの中には、優しさがちゃんとそこにあります。
これからのあなたへ
もしまた苦しくなったら
「全部ちゃんとしなくていい」
「優しくできない日があってもいい」
そう思い出してみてください。
そして、誰かに向ける優しさを、ほんの少しだけ自分にも向けてみてください。
その“小さな優しさ”が、あなたと大切な人を守る力になります。
最後に一言
あなたの中の優しさは、これからも何度でも戻ってきます。
そして、その優しさは、誰かの希望にもなります。
どうか、自分を大切にしながら進んでいけますように。
そして、あなたの明日の心の空が晴れますように。
あなたには、これからの人生を“優しさと共に”生きていく力があります。
イライラするのはあなたが優しくないわけではない
家で親の介護をしていると「どうしてこんなにイライラしてしまうのだろう」と落ち込むことはありませんか?
- つい怒鳴ってしまった
- 優しくできない自分が大嫌いになる
介護をしている人の中で、こういった悩みは多く見られます。
介護をしている方の多くは自分だけがこんなに怒ってしまうのではないかと不安を抱えています。
ですが、忘れないでほしいのは「イライラする=あなたが優しくない」では決してないということです。
この記事を読むと分かること
この記事では、介護でイライラしてしまう原因と自己嫌悪を減らすための考え方・工夫を紹介します。
読んだあとに少しでも、あなたの心が軽くなるようにまとめました。
・介護でイライラしてしまう原因
・親の介護でイライラしたときの解消法と対処法
・自己嫌悪を減らすための新しい考え方と視点
・罪悪感を和らげ、心を軽くする具体的な工夫
・介護にと悩む人への解決のヒント
どんなに優しい人でも、介護の中でイライラや自己嫌悪を感じることは自然なことです。
この記事を通して「自分だけじゃない」と感じ、少しでも心が軽くなるきっかけにしてもらえたら幸いです。

【この記事を書いた人】
・看護師(臨床経験10年以上)/家族ケア専門士として活動
・国立大学非常勤講師(高齢者看護学実習指導教員)
・グリーフケア専門士取得
・カウンセラー
・集中治療室・救急外来から在宅医療・介護施設まで幅広い現場を経験。
・年間60件以上の認定調査実施。
もっと詳しいプロフィールを知りたいはこちらから
介護で「どうしたらいいの?」と思ったら
なぜ親の介護でイライラしてしまうのか|原因と背景
この章では、介護中にイライラしてしまう主な原因を3つの側面から解説します。
身体的・精神的な疲労、そして過去の親の姿との比較がどのように感情へ影響しているかを具体的に見ていきましょう。
1.介護による身体的な疲労|親の介護でイライラしてしまう原因と背景
夜間の対応や細かな介助の積み重ねで、身体は疲れ切ってしまいます。
- 人の身体を持ち上げることでの疲労
- 熟睡できない、睡眠中に起こされることでの疲労
- 家事や育児、仕事をしながら介護をしているため、休む時間が取れない
- 様々なストレスによる自律神経の乱れ
このように介護をしていると身体的な疲労がたまりやすい状態になります。
しかし、この状態が日常化してしまうため、意外と介護者本人は身体的な疲労に気付いていないことがあります。
身体的な疲労や睡眠不足の状態が続けば、体の痛みや慢性的なだるさも出てきます。
そうすると、些細なことにも敏感に反応してしまうのです。
疲れているときに感情が抑えられないのは、とても自然なことです。
イライラしやすい自分に気付いた時は、身体からのSOSのサインかもしれません。


2.心配や予期不安による精神的な負担|親の介護でイライラしてしまう原因と背景
いくら大切な家族であっても、認知症症状による同じ質問の繰り返しや、日常の変化に付き合うのは大きなストレスになります。
また、自分が見ていない間に家の外に出て行ってしまうのではないか、台所で火を使って家事にならないか、朝の薬をちゃんと飲んだだろうか…など、介護をしていると心配や予期不安(まだ起こってはいないが、起こるかもしれないことに感じる不安)は尽きないでしょう。
- 「ダメだ!」と何度説明しても分かってくれない
- 「その話、もう何度目だと思っているの!?」というくらい繰り返し同じ話をされる
相手のことを理解してあげたいけど、どうしても理解してあげられない。
そう感じることも少なくないでしょう。
そんな理解しにくい相手の行動に対して、イライラや焦りが募ってしまうのは当然です。
相手のことを理解できなかったり、介護の役割が自分ばかりが多いと感じると孤独感が生じます。
孤独感が強まると「自分だけが大変」とより感じやすくなり、気持ちが沈んでしまうこともあるでしょう。
この状態が続くと、いわゆる「介護うつ」に発展してしまうリスクも高まります。
体験談: 「母が認知症で、何度言っても同じことを繰り返します。買い物に連れて行っても、家に醤油があるのに醤油を2本も買おうとするんです。家にあるから要らないと何度言っても分かってくれません。独り暮らしなのに醤油3本なんて使い切れるわけないじゃないですか?そんなことも分からない母にすごくイライラして、気づいたら声を荒げてしまい、そんな自分が嫌で涙が出ました。」
【40代女性】

3.過去との比較がイライラを強めている|親の介護でイライラしてしまう原因と背景
日常の中で「昔はあんなに元気だったのに…」「以前はできていたのに…」という思い込み上げてくることはないでしょうか?
元気だった頃と、できなくなってしまった今とのギャップが大きければ大きいほど、「何で…」という想いを生みます。
毎日の介護が大変に感じると、このやるせなさや苛立ちを、自分自身や相手にぶつけてしまうこともあるでしょう。
かつての元気な姿を思い浮かべるほど、今の現実を受け入れるのがつらくなり、怒りに近い感情として表れてしまうのです。
次の章で説明をしますが、これはあなたが優しくないからではありません。
むしろ、あなたがその人を大切に想う気持ちが強いからこそ出てきてしまう感情なのです。
体験談: 「以前は自分で料理をしていた母が、今は食事も一人でできなくなりました。『なんでこんなこともできないの?』と思ってしまいます。認知症だから仕方がないと思いつつも、それくらいできるでしょできるでしょ!とも思ってしまう自分に、後から罪悪感で押しつぶされそうになりました。」
【40代女性】

あなたが今感じているそのイライラは「あなたの優しさが足りないから」ではなく、長期的な疲労と大きな心理的負担が重なった結果です。
親の介護でイライラを解消する方法|自己嫌悪を減らす3つの視点
ここでは、罪悪感や自己嫌悪を和らげるための3つの考え方を紹介します。心が少し軽くなる視点の持ち方を一緒に考えていきましょう。
1. 罪悪感の強さは「愛情の深さ」と知る

「また怒ってしまった」と自己嫌悪を抱くときは、「もっとこうしてあげたい」という相手への強い想いの裏返しです。
愛情がなければ、そもそも心は動きません。
罪悪感を持つということは、それだけ相手を想っているということです。
まずは「私は愛情深いからこそ罪悪感を抱いているんだ」と気が付くだけでも、気持ちは少し楽になります。
さらに「愛情があるからこそ感情が揺れる」という事実を意識すると、自分を責めずにすみます。
「罪悪感があるのは愛している証拠」と心に留めることは、自己嫌悪を和らげる大切な第一歩です。
2. イライラは「今」と「過去」の比較から生まれること理解する
「元気だった頃」と「できなくなった今」を比べてしまっていませんか?
この比較がイライラの正体になっている場合があります。
元気だったころを知っているからこそ、変わってしまった大切な人に対して寂しい気持ちになる。
大切な気持ちが強ければ、変化を受け入れられない、変化に対してイライラしてしまうのは普通のことです。
大切な人の変化を受け入れられない人に対して、「今を受け入れろ」というのは、さすがに乱暴すぎます。
受け入れられないままでもいいんです。
大切なのは「過去と比べてしまっている自分」に気が付くことです。
そして、「できなくなったことを一番つらいと感じているのは本人かもしれない」と思えると、心の持ち方は少しずつ変わっていきます。
例えば、食事を一人で食事ができなくなってしまった親を見て「前はあんなに元気だったのに」と思うと苦しくなることもあるでしょう。
ですが「本人もつらいんだよね」と冷静になり相手の状況を理解できれば、怒りよりも寄り添う気持ちが湧きやすくなります。
3. 自分の気持ちを言葉にする
イライラや罪悪感を心の中だけで抱え込むと、どんどん大きくなります。
「今日は疲れて優しくできなかった」「昔と比べてしまってつらい」とノートに書き出すだけでも、自分の気持ちを客観的に見ることができます。
信頼できる人に話すのもとても効果的です。
「話す」「書く」という行為は、自己嫌悪を和らげる力があります。
寝る前に一日の中で嬉しかったことや感謝できることを一行でも書いてみるのもおすすめですので、ぜひ生活の中に取り入れてみてください。
感情を文字にすることで、否定的な思い込みから距離を取りやすくなります。
体験談: 介護サービスが入っていると、家族と関わっている専門職との情報共有にノートを使用することが多いです。そのノートの中に日々のイライラや、認知症による失敗(用意しておいたご飯を食べ忘れた、お米を1日のうちに何度も炊いてしまった、など)を綴るご家族も少なくありません。
ノートの中ではものすごくイライラされているご家族でも、会ってお話をしてみると意外と精神的には安定していることがあります。
介護をしながら仕事をされている方も多く、直接お話を聞ける機会が少ない中、ノートに自分のイライラした気持ちを素直に書くことができる。自分の気持ちを素直に出すことができる場所がある。そして、それを受け止めてくれる誰かがいる。それだけでも、介護をされている方にとっては「嫌な気持ちを書いても良いんだ」と思うことができると私は思っています。
【30代看護師】
介護でイライラを感じたときに行う3つのアクション
介護でのイライラや罪悪感を軽減するために、日常生活で取り入れやすい行動を3つ紹介します。
1.イライラしたら深呼吸して数分席を離れる

例えば、食事介助の最中に思わず苛立ってしまったとき。
すぐに言葉に出すのではなく、その場から離れてみましょう。
窓を開けて新鮮な空気を吸い、深呼吸を3回してから戻るだけでも気持ちが落ち着きやすくなります。
気持ちを書き出し、自分の感情を客観視する

介護日誌やノートに「今日は母に冷たくしてしまった」「つい怒鳴ってしまった」と正直な気持ちをそのまま書いてみる。
書いた文字を見返すことで「疲れていたから仕方ない」と冷静に振り返ることができます。
寝る前の一行日記でも効果的です。
信頼できる人や専門家に相談してみる
介護は、家庭の中の話なので、誰でも話せることではありませんよね。
信頼できる友人や、話をよく聴いてくれる友人・家族。
そんな人に話を聴いてもらうと良いでしょう。
家族や友人に話すのが難しいときは、地域包括支援センターや介護相談窓口を利用してみましょう。
「誰かに聞いてもらえた」というだけで気持ちは軽くなります。
実際に、電話で数分話しただけでも涙が出て心が落ち着いたという声もあります。
これらを繰り返すことで、イライラや罪悪感に押しつぶされるのではなく、「自分は十分に頑張っている」と実感できるようになります。
まとめ|親の介護でイライラしてもあなたのせいじゃない
親の介護でイライラしてしまうのは、優しさや愛情が足りないからではありません。
身体の疲れ、元気な頃みたいに戻って欲しいという期待と、これから先も介護が続くかもしれないという不安…。
大切だからこそイライラしてしまう。近いからこそ感情的になってしまう瞬間がある。
そして、どんなに大切な人であっても、投げ出したくなるときがある…
これは、ごく普通のことです。
24時間、365日休む暇もなく続く介護
疲れてイライラするのは当然です。
でも、このイライラがどこから来て、イライラしてしまうことが普通のことだと知るだけで「私はダメだ」という自己否定から少し離れることができます。
介護は長期戦です。
自分の気持ちを責めず、時には周囲や専門家に頼りながら、自分を大切にしてください。

この記事で学んだこと
- 親の介護でイライラしてしまうのは自然な反応
- 自己嫌悪は愛情の深さの裏返し
- イライラは過去との比較から生まれることがある
- 感情を言葉にすることで整理できる
- 介護は一人で抱え込まず、相談することが大切
読者ができる3つのアクション
- イライラしたら深呼吸して数分席を離れる
- 気持ちを書き出し、自分の感情を客観視する
- 信頼できる人や専門家に相談してみる
これらを繰り返すことで、イライラや罪悪感に押しつぶされるのではなく、「自分は十分に頑張っている」と実感できるようになります。
自社サービスの紹介|介護のイライラや罪悪感を安心して相談できます
もし「介護の愚痴や罪悪感を安心して話したい」「介護方法について専門家に相談したい」と感じているなら、SoRaの訪問リラクゼーション&介護相談サービスをご活用ください。
- 家族介護者のためのリラクゼーション
- 介護方法のアドバイス
- 気持ちを安心して話せるカウンセリング
👉 関連記事:介護ストレスを解消する3つの工夫
👉 公的支援:厚生労働省 介護者支援ページ
👉 詳しくは SoRa公式サイト をご覧ください。

このブログは、看護師(臨床経験10年以上)、家族ケア専門士が書いています
集中治療室・救急外来・内科・外科・整形外科・訪問看護・特別養護老人ホーム・デイサービスなど、幅広い医療・介護現場を経験
認定調査員として年間60件以上の要介護認定調査を行い、介護制度と在宅介護の現場にも精通
国立大学非常勤講師(高齢者看護学実習指導教員)
心理学・カウンセリングを15年以上学び、現在はカウンセラーとしても活動
【資格・実績】
・ 看護師
・家族ケア専門士
・DMAT隊員
・グリーフケア専門士
・認定調査員(年60件訪問)
・ハンドケアセラピスト
・アロマテラピー検定1級
・ヒューマンギルドにてアドラー心理学・カウンセラー養成講座修了
・ユマニチュード基礎講座修了
「医学的知識 × 心理学的支援 × リラクゼーション」を組み合わせて
介護をするご家族の身体と心を支えるための活動をしています。
コメントいただけると嬉しいです