優しくできないあなたは悪くない—介護をしていないあなたも尊い存在

「優しくしたいのにできない」——
そう感じて、心がチクリと痛むことはありませんか?

介護をしていると、
「今日は少し冷たく言ってしまった…」
「もっと穏やかに接したかったのに…」

そんな後悔が何度も押し寄せてきます。

でも、その“優しくできなかった自分”は、決して悪ではありません。
その感情は、あなたの優しさの証なんです。

なぜ優しくできなかったことが「優しさの証」なのか——。

それは、「優しくしたい」と思えるということは、「相手を想う気持ち」が、ちゃんとあなたの心の中にあるということだからです。

人は、誰かを大切に想うからこそ、苦しくなる。
思いやりが深い人ほど、自分を責めてしまう。

——けれど、どうか忘れないでください。

誰かから見て「良い介護をしている」からあなたは尊いのではなく

上手く介護をできないときも——
もっと言えば、介護をしていなくても——
あなたは優しく尊い存在なんです。

本記事では、

なぜ「優しくしたいのにできない」と感じてしまうのか
優しさをすり減らさない“3つの気づき”
自分を責めずに優しさを守る考え方

をお伝えします。

この記事を通して、「できない自分」を責めるのではなく、「優しさを守る視点」から自分を見つめていきましょう。


この記事は、「介護のイライラは貴方のせいじゃない」の第2章『優しくしたいのにできない』を、さらに詳しく解説したものです。
「他の章も読んでみたい」という方はこちらから▼


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【この記事を書いた人】
看護師(臨床経験10年以上)/家族ケア専門士として活動
・国立大学非常勤講師(高齢者看護学実習指導教員)
・グリーフケア専門士取得
・カウンセラー
・集中治療室・救急外来から在宅医療・介護施設まで幅広い現場を経験。

・年間60件以上の認定調査実施。

目次

大切な家族なのに優しくできない

大切な家族なんだから優しくしなきゃいけない

そう思って介護をしていても、優しくできない瞬間は必ずあります。

——だって人間だから。

でも、あなたは、そんな瞬間的な「優しくできない」をも思い悩む優しい人なんです。

この章では、優しいはずのあなたに、 “なぜ優しくできない瞬間”があるのかについて解説していきます。

愛情が深いほど「理想」と「現実」のギャップに苦しむ

介護をしていると、
「もっと丁寧に接したい」
「ちゃんと気持ちをわかってあげたい」
と、自然に理想の介護像を思い描くようになります。

けれど、悔しいことに——、現実はそう思ったようにはいきませんよね。

疲れが溜まる日もあれば、心に余裕が持てない日もある。
相手の言葉に反応して、思わずきつく返してしまうこともあります。

その瞬間、心の奥に浮かぶのが——

「あんな言い方するつもりじゃなかった…」

——という後悔。

でも、それは“冷たさ”ではなく、 “思いやり” がちゃんとそこに在る証です。

優しくできない自分を責めてしまうのは仕方がないこと。
でも、「私には、それだけ相手を大切に思う気持ちがあるんだ」と、自分の心の奥にある優しさに気づいてあげてください。

理想と現実のギャップに苦しむのは
それだけあなたの愛情が本物だから


「できない自分」を責める優しさ

「もっと頑張らなきゃ」
「こんな気持ちになるなんて情けない」

そうやって自分を責めてしまうのは、
あなたが“誰よりも真面目で優しい人”だからです。

でも、その優しさがいつの間にか
“自分を痛める矢”になっていませんか?

自分を責めるという行為は、
「愛情が外へばかり向いて、自分に戻っていない状態」です。

本当の優しさは、
“誰かに与える”ことだけではなく、 “自分を守る” ことも含まれています。

「できない=悪い」ではなく、「今は心が疲れているだけ」と受け止めてみてください。

あなたの中の優しさは、
ちゃんとそこにあります。

今はただ——
少し、心が休みたがっているだけなんです。


「イライラしてしまうのは、あなたがちゃんと相手を想っているから」
「優しくできないのは、心が少し疲れているだけ」

——そう言われても、

じゃあ、どうしたら優しくいられるの?

疲れてるのは分かってるけど、今すぐ変われるわけじゃない…

そう思う自分がいるのも、自然なことです。

この章では、
“優しさがあるのに苦しい”——
その気持ちを軽くするために、元々ある優しさを見失わないための3つの気づきを紹介します。

新しい努力をするのではなく、「すでに持っている優しさ」を見つめ直すことで、心を少しずつ取り戻していきましょう。

「できない=悪い」ではなく「疲れているだけ」

「また、冷たく言っちゃった…」
「私って本当にダメだな…」

そう思う瞬間は、誰にでもあります。

でも、それは“優しさがなくなった”のではなく、心のエネルギーが少し減っているだけなんです。

たとえるなら、スマホの充電が切れかけているようなもの。
電池がないとアプリも動かないように、心が疲れていると、優しさを出す力も出にくくなるんです。

だから、「できない=悪い」ではありません。
「できない=今、ちょっと充電が必要なんだな」と受け止めてください。

そして、もしできるなら5分でもいいから、

「優しくしなきゃ」ではなく「少し休もうか」

「イライラしちゃダメ」ではなく「そんな時もあるよね」

——と、自分に言ってあげてください。

休むことは、優しさを守るための大切な行動です。

「相手のため」から「自分も含めた優しさ」に切り替える

「相手のために頑張らなきゃ」
そう思って介護をしているあなたは、本当に優しい人です。

でも、その優しさが、いつの間にか自分を追い込んでしまうことがあります。

“相手のためだけの優しさ”は、いつか枯れてしまう優しさなんです。

優しさを続けるためには、そこに“自分も含める”ことが大切。

たとえば、
「今日は少し無言でもいい」
「疲れた顔を見せてもいい」
「完璧じゃなくても大丈夫」

そう思えるだけで、心が少し楽になりますよ。

「あなたが笑える時間」が、家族の安心をつくる。

でも、あなたは「家族のために居る存在」ではありません。

“家族のため”だけでなく
“自分のためにも”
あなた自身を大切にしてください



あなたは
介護をしているから “尊い存在” なのではなく
介護をしていなくても “尊い存在” なんです


「ひとりで頑張らない」ことも愛情の一つ

「私がやらなきゃ」
「他の人に頼むのは悪い気がする」

そんな思いが頭をよぎるあなたは
きっと“責任感の強い人”です。

でも、それが限界を超えると、優しさは息切れしてしまいます。

介護は、ひとりで背負うものではありません。

頼ることは、手抜きでも逃げでもなく、介護を続けていくための“優しい選択”なんです。

誰かに頼むことは、その人を「信頼している」という愛情を伝えるコミュニケーションでもあります。

だから、どうか
「ひとりで頑張らなくていいんだよ」
——と、自分にも優しい言葉を掛けてあげてください。

ひとりで頑張らない私も、ちゃんと優しい——
その言葉が、あなたの心を少し軽くしてくれます。


この3つの気づきは、
「自分の中にすでにある優しさを守るための視点」です。

何かを変えるよりも、
「もう頑張ってる自分に気づく」ことが、
いちばん大切な“優しさの実践”なんです。

「優しくしたいのに、どうすればいいのか分からない」
そんな瞬間が、誰にでもあります。

気持ちはあるのに、行動がついてこない——
分かっているのに、優しくできない——

そのギャップは、優しさを失ったからではなく、心が“動けないほど疲れている”だけなんです。

ここでは、あなたの中にある優しさを「もう一度動かしていく」ための3つの小さな行動視点を紹介します。


行動する前に「立ち止まる」という優しさを選ぶ

優しくしようとする人ほど、「頑張らなきゃ」「何かしなきゃ」と動こうとします。

でも、本当に大切なのは、今の自分に立ち止まることを許す勇気です。

疲れているとき、何かを変えようとしても、心はさらに擦り減ってしまいます。

「動けない」は、あなたが「あなた自身に向けた」SOSのサインです。
立ち止まることは、諦めではなく、次の優しさを育てる準備行動。

だから、どうか焦らないでください。

静かに息をついて、自分のペースを取り戻すこと
それも立派な「優しさ」です。


“完璧な優しさ”より“不器用な優しさ”を信じる

優しくしようとすると、
「もっと丁寧に」
「もっと穏やかに」
と、つい“完璧な優しさ”を目指してしまいます。

でも、人の心は天気のように変わります。
曇る日も、荒れる日もある。

少し言葉が荒くなってしまっても、後から「ごめんね」と思えたなら、それは“優しさが息をしている証”。

完璧を目指す優しさよりも、揺れながら続いていく優しさのほうが、ずっと本物なんです。

不器用な優しさも、ちゃんとした「優しさ」です。


“誰かを想う”気持ちを“自分にも”向けてみる

あなたが人に優しくしたいと思うように——
自分にも同じ優しさを向けてあげてください。

「よく頑張ってるね」
「今はこれでいいよ」

そう言葉をかけるだけでも、心は少しずつ動き出します。

他人に向けていた優しさを、自分に戻すこと。
それが、優しさを動かすいちばん確かな方法です。

あなたが自分に優しくなれるとき、世界はもう少しだけ優しく見えてきます。


優しさは、突然あふれ出すものではなく、静かに動き始める“心の循環”です。

立ち止まり、不器用で、自分にも優しく。
その小さな一歩が、「優しくしたい自分」を再び動かす力になります。

「怒っちゃいけない」「泣いちゃいけない」——
そう思って、自分の感情を飲み込んでしまうことはありませんか?

優しくしたい気持ちが強い人ほど、「感情を出す=我慢できないこと」と感じてしまいます。

でも、感情を抑えるたびに、心の奥には“小さな悲鳴”が積み重なっていくんです。

この章では、感情を抑えることの弊害と、感情を出すことに許可をすることについてお話しします。


「感情を抑える」は、あなたの優しさの表れ

あなたが感情を抑えてしまうのは、
「相手を傷つけたくない」
「波風を立てたくない」

——そんな思いやりが根っこにあるからです。

つまり、感情を抑えることは、「我慢強い」というより、「相手を想う」行動なんです。

それは本来、とてもやさしいこと。
でも、そのやさしさが続くと、心の中に“自分の気持ちの居場所”がなくなっていきます。

あなたの中にある優しさを守るためにも、ときには“自分の感情にも居場所を作ってあげる”ことが必要なんです。

そのためにはまず、「感情は出しても良いんだよ」と、自分に許可を出してあげることが大切になります。

感情に良いも悪いもない
「良い感情の使い方」と「悪い感情の使い方」があるだけ


感情は「出す」ことで落ち着きを取り戻す

抑え込んだ記憶は、忘れてしまうこともあるでしょう。

でも
抑え込んだ感情は、時間が経っても消えることはありません。
静かに積もっていき、ある日突然あふれ出してしまう。

だからこそ、感情は「閉じ込める」より「出す」ほうが安全なんです。

  • 「もう無理」と声に出す
  • 涙を流す
  • ノートに書く
  • 深呼吸で吐き出す

どんな方法でも構いません。
大切なのは、心に溜まったものを外に出す“出口”を作ること。

感情を出すことは、乱れることでも、弱さでもありません。
それは、あなたの心を整える“自然な仕組み”なんです。


感情を出しても優しさは失われない

怒っても、泣いても、
あなたの優しさがなくなることはありません。

むしろ、感情を出せた瞬間——
あなたの中の優しさは、もう一度息を吹き返します。

「もう優しくなれない」と思うときほど、あなたの心は“優しさを守ろうと戦っている”んです。

だから、どうか怖がらないで。
感情を出すあなたも、ちゃんと優しい。
泣くことも、怒ることも、
優しさの一部として捉えていいんです。


感情を出すことは、壊れることではなく、
“元の自分に戻ること”。

あなたが感情を感じられるのは、
心がまだ生きて、優しさを持っている証です。

だから、もう我慢しなくて大丈夫。
あなたの涙も、怒りも、全部含めて優しいんです。

「もっと優しくしたかったのに」
——そう思う夜があっても良いんです。

それは“優しさを失った”証拠ではなく、
“優しさを手放したくない”という心のあらわれだから。

介護をしていても、していなくても、
誰かを想う気持ちがある限り、
あなたの中の優しさは、ずっと消えません。

疲れて—
余裕がなくて—
どうしても優しくできない日もあるでしょう。

でも、そんな日があったっていいんです。

「そういうときもあるよね」

——そうやって、自分にそっと言葉をかけてあげてください。

この一言が、自分に優しくできる第一歩になります。


あなたは、介護をしているから尊いのではなく、
介護をしていなくても尊い存在です。
今日のあなたも、ちゃんと優しい。


このブログは、看護師(臨床経験10年以上)、家族ケア専門士が書いています
集中治療室・救急外来・内科・外科・整形外科・訪問看護・特別養護老人ホーム・デイサービスなど、幅広い医療・介護現場を経験
認定調査員として年間60件以上の要介護認定調査を行い、介護制度と在宅介護の現場にも精通
国立大学非常勤講師(高齢者看護学実習指導教員)
心理学・カウンセリングを15年以上学び、現在はカウンセラーとしても活動

【資格・実績】
・ 看護師
・家族ケア専門士

・DMAT隊員
・グリーフケア専門士
・認定調査員(年60件訪問)
・ハンドケアセラピスト
・アロマテラピー検定1級
・ヒューマンギルドにてアドラー心理学・カウンセラー養成講座修了
・ユマニチュード基礎講座修了


「医学的知識 × 心理学的支援 × リラクゼーション」を組み合わせて
介護をするご家族の身体と心を支えるための活動をしています。

最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

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